三章 ピンクなアミーゴ⑤
「……?」
孝二は眉をひそめたまま、真を見返す。真は、顔を孝二の耳元まで近づけて、小さい声で言った。
「良かったな。目の閉じ方が分かって。翔に教わったのか?」
「……!」
孝二は目を見開く。真は言葉を続ける。
「貴様も災難だったな。だが、半分は貴様の性分のせいだ。うじうじと自分ばかり見ていたから、トラウマなんぞ抱え込むのだ。外と中はフィフティーフィフティー。よく覚えておけ。自分自身とすら、うまく付き合えない奴は、成長出来ん。能力の有無は関係ない」
「……能力?」
「……何だ? 翔から聞いていないのか? たく、あいつは何を考えているんだか。まぁ、確かに貴様はまだ役不足だ。面構えは少しマシになったが、根性がまだまだだ」
「何の話をしているんだ……?」
真は質問には答えず、そのまま椅子にもたれかかった。
「教えてやらん。貴様は舞を裏切り、私を無視したからな」
「…………」
「こら、そこ。前を向かんか」
孝二は、さらに問いただそうとするが、教師が来てしまい、タイミングを逸する。
――何で、緋川先生の言ってたことを、こいつが知ってるんだ?
孝二は考えるが、答えは出ない。
――実験体……。
ふいに浮かんだ言葉。
――助け!! 血――が、や、やめ、ろ――優!! 君は「どうして……!?? コートの! あ、これ――は。君」恨! 何で? 「君も実験体になってもらうよ」やめ! あぁ、あああああああああ!!
「――――!」
孝二は右手を額に押し付ける。そして、カウンセリングで言われたことをゆっくりと思い出し、イメージをしていく。
「――危ないな……。閉じろ、閉じるんだ」
孝二はゆっくりと息を吐き出す。だいぶ治まってきた。
孝二は窓の外に顔を向ける。雲ひとつない青空が広がっていた。
「…………」
孝二は気だるげに、大きなため息を吐いた。