表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/79

恐怖とは、目に見えない魔物である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


管理室に向かうと、すでに騒ぎを聞きつけていたのか……

4人の管理者が集まっていた。

「さて、話は聞いているよ。キミ、自分が何をしたのかわかっているかね?」

「……」

何も話さないクロウ。

「クロウさん……」

「無言という事はぁ、罪を認めるって事でいいですかぁ?」

「……」

うつむいたまま、何も話さない。

と、そこへ……

「……」「……」

「!?」

カインとシルビアも来ていた。

「カインさん、シルビアさん……!?どうしてここに」

「呼ばれてきたんや、サファイアに」

「わたくしは、坊ちゃまが向かう場所についてくるのみです」

その背後には、多くの『黒き悪魔たち』の姿も。

「ど、どうして……?」

「……それを聞きたいのはワシや」

クロウに接近し、両肩を掴む。

「お前、なんちゅう事をしてくれてんねや。

 人の善意に漬け込んで、そんなけったいな真似するとか……

 お前仮にも、ギルドのメンバーやないか!

 同じギルドのメンバーの奴らにまで迷惑かけてどないすんねや!」

「か、カインさん……僕の話も」

「お言葉ですが、クロウさん。{犯罪者}の言葉をお聞きになるほど……

 坊ちゃまは聡明ではありません故」

シルビアが念押しすると……

「そうだそうだ!ふざけるな!」

「お前のせいだぞ!お前の!」

「俺たちの事どうなってもいいのかよ!」

一斉に『黒き悪魔たち』のメンバーが騒ぎ出す。

声の洪水が、そのままこちらにまで押し寄せる。

「静かにしろ!」

パールが一喝しても、その騒音はやまない。

「……」

不安になるエミリー。

……『犯罪者』。

人をだまして、諸共に倒そうとした。

確かにそれは悪い事ではある。

でも、犯罪……?

そんなに重い事なんだろうか?

確かに拉致されたのは事実……だけど……

……そう言った迷いが、あっという間に吹き飛ぶ事態になった。

「そもそもクロウ、今回が初めてじゃないだろ!」

「え?」

「お前、この間も{友人からそこに強いアイテムがあるって聞いた}って言って、

 雪山地帯の敵が強い洞窟に俺たちを連れて行かせて、ボコボコにさせやがって!」

……ディアナの時と、同じ手口だ。

「そうだそうだ!俺もそうだぞ!」

そこにいるギルドメンバーが、続々と言葉を発してくる。


クロウのせいで、クロウのせいで、クロウのせいで、クロウのせいで、

クロウのせいで、クロウのせいで、クロウのせいで、クロウのせいで、


口々に言う言葉に、ディアナは戦慄した。

このギルドメンバーほぼ全員が、クロウに騙され何らかの被害を受けている……?

「……お前、ホンマか?」

「……」

「一応聞いといたるわ。お前、ホンマにこいつらを騙したんか?」

するとクロウは……

「どうせ、何を言っても信じてもらえないんです。この後の処遇は、すべて受けます」

「……」

じっとクロウを見るカイン。

「……ふん」

そしてエミリーの元へ向かって……

「帰るぞエミリー」

「えっ……でも……」

「ええから、帰るぞ。こんな奴の言い訳なんざ聞いてもしゃあないわ」

怒りで肩で風を切りながら、カインが歩いていく。

「……」

エミリーは、クロウを少し見た後……

「……」

物悲しそうな顔をしながら、去っていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「で、その後、クロウへの処分なんだけど、とりあえず保留になったよ。

 ま、他の人じゃなく、ギルドメンバーに対することだから……

 処分も軽ーい奴になるかも知れないけどね」

ここまで活き活きと話すディアナだったが……

「……」

俺はその様子が、何だか哀れに見えた。

「でも、本当よかったわ~。{黒き悪魔たち}まで助けられ……

 ん?どったの~?みんな、HMKみたいな顔して」

「まずHMKがどういう意味かわからねぇけど……」

「多分{鳩が豆鉄砲を食ったよう}だと思う」

ポラリス、たまにわかるんだよな……でもどうしてだろうか?

「……ディアナ、喜んでるとこ悪いけど……落ち着いて聞いてくれ」

「ん?」


俺は、クロウの、やり方にしてはあまりにお粗末すぎるやり方を、

クロウの行動の違和感と、

そして、偽クロウの存在を明かした。

「……」

信じられない様子のディアナ。

その証拠に……

「ないない!でもあれだけの人が一斉に言ってんだよ~?

 IKDOだよIKDO。みんながみんな、クロウをはめてるなんて思えないし……

 みんながみんな偽クロウに騙されてるってことになるよそれだと」

そう言われれば、確かにそうだが……

「と~に~か~く~、遅くなってごめんね。みんな、待たせちゃった」

「は、はい……」

何とも言えない微妙な雰囲気になってしまった。

それを律するように、リエータがパチンと一度手をたたく。

「まぁ、気になることは多々あるけどさ、今はひとまず忘れよう?

 とりあえず、スキルのかけらの話からね」

「え?スキルのかけら?何何~?」

再び和気あいあいとした雰囲気になるギルドホームの中。

「……」

……なんだ、なんだ?


この胸騒ぎというか、なんというか……


「ほら、タイガ君も!」

「え?」

リエータの言葉でびくりと肩が動く。

「聞いてなかったの~?じゃんけんで決めるよ!

 このスキルのかけらの使用者!」

「……あ、あぁ」

じゃんけんか。なるほど。

それなら多少は公平性があるな。

……『あの人』以外は。

「とりあえずじゃんけんで一番数が少なかった人が脱落ってことで。

 例えば、あたしだけがパー、それ以外の人たちがグーかチョキをだしたら、

 あたしだけが脱落。いいかな?」

「わかりました」

「じゃあ、いくよ。じゃ~んけ~ん」


結果的に勝ったのは、ポラリスだった。

人の考えを読むのが得意なポラリスがいる時点で、俺たち詰んでるんだよな。

「つ、次もし見つけたら、ボクは遠慮するから……」

やめろ、ここで遠慮しないでくれ。

特に俺に。

最初に他3人がチョキとパーで分かれる中、1人だけグーを出して、

速攻で落ちた俺に。

昔からじゃんけん弱かったからなぁ。


―――――――――――――――――――――――――――


ログアウトし、2人で夕食。

「……」

「……」

珍しく、食事中にスマートフォンを使うナツキ。

「どうした?ナツキ」

「あ……うん。ちょっと気になったことがあって……」

「気になったこと?」

「ディアナちゃん……言ってたよね」


――ないない!でもあれだけの人が一斉に言ってんだよ~?

――IKDOだよIKDO。みんながみんな、クロウをはめてるなんて思えないし……

――みんながみんな偽クロウに騙されてるってことになるよそれだと


「……あぁ。やっぱりお前もそう思うか」

確かに、みんながみんな偽クロウに騙されているとは考えにくい。


……『考えにくい』が、『絶対にありえない』ことではない。


「じゃあ、なんであの時場を取り繕ったんだ?」

「多分、あの時のディアナちゃんには何を言っても無駄だと思うの。

 あれほどうまくいったんだから、自分の行動に自信を持っちゃってる。

 ……それが、偽クロウの作戦だと知らずに」

あり得る。

人間にとって、1番の恐怖とは、積み上げられた幸せが、一気に崩壊することだ。

それを狙って、偽クロウは行動している……?

「で、何を調べてるんだ?」

「掲示板見てるんだ。今は特に変わりはないけど……

 もしここに、きっかけが出来ちゃったら、また大変なことになるよ」

「……」

きっかけ……

前のツバキの事件の時もそうだ。

あの時のレックスの動画のように、何らかのきっかけが出来てしまったら……


……その、悪い予感は、


―――――――――――――――――――――――――――


【悲報】WOOさん、やらかす。


1 名無しの冒険者


昨日捕まったクロウって奴、結局濡れ衣だったらしいな


2 名無しの冒険者


kwsk


3 名無しの冒険者


クロウという人物を、偽の情報を漏洩させ混乱を招いた罪で捕縛

クロウから供述を聞くことなく、処分保留のままアバターの身柄を拘束

結果、クロウ、シロであることが発覚

クロウの所属していた『黒き悪魔たち』のギルドに

何らかの処分を下した後で釈放したため、批判殺到


4 名無しの冒険者


おいおいやらかしたな運営

前の例のギルドの時といい、やっぱり無能じゃねぇか


・・・


8 名無しの冒険者


いや、一番無能なのは……

クロウをはめようとしたディアナとエミリーって奴じゃね?


9 名無しの冒険者


どーゆーこと?


10 名無しの冒険者


本当ははめられたほうはクロウなのに、あの二人で

協力してクロウをはめようとしたんだよ

そこにもう1人タイガもいたんだけど、タイガは

エミリーについてきただけだから、一歩間違えれば

あいつもはめられてたかも知れん


・・・


103 名無しの冒険者


で、どうしたよあの二人


104 名無しの冒険者


さぁ?アーチャー氏?

ディアナどうしてる~?


105 名も無きアーチャー


そんなこと言えるわけないでしょ

そもそもディアナがはめようとしてたって証拠はないよ


・・・


111 名無しの冒険者


は?アーチャー氏ディアナをかばうんかい


112 名も無きアーチャー


少し頭を冷やして考えればわかるはずだよ

まぁ、何言っても無駄そうだけどさ


―――――――――――――――――――――――――――


……翌日、最悪の形で現実となった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……」

そしてディアナの……上弦のスマホには……


TO:ディアナ(DianaTaiken)

Subject:


お前に味方なんていないんだよ

わかったか?

わかったならもうこのゲームに現れるな


目障りだ


……送り主は、クロウのアドレスだ……

「……」

彼女の腕は、ぶるぶると震えていた。

まるで、かつての、気弱だった自分のように。

偽クロウの正体とは、

そして、偽クロウの目的とは?

次回から長編に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ