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乾燥したガラクタ  作者: デラシネ
旅路
16/28

時間が解決できることも、できないこともある。

少し時が流れる。


高校3年生の夏、ハルは大学受験のために音楽活動を休止した。

以前から告知していたことだ。

恐らくAO入試でどこかの有名私立にでも合格するだろう。


タカハシとハルが、渋谷の路上で偶然とも運命ともつかない出会いをしてから、1年ほどが経っていた。


タカハシは無事にプログラマとして就職していた。副業でアプリの開発も行い、人並みの収入を得ていた。

意外かも知れないが、対人折衝も上手かった。作り笑顔はできるし、元々柔和な雰囲気があるのだ。

上流工程も少しずつ任され始める。


ハルとはもう、半年ほど会っていない。仕事を口実に会うのを避けていた。

もう自分のことなど忘れているだろう。ハルのためにも、そう願う。

しかしそう思うと、どうしようもなく胸が苦しくなった。





受験中のハルに会うことはない。

ミズタニとも疎遠になりつつあった。

最後に電話で話した時「時期が来れば連絡します」と言っていた。


タカハシは再び孤独を感じるようになった。

正確に言うと、孤独が苦ではなかったのに、そうではなくなっていた。


タカハシはそれを弱さだと捉えた。




何ヶ月か、孤独も愛も葛藤も、何もかも忘れようと努力した。

毎日を忙しく過ごす。たまにギターを弾いて曲も作った。

それでも、タカハシの奥底にはハルがいる。






また少し、時が流れる。


電話が鳴る。貸与された仕事用のスマホではない。

相変わらず友人のいないタカハシには、電話の主が誰かわかっていた。


「どうも。元気でしたか?ナツさん」

タカハシをこう呼ぶのは決まっている。



「ご無沙汰してます。ミズタニさん」



「えーと、ハルのことなんですけど」

「活動再開します」


予想通り、ハルはAO入試で有名私大に合格した。





ハルはこの1年で人気が急上昇していた。

雑誌は勿論、テレビにも出るようになっていた。

加えて華の大学生活だ。タカハシのことなど考える暇はないだろう。




「おめでとうございます」

タカハシは精一杯の強がりを言った。



「もういいと思うんですよ」


「もういい?」


「いやね。もう大学生なんだし」

「アーティストの意向は尊重してますから」

「ハルと会ってもらえませんか?」


「嫌です」


「そう言うと思いました」


「もしもし、ナツさん?」


「・・・・・・ハルさん?」


「久しぶり」


「あ、ああ。久しぶり」


「会いたいんですけど」


「・・・・・・・僕は会いたくない」


「なんで?」


「なんでって、そりゃあ・・・・」


「そんなの、つまらない話です」


「・・・・・ミズタニさん、口軽いよ」


「ライブやるから来てください」


「・・・・・いつですか?」

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