表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/79

一章 ためいき⑧

 教師は再び深呼吸。だからですね、と優しく諭すように言う。

「ここは高校生が勉強に来るところで、君のような子供が来るところでは……」

「私、十六ですぅ」

「…………」

 再び重い沈黙が降りる。

 孝二は軽くため息を吐き、その子の観察を始める。

 髪……同じく綺麗な黒髪を肩辺りで切りそろえている。校則違反ではない。

 顔も服装も、これといって変なところは無い。無いのだが……。

 身長……絶対高校生じゃない。だって百三十も無いだろ、この子。小さすぎ、明らかに小学生。まぁ、童顔幼稚体型なだけかもしれないけど。

「早く紹介してよ、早くぅ」

「…………」

 教師の深いため息。魂が抜けているような感じがするのはたぶん気のせいだろう。

「え~、皆さん。彼女は同じく転校生の七神舞ちゃん。真君とは兄妹だそうです。何故分かれずに、このクラスに二人が来たのは分かりません。いや、もうどうでもいいや……」

 教師として言ってはいけないことを呟きながら、教師は教室から出て行った。

 ――兄妹ねぇ……。

 孝二は、真と舞を交互に見比べる。

 たしかに二人とも何となく似ている。特に髪が。だが、兄も妹も絶対に高校生には見えない。てか、大学生と小学生だろ絶対!

 そんなことを考えながら、二人を見ていると、ふいに舞と目が合った。にこりと、こちらに笑みを向けてくる。

 その笑みに曖昧な笑みを返す。すると、舞がこちらに小走りで近付いてきた。

「私、七神舞。舞ちゃんって呼んでね」

 孝二の机に手を突き、満面の笑みのままそう言ってきた。

「え、あぁ、よろしく。俺は孝二って名前なんだ」

 一応普通に返答する。

「孝二? 名字はなんて言うの?」

「え、その……」

 孝二は返答に詰まる。周りの奴も「そういえば孝二の名字ってなんだっけ?」と言い出した。

「いや、俺も呼ぶときは名前でいいからさ。俺も舞ちゃんって呼ばせてもらうし」

 舞は、その言葉を聞くと、わずかに顔を赤らめ、そして再びにっこりと微笑んだ。

「うん、ありがと」

 それで、と舞は身を乗り出して尋ねる。

「あ、あの、このあと学校の中、その、案内してくれる?」

「いいよ、喜んで」

 舞の頼みをあっさりと承諾する。それには周りからも、「手がはえ~ぞ~」や「積極的~」や「おまえ彼女いるだろうが~」「え、彼女居るの? 誰、誰?」「ほら、いつも一緒にいる、えっと……確か名前は優とか言う、」「アイツって男じゃねぇのか?」「うわ、そっちの趣味あり? 引くって」

「てめえら少し黙れ!」

 とりあえず好き勝手言う周りの連中は黙らせとく。

「それじゃあ私ここに座るね」

 と舞が、いつの間にか孝二の隣の席についていた。

「これからよろしくね」

 そう、にっこりと微笑みかけてくる。

「あのさ、」

 孝二は微笑み返しながら一言。

「そこ他の人の席なんだけど……」

 その言葉を聞くと、舞は首をかしげながら言った。

「え? でも今、誰もいないよ」

「いや、確かにいないけど……多分今日休みか何かなんだろうけど」

「じゃあいいね」

「いや、良くないでしょ。思いっきり」

「どうして~、今はいないじゃん」

「今いなくても、そこは別の人の席で……」

 それじゃあ、と舞は人差し指を立て、言った。

「その人が来るまで私はここの席~。それでいいでしょ?」

「う、まぁ、いい、のかな?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ