四章 戦士と奴隷②
「説明しに来てやったんだ。感謝しろ」
「説明? 何の?」
「貴様の額の目についてだ」
孝二は眉をひそめる。真は自分の右手を持ち上げ、手の甲を孝二に向ける。
「よく見ろ」
孝二は視線を真の手に固定する。眺めていると、しばらくして手の甲に何かが浮かび上がってきた。
「……?」
真の手の甲に浮かび上がったのは、奇妙な紋様だった。結香の舌にあったものと酷似している。手の甲の真ん中に「XVI」と描かれており、その数字の左右に縦長のライン。そして数字の上には雷の絵が描かれていた。
「あの変態女の舌にも、これと似たものがあっただろう?」
真が尋ねる。孝二は視線を固定したまま、小さく頷いた。
「何なんだ、これは?」
「刻印。戦士の証であり、奴隷の証だ」
真は右手を動かし、自分のくわえる煙草の先端を指でつまんだ。
「要は超能力の証ってことだ」
真がそう言うなり、真の指先から、乾いた音と共に火花が起きる。
「!!」
孝二が目を見張ると、真はにやりと笑った。煙草の先端からは煙が漂っていた。
「いったい何なんだ、それは」
「知りたければ、もう少し口を慎め。私と話すときは敬語。私の名を呼ぶときは真様だ」
「…………」
孝二はあからさまに嫌そうな顔をする。
「嫌だというなら、もう一度変態女とキスすることになるぞ」
「……分かった――分かりましたよ、真様」
「それでいい」
真は満足そうにうなずくと、ゆっくりと煙を吐き出しながら言葉を紡ぐ。
「いいか、一つ言っておく。今から話すことは、常人には信じられないことだ。だが、お前に疑う権利はない。全て信じろ」
孝二は頷いた。
「あぁ。それで俺が突然キスされた理由が分かるならな」
「関心ごとはそれだけか。まぁいい」
真は煙を吐き出す。漂う煙が、徐々に空気に混ざっていく。