金持ちになった男
<前書き>
男性にとって、女性は永遠の謎らしい。
また芥川龍之介によると、
「恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである」らしい。
<注意>
男性向けなので、どうぞ女性は読まないでください。
これはある男女の物語。
人生の小さな俯瞰図。
× × ×
彼は田舎者で貧乏だった。
だが、とても幸せだった。
大好きな彼女がいたから。
同い年の彼女とは相思相愛だった。
二人とも裕福ではなかった。
小学校からの幼馴染だった。
二十歳になった。
彼は地元で働き始めて2年。
彼女は上京して音大の2年生。
その学費は、彼が援助した。
が、もう半年も会っていない。
彼が電話しても、彼女が出ない。
たまに話せても、元気がない。
心配になった彼は、会社を休んだ。
そして上京して彼女のアパートへ。
彼女には連絡しなかった。
彼にとって初めての都会だった。
道に迷った。
夕方、彼がアパートに着いた。
そこにクルマが止まった。
ピカピカの高級外車だった。
助手席から降りたのは彼女だった。
運転していたのは若い男性だった。
二人はキスをした。
抱き合いながら、二人はアパートへ。
彼は彼女に二度と電話しなかった。
彼女から何度も電話があった。
だが出なかった。
三ヶ月たち、かかって来なくなった。
× × ×
二十年が過ぎた。
彼の体重は二十キロ増えた。
彼女の名前は…ネット検索しても出ない。
珍しいファーストネームなのに。
音大は卒業したらしいのに。
彼は飲食店経営で成功した。焼肉、寿司、うどんなど…全国に百店舗以上できた。チェーン店は拡大する一方だった。つまり彼は「金持ち」になったのだ。
彼が久しぶりに地元に立ち寄った。
うどん屋に入った。
彼が経営するうどん屋の支店の一つである。
すると…あの彼女が働いていた、慣れない手つきで。
彼はといえば、サングラスにヒゲ。地元の友人たちも気付かないくらいだ。
彼が、彼女に、イタズラ気分で聞いた。
「おばちゃん、肉はどこ産? ブラジル?」
「勤務して三日目で……聞いてきます」
彼女は、彼だと気付かなかった。
彼も、自分が何者か何も言わなかった。
その日の鶏ねぎうどんは、いつもより美味かった。
彼は満足して店を出た(嗤いながら)。
それだけの話だ。
× × ×
ああ…、時は残酷だ。
可愛かったあの女性は、今は面影もない。
二十年たって、太った醜いおばさんになっていた。
そして……彼は翌月に結婚予定。
初めての結婚だ。
相手は二十代の美人で、資産家の娘。
なんと、彼女からプロポーズされたのである。
だから……今の彼はとても幸せだ。
二人に幸あれ!
<終>
<後書き>
男性に向けて書いた。
女性向けじゃない。
女性だと(すごく)嫌悪する人が多い…かもしれない。
ありきたりの展開。
だが読みやすい内容だと思う。
もし……この話を漫画化しても駄作だろう。
もし……実写で撮っても駄作だろう。
登録して三日目。
一作くらい載せておきたいので書いた。
完結させて初めて判ることがある。
書類をPCで作ってプリントアウトして初めて気付く…あれだ! 自分の頭の中にあるだけじゃ判らない。あらすじだけじゃ判らない。完成させて、三回読んで、初めて気付くことがある。
残念な所1:サプライズがない。
それって致命的だ。
残念な所2:キャラが見えない。
容姿や性格が分からない。
だから読者は感情移入できないだろう。
絵にたとえると、デッサン人形みたいだ。表情がない。
とりあえず、読みやすい短編を作った。
そして公開できたので満足している。