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二章 真夏の夜の夢④

「人は理解しないと知識として得ることは出来ないんだよ。だから解説、解説。え~と、元寇は知っているよね? フビライが博多湾に攻めてきたやつ」

「それぐらい小学生でも分かる」

「うん。じゃ、執権だった北条さんが一二七五年に、元からの使者の杜世忠さんを殺して、その首を相手に送ったって話は知ってる?」

「……? いや、殺したのは知ってるが、その首を送ったってのは初耳。本当か?」

「さあ? 僕もなんとなく聞いたことがあるような気がしただけ。それより大事なのは北条さんの行動なの。絶対に勝ち目は無い。それなのに北条さんは戦うことを決意した。そう、皆の期待みたいなのをぶち壊したんだ。これって漫才とかでも大事だよ~。あらゆる事柄の流れに従わず、常に先入観をぶち壊す。そうすることでその人は真の漫才師となるんだよ」

「……漫才師限定かよ。てか、おまえの意見で言うと北条時宗は真の漫才師になりたくて使者を殺したってことか?」

「そのとおり!」

「んな訳あるか」

 孝二は軽く息を吐き、くわえていたタバコを吐き捨てる。

「明らかに途中で話の論点がずれてるだろ」

「どれくらい?」

「…………」

 優の眼を見る。明らかに何か変わった答えを求めている。

 考える。そして答えを導き出した。

「……えっと、三流会社の社長のカツラ並」

「……う、う~ん……」

 優はやや苦笑いを口に浮かべ、唸る。

「その、反応に困るって感じの反応はやめてくれ」

「まぁ、人生、考えかたは人それぞれ。大事なのは、自分を極めること……って感じでいい?」

「うまくはぐらかしてねぇか?」

「気のせい気のせい。ところであのロリロリの妹ちゃんに謝りに行かなくていいの?」

「……ロリロリって。いや、まぁ、行かないといけないんだろうけど……あの兄貴のほうがどうも苦手なんだよなぁ……」

「人生チャレンジ人間性欲って言うでしょ?」

「後半アウト」

「とにかく苦手だからって敬遠しちゃいけないよ。たいていの苦手って慣れてないだけっていうのが多いんだから。僕だって初めてのときは、終わるのが早すぎるって女の子に怒られたけど、今ではもう許してって言われるほどなんだからぁ~」

「…………」

 考二は大きくため息を吐く。

「まぁ、俺、これから用事があるからさ。明日謝ることにするよ」

「そうなんだ。それじゃあまた明日~」

 優に手を振り、轟は中庭から出た。

 学校を出て、歩道を歩く。太陽は傾き、昼ごろに比べると、だいぶ涼しくなってきた。

「ふん、ふ~ん」

 轟は鼻歌を歌いながら歩く。生暖かい風が頬を撫でる。その口元は少し緩んでいた。

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