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二章 真夏の夜の夢②

「なっ!」

 その優の言葉に、不甲斐無く顔を赤らめてしまった。

「何でそう言う結論に至ってんだよ」

「だって轟、僕の女癖の悪さを怒ったでしょ。つまり本気で一人の女を愛しているが故の発言だと僕は思うんだ~。違う?」

「い、いや、違わなくも無いような気がしないわけでも無いような気がするって、何言ってるんだよ俺」

 その孝二の慌て様に、優は笑いを堪えきれず、右手で口を覆う。

「ぶっ、くく、はははははははははは。轟の反応最高っ! クールに決めているようで実は初心なんだね~。でも、」

 優の笑みが変わる。

「正直言うと羨ましいな、轟が」

「優?」

 突然の反応の変化に戸惑う孝二。

「どうしたんだ?」

「……いや、ね、羨ましいな~って」

 優は軽く息を吐く。今までこんな静かな優を見るのは初めてだ。

「……何がだ?」

「僕ね……轟も知っているように、女の子がすごい好き。話していると癒されるっていうかさ~。……でもね、僕は女の子が好きでも……一度も愛したことが無いんだ。何人もの女の子と付き合っておいて、たったの一度も……」

「…………」

 急なシリアスモード突入に戸惑い、沈黙する。

 そんな中、優はポツリと言う。

「さっきね、轟言ったでしょ。生き方最低だって」

「いや、あれは……」

 優は続ける。

「轟はさぁ~、もうちょっと自分に自身を持ったほうがいいよ。自分の論理をべらべら喋ってると恥ずかしくなっちゃうのは轟の良いところで悪いところだね。別に構わないと思うよ。でしゃばるのは馬鹿みたいに見えるけど、実際後ろでぶつぶつ未練やら何やらと、ほざくほうがダサい。かっこわるい」

「…………」

 孝二は優の言葉を静かに聞く。

 そして一分程沈黙が続いた頃、優はふう、と息を吐き、なんてね、といつもの笑みで言った。

「なに、ちょっとそれっぽいこと言ってみただけ~。そんなに深く受け止めないでよ」

「あ、あぁ……」

 あはは、とむなしく響く優の笑い声。笑い声のはずなのに、その声を聞くと、どんどん気分が沈んでいく。

 そういえば放課後は舞に学校を案内する約束をしていたが、すっかり忘れていた。今思い出した。まだ学校にいるだろうか。それとも怒って帰ってしまっただろうか。

 ――今から探すか、明日謝ろうか……。

「轟~」

 これからどうしようか考えていると、優が名前を呼ぶ。

「ん、何だ?」

 考え事を一時中断し、優に顔を向ける。

「ひょっとしてさ~」

 優は右手の人差し指を、右斜め前方に向ける。

「転校生ってあの人?」

「えっ?」

 優の指が指す方向に視線を向ける。そこには、

「うぅ……ひどいよぉ……」

「だから言っただろ。アレはどうしようもなく馬鹿でボケで屑で阿呆で能天気で足が短いのろまな頭の悪い最低なゴキブリの卵に集る蛆虫だと」

 七神兄妹だ。何と最悪なタイミング。

「……さすがにそれは言いすぎだと思うんだけど……」

「言い過ぎなものか。奴は約束を破った、これは変えようの無い事実だ。いや、もとから守るつもりなど無かったに違いない。そんな顔をしている。そう、あれは電気の光に集るカナブン以下だ……と、ん?」

 二人の内の一人がこちらに気付き、不愉快極まりないといった感じに顔を歪める。

「何でここに貴様がいる」

「もう、お兄ちゃん!」

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