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明るく振る舞う人ほど、心の闇は深くなってる。

翌日、ログインすると……

「やぁ、タイガ。久しぶりだね」

そこにポラリスと、ツバキがいた。二人とも軽く手を振る。

「まぁ、久しぶりって言っても、2日会わなかっただけだけどね」

「私としては、とても長く感じちゃいましたね」

後頭部に手を添えながら、ツバキが言う。……まぁ、俺もなんだが。

「で、他のみんなは?」

「みんなギルドホームに集まってるよ。ボクたちは町の様子を見に来たんだ」

「それにしても、タイガさんがこれほど遅いなんて意外ですね」

「そ、そうか?」

…………


(漫画が面白くてキリがいいところ中々見つからなかったなんて、言えるわけねぇ)


「……まぁ、タイガにもいろいろ事情があるんだよ。

 例えば漫画が面白くて、キリがいいところ中々見つからなくて、

 それで昨日寝るのが遅くなったとか、そんなわけないもんね」

「な、なんでわかったんだよ!?」

「え?そうなの?」

ポラリスは、きょとんとした顔を向けた。

……そういやこいつ、人の考えや心を読むのが得意だったな……


お の れ ポ ラ リ ス!


「わかります。私だって、夢中になるものが見つかったら、つい夜更かししちゃいますから」

「い、いいからギルドホーム行くぞ!」


ギルドホームの中は、きれいに掃除されていた。

「あ、タイガさん」

「お、おはよう、ございます……」

出迎えるエルとアレンの兄妹。

「ちょ~、タイちゃんお~そ~い~!遅刻とかゲロイラなんだけど~!」

「本当、あたしたちあまりに暇だから掃除してたんだよ?」

ディアナとリエータも、俺を出迎える。

「……」


――上弦先生……いや、ディアナちゃんは、何か悩みを持ってる


――なんというか、無理してテンションを上げてる感じがものすごくて……


「どったの~?タイちゃん」

「ん?あ、いや……何も」

ナツキに言われたあの言葉が、妙に気になる。

だが今は気にしなくてもいいか……?


「さて、今回のアプデで4か所の新エリアが追加されたが……

 今日はとりあえず、この4か所のうち3か所探索しようと思う」

俺以外全員が座り、俺がギルドボードの前に立って話す。

「あたしたちギルドは7人。あんまり割きすぎるとなると……

 1か所、1人で探索しないと行けなくなるしね」

「「「「「「…………」」」」」」

全員、リエータに集中。

「い、いや、確かに行けそうだけどもう行かないよ!みんなに心配かけたくないし」

「ということだが……どうする?」

(どういうことなのお兄ちゃん)

するとポラリスが、端末を向けた。

「こんな時の、ボクだよ」


―――――――――――――――――――――――――――


【Ver.8.0.0】WOOメンテアプデまとめ【VRMMO】


698 名も無きアーチャー


みんな、新しいマップどんな感じ?


・・・


712 名無しの冒険者


火山地帯の敵はやべぇわ……デカいだけの敵かと思ったら

レベル88とか出て「は!?」ってなったわ

当然1撃で消し飛びましたが、何か?


713 名無しの冒険者


海洋地帯に行ってみたけど、ここ水得意じゃないときつそう

水着防御力ないに等しいから、一発食らったら死ねる

ちなみに俺氏は風得意


714 名無しの冒険者


廃城地帯の敵強すぎやろ……これ開発者テストプレイしたんか?

敵のレベル一番低くて55とか初心者置いてけぼりやで


・・・


721 ナナシドラゴン


そもそも廃城地帯は密林地帯の洞窟抜けた先に新しくできた場所だし

初心者さんは気付かなさそう

僕のフレンドが行ってみたけど、ダンジョンが2、3個ある程度で

特に目新しいものはなかったって言ってたよ

敵は確かに強かったけど、なら冥府の塔とかに行けばいいしね


722 なな守護者


冥府への塔、地下11階のセーフティーエリアまではギルドメンバーと行けた

でも地下12階から敵のレベル跳ね上がるね

特にアークゴーレムとかレベル72とかあってギルメンの人消し飛んだ


723 光の使者ナナーシー


どうも、消し飛んだ人ですwww

ごめんなさい守護者さん……


・・・


728 なな守護者


まぁ、あたし以外みんな、なんだけどね

ナナーシーさんだけのせいじゃない

ところでこれ、地下30階までたどり着けたらなにかあるのかな?


729 名も無きアーチャー


こう言うゲームは急に難易度インフレ進むからねぇ

ちなみに守護者さん、そこってオーバーソウルはいた?


・・・


735 なな守護者


いんや?11階、セーフティーエリアに入る前につっよい敵はいたけど

オーバーソウルじゃなかった

多分30階にオーバーソウルがいるんじゃない?

冥府への塔って言ってるから、ハデスってあたりの名前の


―――――――――――――――――――――――――――


「……つまり、海洋地帯には水属性が得意な二人は確定だな」

ディアナも端末を見ている。

多分、ポラリスと同じように色々探してくれているのだろう。

「わ、わたし、泳げません……!」

「大丈夫だ。水属性得意なら泳ぎやすくなるって隠れ効果があるんだよ」

「隠れ効果……?」


~サファイア先生の ワールドオーダーオンライン講座~


久々登場!サファイアです!

そう!実はタイガさんの言うとおり、隠れ効果として、

各種属性には追加効果があるんです!


炎=溶岩の熱さを緩和できる 水=泳ぎやすくなる

雷=麻痺にかかりづらくなる 風=吹き飛ばし効果を受けづらくなる

光=目潰しにかかりづらくなる

闇=毒にかかりづらくなる


とはいえ、どれも隠し効果にしか過ぎず、知らない方も多いです。

また、イベント中では、やや効果が薄くなります。


―――――――――――――――――――――――――――


「わかりました。が、がんばります」

「大丈夫だエル。僕も行くから」

「とはいえ、もう1人くらい誰か欲しいとこだな……

 俺とリエータは酸素が半分になるから、足引っ張りそうだし。

 ツバキとディアナは……いや、やめとくか」

その言葉に、反射的に疑問を感じる二人。

「どうしてですか?」

「ウチ確かに現実でも泳げないけど、行こうと思えば行けんじゃね?」

「い、いや……だって……」

するとまたポラリス。

「他の女の子に水着を着せるのが男としてしのびないんだね」

「くぁwせdrftgyふじこlp!」

「ご、ごめん……謝るからちゃんとした言葉で怒って……」

と、言うと……

「私なら大丈夫ですよ。昔から両親に、水泳の指導は受けてきましたし、

 実際に泳げない人よりは泳げる人の方がいいと思います。

 それに……ある程度素早さがあったほうが、よくないですか?」

「まぁ、それは確かに……泳ぐわけだからな。で、次は……」

まず、冥府への塔は急いで攻略することもないはず。

『黒き悪魔たち』が苦戦するくらいだ。

他のギルドも、それほど急いで攻略にかからないだろう。

火山地帯は……火山地帯というほどだから炎を得意とする敵が多いはず。

つまりここにリエータを入れておこう。残りは廃城地帯だが……

「ウチ、廃城地帯行きたいかも」

と、ディアナ。

「な、なんで……?」

「ん~、なんとなく?肝試し的なサムシング?」

サムシング?……まぁ、いいや。

「じゃあこの間と同じように、ディアナにはポラリスがついていってくれ」

「わかっ……」

何故か言いよどむ。そして……

「……いや、ボクが火山地帯に行くよ」

「え?」

「ということで、タイガは廃城地帯だね。ディアナと一緒に」

ディアナと一緒、という言葉を強調するポラリス。

直後にリエータから、メールが届いた。


TO:タイガ(Tiger)

Subject:


お兄ちゃん、ごめん

今日はディアナちゃんと……上弦先生といてあげて

そのほうが、上弦先生のためになると思うの


「……そういう事か」

「ん?どったの~?タイちゃん」

「なんでもない」

俺たちはいっせいにギルドホームを出た。




密林地帯の洞窟を進んでいく。

「それにしても不思議だよな。ポラリスも何を言い出すのか……」

「……」


――タイガの弱点を調べろ

――出来なかったら……わかっているな?


「……」

「……おい、聞いてるのか?」

「え?」

訝しげにこちらを見るディアナの瞳に、俺はたまらず声を発した。

「き、聞いてるって……何が?」

「何がって……なんでお前廃城地帯に行きたいって言ったんだよ」

「……あ、あぁ。それは……なんつーか……好奇心?」

「……それだけなのか?」

何が?という顔のディアナ。

「……」

なら、と、俺は端末をディアナに見せた。

「……!?」


―――――――――――――――――――――――――――


747 ナナシドラゴン


廃城地帯は確か、魔法を使う敵が多いとは聞いた

精神が低かったり、闇属性得意は気を付けないといけないね


―――――――――――――――――――――――――――


「お前はこの書き込みを見て、俺を廃城地帯に……

 ポラリスやリエータの人の良さに付け込んで{向かうように仕向けた}

 違うか?違うなら違うでいいんだが」

「……」

「いや、あってるだろ?無言ならあってるってことだ」

「ごめん、タイちゃん」

以外とあっさり認めたディアナ。

「……誰の仕業だ?誰に俺をはめるよう命令された?」

「でも、その前に」

「先に俺の質問に答えてくれ。お前を信じているから、聞いてるんだ」

「……」

するとディアナは、突然俺から体をそらした。

「ごめんなさい……タイガさん。それは……言うことが出来ません」

そして口調も変わる。それはディアナではなく、上弦先生として。

「……仲間を裏切っても、ですか?」

上弦先生の口調になっていたので、俺も口調を変える。

しかしその質問には、ディアナは何も答えなかった。

「でも……どうして私が隠し事をしていると……?」

「これでも頭はいい方なんで、人の隠し事に気付くのが得意なんですよ。

 隠せると思わないでくださいよ。上弦先生」


……まぁ本当はナツキの考えなんだけど。


それを言っても、ディアナは反論しない。

「……わかった。じゃあこうしましょう」

俺は人差し指を立てた。

「え?」

「簡単に言うと、勝負です。

 もしこれであなたの思うとおりの展開になったら、あなたの勝ち。

 思うとおりの展開にならなかったら、俺の勝ち。

 俺が勝ったら、事情を話してもらうってことでどうです?」

「……嫌です」

今度はきっぱりと否定する。

「何故」

「勝負にならないからです。タイガさんの実力では、きっと……」

「……」

反論できないのが悔しい。

だが、この勝負、みすみす負けてやる気もない。

「……そろそろ、洞窟を抜けますね」

「……」

するとディアナは……

「んじゃ、タイちゃん、ブチアゲでいこっか!」

元通りの口調に戻った。

……おそらく、臨戦態勢なのだろう。

「……」

その姿が、とても頼もしくて……

とてもいつもらしく思えて……


……とても、哀れに見えた。


「……あぁ」

俺はそうとだけ言うと、洞窟の出口に向かって足を運んだ。

ディアナの心の闇は、思ったより深いようです。

タイガはディアナとの「勝負」に勝てるのでしょうか?

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