表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/79

勝敗を分けるのは、90%の実力と、10%の閃きである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


援護班の飛行船内。

「ツバキと……リエータと……ディアナが……一撃で……!?」

「……!」

ゼウスのスキル、神の怒りにより、すさまじい火力が出る。

「これは……一体どうすれば……」

その時、飛行船内が激しく振動した。

「「「うわあっ!」」」

ピロリン!


【ゼウスの高揚度が 70%を超えました ゼウスの怒りに耐えるのは 限界が近いです

 これ以上 攻撃班がやられてしまわないよう 援護を願います】


と、通達。

見ると、神の領域の上空が赤く染まっている。

しまった……鎮静剤を使っていなかった。

ゼウスの高揚度は、80%になっている。

つまり、鎮静剤を使っても、やられられるのはあと2回……

「……タイガさんは?タイガさんは無事なんですか?」

「……無事だ、おそらく冥府神の加護を……」

しかし、タイガのHPを見ると、大きく減少している。

「……?」

おかしい。

冥府神の加護はダメージ自体を無効化するはずだ。

なのにダメージは食らっている。のに無傷。

あれほど無傷だったあの3人はやられて、タイガだけは無事……?

「……!?」

ポラリスは、何かに気付いた。

「……ポラリスさん?」

「いや、多分……タイガも気付くはずだ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ゆっくりと目を開けると、ゼウスが降りてきた。

なんだ今のスキルは……?

『黒き悪魔たち』の時にも発動していたはずだが、これほど激しくなかったはず。

『鋼の心』のチャレンジは、その時移動中だったために何も見ていない。

俺の周りには、他のプレイヤーは誰もいない。

どうやらツバキも、リエータも、ディアナも消し飛んでしまったようだ。

では俺は……冥府神の加護か。そう思い、武器を構えなおす。

「……?」

……いや、違う。

俺からダメージエフェクトが出ている。

つまりダメージは……受けている。

だとするなら……

「……」

だがこのまま食らい続けるわけにもいかない。

俺はブーメランを投げ、ゼウスの顔に攻撃しようとした瞬間……

「がっ……!」

尻尾による1撃を受ける。

……やられた。

今度こそ、やられて……

……ない?

HPを見ると、先ほどのダメージは50程度。

そこへ……

「タイガ君!」「タイちゃん!」「タイガさん!」

3人が戻ってくる。

「大丈夫かみんな!」

「大丈夫!めちゃくちゃ痛かったけど!」

と、そこで疑問。

「……タイガさん、どうして無事だったんです……?」

「いやいや、冥府神の加護っしょ、安定の」

「いえ、冥府神の加護が発動した割にはダメージを受けてますし……」

「それはデストレイル使ったからっしょ?ゼウスの攻撃全部即死級の攻撃力って、

 運営がTKB出してたし、発動してないのに耐えられるわけないもん」

その言葉に……

「!?」

俺ははっとした。

「……そういう……ことだったのか」

「へ?どゆこと?」

俺はブーメランを構えると、

「オラ!」

「きゃあ!」「ちょっ」「いだっ!」

3人に向かって投げつけた。

「オオオオオォォォ!!」

その直後に、ゼウスが光のブレスを吐き出してきた。

「!?」

目の前が白く染まっていく。目が焼かれ、視力が徐々に消えていく。

……そして元に戻ると……

「やっぱり……か……!」

「……あ、あれ?」

弱点である俺は瀕死になるダメージを受けるが……

ツバキ、リエータ、ディアナの3人はそれほどダメージを受けていない。

「ど、どういうこと?」

体中をキョロキョロ見渡すリエータだが、ダメージエフェクトが少し出る程度で、

ほとんど傷付いていない。

「……ピンと来たんだよ。ディアナの言葉で」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一方その頃、噴水広場。

「な!?味方傷付けおったであいつ!?ヤケ起こしたんか!?

 ……ほら言わんこっちゃないやんけ!終わったな!

 ……えぇ~!?なんで生きとんの!?意味わからへん!」

「坊ちゃま、座ってください。耳障りの目障りの耳障りです」

「に、2回言わんでええわい!謝るけど!」

大騒ぎの『黒き悪魔たち』と、

「……」

その様子を静かに見る『鋼の心』。

「すげぇな……気付いたのかよ、タイガ」

「あっぱれでござるな。この状況判断力。だが、援護班が気付けなければ、結果回復は」

「気付いてるよ」

サザンの言葉に、振り返るヴァルガとホムラ。

「きっとこの状況に気付いてる。ポラリスならね」

「ほう……確かにポラリス殿は聡明そうな見た目をされておるが、

 サザン殿、何故そう思われるのでござるか?」

「なんとなく?」

その3人の会話もどこ吹く風なアキラ。

「なんにせよ、あのギルドにとってのこのイベントは、もう終わったも同然だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


残り10分になり、再びあの技を放つゼウス。

俺たちはHPを全快ギリギリで留め……

その技を肉体ひとつで受けた。


黒い星が落ちると同時に、大きな砂塵が発生する。

花が開くかのように、闇のエネルギーが開く。


……だが、俺たちのHPは残り4分の1程度でとどまった。

「ぐうぅ……やられないけど、痛いことに変わりはないなぁ」

「でも、タイガさんの言う通りでしたね……」

立ち上がるリエータとツバキ。直後に援護班から、エクスポーションが運ばれてくる。

それにより回復をした後……

「せいっ!」

今度はディアナが攻撃し、俺たちのHPを減らす。

ディアナのHPは、俺がブーメランを投げて減らす。

「ギ……!?」

「悪いなゼウス。もうお前の攻撃は効かねぇよ!」

そして俺たちは、ゼウスに向かって一斉に走り出した。


「デストロイヤー!?」

「あぁ、間違いない。あいつはデストロイヤーっぽいスキルで低い火力を補ってるんだ」

俺がそう言っても、3人は信じていない様子だった。

「{黒き悪魔たち}のエミリーがやられなかったこと、

 それで、デストレイルを使った俺{だけが}あのスキルを生き延びたこと。

 そして運営が{攻撃が全部即死級のダメージ}と言っていたことでな」

攻撃が全部即死級。

そう聞けばプレイヤーはすべて、回避を試みるだろう。

それこそがゼウスの……このイベントの罠だった。

だからこそ、HPを減らしながら戦うという考えには至らないプレイヤーも多い。

故に、ゼウスのデストロイヤーの効果によって、即死するプレイヤーも多い。

逆に言えば、デストロイヤーさえ何とか出来れば、ただの大きなモンスターとなる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そしてそれは、ポラリスもわかっていた。

「つ、つまり、わざと回復させずに攻撃を?」

「あぁ、それで間違いないはずだ。さっきの隕石を落とす攻撃の時だけ、

 エクスポーションを支給するようにしてくれるかな?」

「わかりました……やってみます!」

ぐっとファイティングポーズをとるエル。

「アレン。キミは引き続いて大砲とアンカーをお願い。

 もうスキルを中断させる意味もあまりないから、どのタイミングで撃っても構わないよ」

「了解!」

飛行船内はあわただしくなってきた。


(まったく、本当に頼りになりますね。タイガさん)



アキラが思っていた通り、その後『虹色の万華鏡』は一度もやられなかった。

最終的に無敵剤を散布し、一息に攻めることでスコアをさらに稼ぐことができた。

そして空に向かって飛んでいくゼウス。

『鋼の心』には及ばなかったものの、それでも2位は揺るがないだろう。

「……」

その様子を、じっと見据えるアキラ。


(『虹色の万華鏡』……これは強力なライバルとなるだろうな)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……やった……の?」

「あぁ……みたいだな……」

その場に座り込む俺。

「やった~!」

「タイガさぁん!」

「タイちゃん!」

3人とも、俺に向かって飛び込んでくる。

「お、おい!お前ら……!」

特にリエータとツバキに至っては、涙を流していた。

「よかった!今回のイベントでも、お……タイガ君を助けられて……よかった……!」

「これがイベントを勝ち抜くって……嬉しさなんですね……!

 ありがとうございます……!タイガさん……!」

……でも、それが俺にはたまらなく嬉しかった。

「……」

……接岸した飛行船から、ポラリスたちが降りてくるまでは。

「……あ、いや、ポラリス、これは……」

少しだけ考えるそぶりを見せた後……

「……飛行船に戻るね」

「空気読まんでいい!」




――その後すべてのギルドの挑戦が終わり、表彰式へ。

「見事今回も1位を達成された、ギルド{鋼の心}の面々でぇす。

 皆様ぁ、盛大な拍手をお願いしまぁす」

拍手とともに、素材が手渡される。

「2位は前回5位のタイガさんのギルド{虹色の万華鏡}でぇす。

 こちらにも盛大な拍手をお願いしまぁす」

俺たちに拍手が向けられる。

「おめっとさん!」「祝着至極です」

「おめでとうございます」「おめでとうございます!」

3位の『黒き悪魔たち』も俺たちに拍手を……と?

「……え!?先生!?」

「!?」

クロウが声を上げると、ディアナは少し飛んだ。

先生……?ディアナが!?

「まぁた締め切りを無視してこんなゲームに参加して!

 このままだと次のイベントに用意するの間に合いませんよ!

 今日から3日連続で徹夜するくらいじゃないと!」

「あっ……あっの……」

するとディアナ。

「あ。チュパカブラ」

「「え?どこどこ!?」」

目を輝かせるクロウとリエータ。なんでお前まで反応すんだよ!

「って、騙されませんよ先生~~~!待ちなさ~い!」

「ぬあああああああああああ!!」

そのまま表彰式の会場を、二人とも出て行ってしまった。

「……なんだったんだろ、あれ」

「さぁ……」




無事に表彰式も終わり、俺たちはギルドホームに戻ってきた。


神竜の逆鱗

【伝説の天神竜に挑み、生き残った証。

 持っているだけで、ギルドメンバー全員のHPが50上がる】


神竜の破天角

【伝説の天神竜に挑み、かつ多大なる傷を負わせた証。

 持っているだけで、ギルドメンバー全員の全ステータスが10上がる】


「おぉ~……」

追加効果を見て、リエータは思わず声を上げた。

「ステータス10アップはすごいですね」

「あぁ、頑張った甲斐があったってもんだ」

そしてギルドホームを見ると、やっぱりディアナがいない。

「ディアナさん……」

「本当は全員で喜びを分かち合いたかったがな……まぁいいか。

 今度ディアナが揃ったら、改めてジュースで乾杯しよう」

「わ、わたし……牛乳がいいです……」

ピロリン!

何か通知が来た。


~大規模アップデート実施のお知らせ~

【8月5日午前0時より、アップデートを開始します。

 新エリアの拡張、一部スキルの見直し、新スキル、新素材の実装など、

 今回のアップデートは前回のアップデートより、お時間をいただく場合があります。

 終了時間は8月7日午前8時を予定しております。

 なお、アップデート内容は終了前に公式サイトで告知いたします。

 今後とも『ワールドオーダーオンライン』をよろしくお願いいたします。


 ワールドオーダーオンライン 管理局スタッフ一同】


「つまり、丸2日はログインできないんですね」

ツバキの言うとおりだ。

初めてからここまで長くログインできない時はなかった。

「ちょうどいいや、溜まってた宿題、済ませておくか」

顔を真っ青にするリエータ。

「どうしたの?リエータ」

「宿題……まったく、やってない……」

ギルドホーム中が、どっと笑いに包まれた。

「というか、リエータさん学生さんだったんですね。僕と同じです」

「げ、現実世界でお会いできたら、お勉強を教わりたいです……」

「無理無理!あたしお兄ちゃんじゃないんだから、人に宿題なんて教えられないよ~!」

これはまた、俺に助け舟を求めてくるパターンだな……

俺は翌日からの修羅場に備えることにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「無事第三回イベントも終わったようだねッ!」

一方こちらは管理者室。

「今回も優勝は{鋼の心}でしたね。やはりトッププレイヤーの集まりは違います!」

「実際バランス、やばぁいですからねぇ。それより気になるのはぁ」

「{虹色の万華鏡}か?」

ルビーがこくりとうなずく。

「特にタイガさん。今回のイベントの罠に気付くとは……さすがというほかありませぇん。

 あの頭の良さ。今後も注目すべきではぁ?」

「{黒き悪魔たち}に気付かれかけた時も、正直{やっべ}と思ったけどな」

「うむッ。とりあえず今から地獄のアプデ作業だねッ!」

4人同時に溜息。

「まぁた眠気をモンスタードリンクで無理矢理覚ます日々かよ……

 オレもぶっ倒れる可能性が微レ存だから、お前ら頼むな!」

「何の宣言なんですか!パールさんも頑張ってもらわないと困ります!」

「あぁ~、ここんとこ肩凝ってるから、久々に息子と温泉旅行でもと思ったのになぁ」

「でも、プレイヤーの皆様の笑顔が僕たちの活力でぇす。がんばりましょう~」

4人は力なく、腕や前足を上げた。

全員仲良くトッププレイヤーの仲間入りを果たした『虹色の万華鏡』

アップデート後の活躍は?

その前に、少しだけ別の話が入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ