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0-4.最初の、

「俺はその後銃声の方へ向かって歩き出した。ルオストは広いが遮るものがなくて、広大な敷地をただ音の方にまっすぐ進めばよかった」


 ヘルンの膝の上にはキトが体を丸くしている。ヘルンは遠く、何十年もの昔を見つめながらその情景を言葉にし続けている。


「俺たちが教育を受ける研究棟から遠ざかると部隊の宿舎があって、更に歩くと森林地帯がある。射撃場はその森の手前にあった。射撃場、といっても平原に四角く立入禁止のロープを張り巡らして、撃ち場に申し訳程度の屋根をつけた物だ。遠くには盛った土と人型の的がいくつも並んでいた。朝早いせいで、そこにはシィしかいなかった」


「誰ですか?」


 訊ねると、ヘルンはどこか決まりの悪そうな、だけど言い出したくてむずむずしているような顔した。まるでお母さんの誕生日プレゼントを買いに行く子供のようにも見えた。


「妻だ」


 私はふと、今頃下にいる老婦人の名前を思い出し、どこをどう愛称を変えたら『ユヴァ』が『シィ』になるのだろうと考えた。そんな私に、ヘルンは端切れ悪く、


「最初の、」


 と言う。私は「あぁ」とつぶやき、次々湧き上がる疑問を飲み込んだ。今聞かなくても、きっと順序を追って語ってくれるはずだった。

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