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一見無理ゲーな難易度でも、ちゃんと対策は出来る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


タイガたちがゼウスと交戦を開始するとほとんど同時に、

『鋼の心』が戻ってきた。

戻ってくると同時に、会場が割れんばかりの拍手に包まれる。

『黒き悪魔たち』は生存を第一に考えていたため、スコアはあまり高くはない。

しかし『鋼の心』はスコアも高く、挑戦中は誰もキルされなかったことから、

今回のイベント1位も揺るがないだろう。

「あっはは~!もっと盛り上がっても構わないんだよ~?」

「あんま図に乗んなよ?サザン。まだ残ってんだからよ」

「しかし、なかなか歯ごたえのあるイベントでござったな」

待機する位置に立つ一行。隣に『黒き悪魔たち』の面々もいた。

「相変わらず隙も何もあったもんちゃいますなぁ。アキラさん」

カインが語り掛ける。

「単なる、ゼウス対策を徹底した結果だよ。それが功を奏しただけだ」

「それにしてもビックリしましたなぁ。まさかゼウスがレベル1やなんて。

 ワシとクロウせっかく装備してた立ち向かう心無意味でしたわ」

「レベルを明かさない時点でレベルに何かの細工をしているんだろう。

 とは思っていたがな」

モニターを見ると、『虹色の万華鏡』が戦闘を開始している。

「……戦闘に参加しているのは……タイガ、リエータ、ツバキ、ディアナ。

 なるほど。攻撃力に重きを置いた感じになっているな」

「でもなんか脆そうでっせ?」

「確かにもろいな。だが……」


「お?おぉぉぉ!?」

すでに15分が経過。

モニターに釘付けになる上位の面々。

「坊ちゃま、{やかましいんじゃコラー}とそろそろ言われます」

「わ、ワシやあるまいし、言われへん言うねん!」

「自覚あるんですね……」

そのモニターを静かに眺めるアキラ。

「……」


「だって……」

第二回イベントで、最後にリエータと一騎討ちをした時だ。

「タイガ君は……あたしのお兄ちゃんだから」

「何?」

その言葉を最初は理解できなかったが……

すぐに、理解に至った。

「それは、現実の……という事か」

こくりとうなずくリエータ。

「頭がよくて、かっこいいお兄ちゃん。だから、放っては置けなかったんだ。

 お兄ちゃんは頭の良さしか取り柄がないって言ってるけど……

 あたしはお兄ちゃんに、ものすごく助けられたからさ」

「……なるほど」


「まったくもってその通りだな、リエータ」

「お?リエータがどうかしたんですかい?」

カインが言うが、アキラは聞こえないふりをした。


――お兄ちゃんは頭の良さしか取り柄がないって言ってたけど……


「しかし、その取り柄は、このゲームでは最大の武器になるだろうね」

「タイガの事か?」

ヴァルガが言うと、アキラは何も言わずうなずいた。

「もし対抗戦があるなら、今度は全力で手合わせしたいものだね」

「たく、戦闘狂め」




……一方時は少し遡って、援護班の3人。

「ここは……飛行船の中かな」

「す、すごい……雲の中を飛んでます……!」

窓の外を、エルが覗き込む。

「相当な高さを飛んでいるようですね……」

と、そこへ。

「援護班の皆様ぁ、本日はイベント参加、ありがとうございまぁす」

ルビーがやはりやる気なさそうに話しかける。

「援護班の皆様は、ゼウスに対している攻撃班に援護をしていただきまぁす。

 この飛行船、皆様の拠点には、様々なアイテムがありまぁす。

 皆様はそれを利用し、攻撃班を援護していただきまぁす。

 この後、3分間練習やアイテムの確認の時間がありますので、

 そちらをご参考にしていただければ幸いでぇす。

 攻撃班がスムーズに、そしてスマートに攻撃できるかは、皆様にかかっていまぁす。

 攻撃班のみなさんのパラメーターは、端末で確認可能でぇす。

 また、攻撃班の様子も、端末で確認可能でぇす。

 ただぁし、皆様が攻撃班側に{直接}連絡をすることはできませぇん。

 すなわち、攻撃班側のSPを確認するのもお仕事ですねぇ。

 攻撃班の誰かがやられるたびにゼウスの高揚度が高まっていき、

 高揚度が最高潮になるとぉ、皆さまの拠点……すなわちこの飛行船が破壊され……

 ゲームオーバーになってしまいまぁす。

 その場合スコアは本来得られるはずだった半分のスコアまで落ち込んでしまいまぁす。

 それではぁ、まもなく接岸しまぁす。幸運を、祈りまぁすよ」

ルビーの声は聞こえなくなった。

「うぅ……足を引っ張らないように頑張らないと……」

「大丈夫だ。ボクもキミを援護する。もちろん、アレンもね」

「わかりました。ポラリスさん。あなたを信じます」

ぐっと自らの手のひらを握る、エルとアレン。

「……」

ポラリスは、その二人を見た後、もう一度窓の外を見た。

「さて、ボクもがんばらなくっちゃね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


神の領域の塔の周囲を取り囲むように、ゼウスは鎮座する。

その風貌たるや、まさに『王』というにふさわしい威風と、

逆らってはいけないような、そんな威圧感すら感じる。

戦いが、始まる。

その高揚感と緊張感を、その場が支配した。

「オオオオオォォォ!!」

いきなりゼウスが高らかに咆哮する。

同時に頭上から巨大な星が落ちてくる。テインクルスターだ。

狙いはツバキのようだが……

「ふっ!」

ツバキは猛スピードでゼウスに駆け寄る。

さらにゼウスの腕がシャドウレーザー。

「!?はぁっ!」

そのまま高くジャンプする。

「リエータ、ツバキを頼む!」

「了解!」

「ディアナ、お前は俺と一緒に、頭を攻撃してくれ!」

「おけまるっ!」

二組にそれぞれ散開する。

再度シャドウレーザーを撃ってくるのをツバキは身をよじらせながら回避。

「{旋風拳}!」

右の拳がゼウスの胴体を殴り抉る。

「{ドラゴリベリオン}!」

さらにリエータの槍が胴体に深く突き刺さり、直後に大爆発を起こす。

爆風によりツバキが上側に吹き飛ぶ。

……いや、ツバキは吹き飛んだのではなく、舞い上がった。

「{ストンピング}!」

そのまま足から胴体に着地。ダメージエフェクトが大量に噴出する。

「くっ……!」

しかしゼウスが身を揺らすと同時に、ツバキは吹っ飛ばされた。

「ツバキちゃん!」

「大っ丈夫です!」

受け身を取り、再度駆け出す。

「タイちゃん!時間稼いで!」

「わかった!{ダークネスビット}!」

集中し、大剣を構えなおすディアナに、俺は目配せした後、

ダークネスビットを展開し……

「{ファントムソード}!」

早速覚えたファントムソードを使い、ゼウスに向かって走りだす。

「{パワースラッシュ}!」

そのままパワースラッシュでゼウスを切り裂く。

直後にファントムソードによってにじみ出た闇が、ゼウスを覆う。

やはり光得意な部分に大きなダメージを与えられる。

「ゴオオオォォォ!」

しかしゼウスは、俺に向かって大きな口を開けてきた。

「!?」

まずい、避けられない……と、思った時、

「くっ……!」

「!?」

何かが俺に飛びついてきた。

深緑色の閃光。

オーバードライブを発動していたツバキだ。

間一髪でゼウスの大口から逃れる。

「あ、ありがとう、ツバキ……」

「……だ、大丈夫です!」

「……?」

『大丈夫ですか?』と、聞くべきではないだろうか?

それに何故かツバキは頬を赤らめている……

い、いや、多分戦闘での緊張から言い間違えたんだろう。

……そうに違いない。

直後に青い霧が、あたりに降り注いだ。

鎮静剤だ。これによりゼウスはしばらくの間高揚度が上がり辛くなる。

それに合わせるように……

「お待たせ!ブチアゲで行くよ~!」

ディアナの大剣に、雷がほとばしり……

「{破剣・サクイカズチ}!」

そのままゼウスの白い肌に、青い雷光を纏って沈み込む。

「景気付けに一発!……って、思ったけど」

しかしゼウスは怯まない。

「スコアは増えてるんだ。一応効いてるのは効いてるだろう」

「そういう事なら、話は早いね!{プロミネンス}!」

炎が黒い体に吸い込まれていく。直後にゼウスは、

「オオオオオォォォ!!」

大きく咆哮し、頭を持ち上げると、

そのまま地面に向かって頭を突っ込む。

すると床全体が、真っ白に輝きだす。

「この技って……!?」

その時、頭上から何かが飛んできた。

……大砲の弾だ。それは正確にゼウスの頭に命中する。

しかし、ゼウスは怯まない。

「なっ!?」

「げきやばたん!{パワーシー……」

そしてゼウスが口から光のブレスを放出すると……


チュド~~~~~~~ン!!


地面が大爆発を起こした。

まるで風に舞う木の葉のように、俺たちは軽々と宙を舞ってしまう。

ディアナのパワーシールドは間に合わず、発動できなかった。

そして俺とツバキが……消滅した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「そ、そんな!?ちゃんと攻撃を防ぐように撃ったのに!?」

援護班にはその光景が、衝撃的に映った。

「多分、大砲やアンカーでは防げない攻撃だね。鎮静剤を散布しててよかった」

「とにかくアイテムキャリーを使いましょう。

 あのお二人がやられるとまずいので、HP回復でいいですよね」

「そうだね。さすがにSPを回復させてる暇はなさそうだ。エーテルは次に渡そう」

飛行船内が、にわかにあわただしくなってきた。




「ぐっ……ぐうう……!」

槍を支えにして何とか立つリエータ。

「えっぐ……何今のスキル……」

ディアナとリエータは、不屈の闘志のおかげで踏みとどまっている。

その二人を埃を払うかのように尻尾を振ってくるゼウス。

「!?」

「{パワーシールド}!」

リエータのそばでパワーシールドを発動し、何とか尻尾の攻撃をしのぐ。

「ありがとうディアナちゃん!」

「うぐぐ~……でも、ちゃけばやばいよこれ……!」

そして……

「うわあ!」

あまりもの衝撃に、ディアナは吹っ飛んだ。

「ディアナちゃん!」

「へ、平気……」

直後にオールポーションが、フィールドに落ちてきて、容器が割れる。

これによりディアナとリエータはHPを回復するが……

「不屈の闘志……使っちゃったか……」

「こっからはマジマジのマジで行かないとまずそうだね」

二人はゼウスの頭に向かって、武器を構えなおした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「タイガさん、タイガさん!」

「ん……あっ!?」

目を覚ますと、そこは頂上へと通じる階段の入り口だった。

「つ、ツバキか。悪い、やられちまった……」

「仕方ないです。まずは急いで戻りましょう。リエータさんとディアナさんが心配です」

「そうだな」

しかしあの攻撃……どうやって回避すればいいんだ?

タイミングよくアンカーや大砲?……出来るのか?

別の攻撃で使ってしまっては、それこそ無駄遣いだ。

無敵剤?それも一回しか使えない。

「そういえば、タイガさん」

階段を駆け上がりながら、ツバキが話しかけてくる。

「どうした?」

「その、やられながらだから、私の見間違いかも知れないんですけど……」


「さっきの攻撃の時、ゼウスの体の上に光が出ていなかった気がしたんです」


「!?」

その言葉だけで、対策としては十分だ。

「タイガさん……?」

「あぁ、ツバキ。値千金だ!」

「えっ……?」

そのまま俺たちは、階段を上っていく……

上っていく……

上っ……て……

「ぜぇっ……ぜぇっ……ぜぇっ……」

「た、タイガさん!」

すでに息切れ状態。


これはいろんな意味で、俺もやられられないな……そう思った。

すでにいろんな意味で追い込まれた虹色の万華鏡。

第三回イベントは残り2~3回程度になると思います。

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