四章 戦士と奴隷⑭
「!!」
「本当はな。そんなつもりはなかったんだよ。でも、彼女強情なんだ。俺の言うこと全然聞いてくれなくてさ。どんなに脅しても無駄。だからさ――」
――彼女自身の手で、彼女の心の支えを奪ってやろうと思ってね。
鍵山は声をあげて笑う。孝二は痛みをこらえるように歯を食いしばり、言葉を吐き出す。
「手前が……刻印の能力者か!」
「な、何!?」
孝二の言葉に鍵山は驚きの声を上げる。
「何で貴様が刻印のことを知っている!? まさか貴様もCWAか!」
鍵山は立ち上がり、孝二を見下ろす。そして、しばらくの間、ゆっくりと深呼吸を繰り返し、自分を落ち着かせる。
「それなら――なおさらだ。お前はここで殺す。生かす理由がない」
そう言う鍵山の表情からは笑みが消えていた。
「……殺したけりゃ殺せよ」
その表情を孝二はまっすぐに見返す。
「だが……お願いだ。千里は解放してくれ。俺はどうなってもいい。靴をなめろと言われればなめるさ。死ねと言われれば死ぬさ! だから……千里には何もしないでくれ!!」
その言葉に鍵山の表情がみるみる強張っていく。
「貴様は……彼女と同じことを言うんだな。全く同じことを……貴様らは……同じことを」
わなわなと口元が震え、顔がどんどん真っ赤になっていく。
「何なんだよ、それ。あぁ? 通じ合ってるとでもいうのか!? 糞が!!」
鍵山はそう叫ぶなり、孝二の頭を踏みつける。
「殺す? はは。殺してやる! そして貴様の死体を彼女の元に送ってやる!! 千里ちゃんどんな顔するかなぁ? 絶望しきったところで犯してやる! 貴様の死体の前でな! はは、どんな気分になるだろうなぁ! とりあえず手前は死ね! 死ね! 這いつくばることしか出来ない家畜が!! はははははははははははははははははははは!!」
「……千里を……見逃してはくれないのか……?」
孝二は鍵山の顔を見上げ、必死に懇願する。
「どうしても……なのか……! どうしても……!」
「残念だけど――」
その孝二の態度に鍵山は冷たく言い放つ。
「君の分まで楽しんであげるからさ。そのまま死ねよ」
鍵山は右手を掲げる。鍵山の傍らに立つ学生が、その手に持つ木刀を大きく振り上げる。
「そう、か――」
孝二は諦めたように目を伏せる。木刀が勢いよく、孝二の頭部へと振り落とされる。
孝二は目をあける。