表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/79

二章 真夏の夜の夢①

「それは大変だったねぇ~」

 放課後、孝二はいつもの中庭のベンチに腰掛け、火の付いていないタバコをくわえていた。隣には優が片手で携帯電話を操作しながら、孝二の話を聞いている。

「んで、その無差別的高性能っぽい殺気発射装置さんはいいとして、妹さんのほうはどんなの? かわいい?」

「おまえにとってそれしか興味ないんだな」

「当然。男に興味無し。男の喘ぎ声なんて気持ち悪いだけだし」

「…………」

 皮肉に言ったつもりが、何とも思ってないようだ。

「そういえば知ってる?」

 優が誰かにメールを打ちながら、問う。

「何が?」

「今日新しく教師が来たんだって」

 打ち終わったらしく、パタンと携帯を畳む。

「新しく来たのは体育とカウンセラーの先生二人だって。ちなみにどっちも男。片方は美形らしいけど僕は興味無し。あ~あ、綺麗な女教師が来てくれたら燃えるのになぁ……」

「何がだ」

 孝二の声に、優は胡散臭い笑みを浮かべ、

「分かっているくせに~、カマトトぶっちゃって~」

「おまえ一回留置所行ってこい」

「うわ、ひどっ。それが長年付き合ってる友人に言うセリフ? 轟最近僕に冷たく当たってない?」

「だったら、手当たり次第に女と寝るのはやめろ。ただ遊ぶだけならまだしも……さすがに軽蔑する」

 孝二の遠慮無い言葉を聞き、優は笑みを浮かべる。その笑みは先程までの胡散臭い笑みとは微かに違っていたが、孝二は気が付かなかった。

 でもさ、と優が口を開くが、孝二は聞く耳を持たず、発言する。

「前から言おうと思ってたけどさ、はっきり言って遊びで寝てるんだろ? ただ、愛情よりも体の欲望優先。飽きたら別の女に彼氏がいようがお構いなしに手を出す」

「…………」

 優は押し黙っている。孝二は自分の中の、今まで溜まっていた何かを吐き出すように言う。

「くだらない生き方だよ。一種のゲームとでも思っているのか? おまえはどう思おうが、女も人間だ。商売でやっている奴じゃない限り、体だけ犯されたじゃ、満足いくわけ無いだろ」

「でも、体だけの付き合いを求めてくる女性もいるけどね」

「…………」

 孝二が不快の色を顔に浮かべ、優を見る。隣に座る優は先程と同じ笑みを浮かべていた。

「轟、何か嫌なことでもあった?」

「…………」

 のんきな声で尋ねる優。その声と笑みを見るとどういう訳か、先程まであった不快感と苛立ちが一瞬にして消え失せた。

「…………」

 孝二は、優から目をそらし、軽く息を吐く。

「僕ならいつでも相談に乗るよ」

 優はいつもの、のんびりとした感じに言った。なんだか先程まで指摘していた自分が恥ずかしくなった。

 ――何言ってるんだろ、俺は。馬鹿みたいに何も知らない奴が、熱く語って……。

「いや、悪かったな。愚痴みたいなこと言っちまって」 

 と言い、自己嫌悪。脳内で自己批判を開始。

「別に気にしてないよ~。本当のことだし。それに、」

 いいこと分かったし~、と優は、機嫌良く言う。

 いいこと? と孝二は眉をひそめる。

「何だよ」

「それは~」

 優は再び口元に胡散臭い笑みを浮かべる。

「轟が千里ちゃんを本気で愛しているってこと~」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ