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色んなことが発覚した、そんなイベント前の出来事。

クロウの職業を修正しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おう、やっと戻って来おったか。遅かったのう」

戻ってきたクロウとエミリーに、カインが言う。

「坊ちゃま、口も顔も悪いですよ」

「な……顔は余計やろがい!」

それを見てくすくすと笑うエミリー。

「何がおかしいねんお前!」

「ごめんなさい、仲がいい人を見ると笑顔が出ちゃうんです」

「まったく……」

と言いつつ、カインはまんざらでもない様子。

「しかし先生はどこに行ったのやら……もう、締め切りも近いというのに……」

「締め切りってなんや?それは今回のイベントより大事な奴なんか?」

「大事ですよ!!」

急に語気を荒らげる。

その声を聞き、一行は目を真ん丸にした。

「……クロウ様、お言葉ですが、あまり騒ぎすぎないよう。

 坊ちゃまほどではありませんが、他のお方の耳に障りますよ」

「す、すいません」

「……なんかさりげな~く毒吐かれた気がするけど気のせいか?」

そんな中、タイガたちの方向を見るエミリー。

「気になるんか?タイガ……てか{もつ煮込み}が」

「今は{虹色の万華鏡}ですけどね。それよりリエータが気になって」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「抽選して来ました。僕たちは43番。

 1度に挑戦するギルドが5組。

 とはいえだいぶんあとになりますね。{鋼の心}の次の組です」

「よりにもよって{鋼の心}の次か……こりゃ情けない姿は見せられないぞ」

すでに第一波はゼウスに挑み始めている。

その様子がモニターに……

「……!?」

映っていて、俺は言葉を飲んだ。


白い頭に、黒い胴体、尻尾を持った、日本の伝承で伝わる竜のような、

そんな見た目をしたゼウス。

戦闘班3人で挑んだギルドは、ゼウスの攻撃で一息に蹴散らされる。

特に口から吐き出される金色の光のブレス。

これは何としても避けないとまずそうだ。

また援護班の援護がうまくいかず、回復が間に合わなかったギルドも。

大砲やアンカーで足止めするのはいいが、タイミングが悪く、

戦闘班が攻撃を受けてから大砲を発射し、まったく意味がなくなってしまうギルドや、

無敵剤を散布するが、時間的に早すぎたギルドも。

10人がかりで挑んだギルドは……

ゼウスの腕から放たれるシャドウレーザーで5人が一息に消し飛び、

最後はゼウスの頭が放出したテインクルスターで蹂躙。

あっという間にゲームオーバーに。

第一波は、ものの10分ともたなかった。


「……」

懸念はしていたが、やはりすさまじい難易度のようだ。

第二波。

こちらも……まるで同じだ。

ゼウスの攻撃はどれもすさまじく、回避しなければまるで意味がない。

「やはり、恐ろしいほどの攻撃力を持ってるね……」

ポラリスがボソッと漏らす。

「……だな」

「タイガ君。大丈夫。あたしは何とかして生き残るから」

「ウチも不屈の闘志持ってるから、大丈夫!」

「私も素早さをこのために上げたんで、絶対に生き延びてみせます!」

女性3人が俺の空気を読み、ガッツポーズを取りながら話す。


……あれ?遠回しに『俺が死ぬだろうな』って思われてないかこれ?


そうしているうちに第三波が始まった。

その中に、『黒き悪魔たち』もいた。

「お、頑張ってんね」

その様子をずっとモニターで見る。

戦闘班はカイン、クロウ、エミリーの3人だ。

おそらくあれほどやられている姿を見て、必要最低限でいいと思ったのだろう。

「……」

ディアナはその光景を見ようとしない。

「お前、どうかしたのかよ」

「無理無理、怖い怖い」

「……?」

何にそんな怖がっているんだろうか?

まぁ、今は聞く必要もない。

それにしても……さすが、なかなかバランスがいいメンツだ。

エミリーがサンライトキュアやパワーシールドで援護し、

カイン、クロウが攻撃に徹している。

しかしエミリーがゼウスの尻尾を薙ぎ払う攻撃を受けてしまった。

「あっ!?」

リエータが思わず声を上げる。

……だが……

「!?」

何故か普通に立ち上がるエミリー。

「ど、どうなってんだあいつ……?」

「おそらく、体力に極振りしてるんじゃないかなって思う。

 もしくは彼女の職業のスキルか」

「後で聞いてみよっかな?」

カイン、クロウもなかなかに強い。

カインは一度戦ったので言わずもがなだが、

クロウは闇属性で長剣と弓を巧みに使い分けている。長剣と弓……闇の狩人だ。

大砲やアンカーの使い方も巧みだ。

おそらく援護班の指揮はシルビアが取っているんだろう。

やはり援護班は、正しく指示が出せるプレイヤーが必須のようだ。

そしてついに……

『黒き悪魔たち』が映っているモニターが、一瞥するように吼えた後、

空へと飛んでいくゼウスを映し出した。

……あの3人は、無事に生き残ったようだ。

割れんばかりの歓声に包まれる。

当然、俺たちも拍手する。

元の場所に戻ってくる『黒き悪魔たち』の面々。

「ただいま~!ワシら英雄の帰還やでぇ!」

「坊ちゃま、顔も口もやかましいでございます」

「だから顔は余計や言うねん!」

プレイヤーが『黒き悪魔たち』に集まる。

もちろん、初の生還者に色々聞くためだ。

「……」

まぁ、カインたちのことだ。

どうせ質問には答えないだろう。

こう言うのは何も知らない状態で攻略するからこそ、意味があるのだから。


しかしその後のイベント状況は死屍累々という言葉が似合うものだった。

まるで石ころを蹴飛ばすかの如く、簡単にプレイヤーがやられ続ける。

結果的にクリアしたのは30組が終わり、『黒き悪魔たち』のみ。

「タイガ」

「あぁ、戦闘班の攻撃もそうだが、援護班の動きが特に重要だ。

 特に大砲とアンカー、この二つは確実に決めないとまずそうだな」

「これはボクと……エルとアレンの責任は重大そう……だね……」

その背後を『鋼の心』が通った。

「……!!」

その瞬間、ポラリスに冷や汗が伝った。

「ん、タイガか」

「よう、アキラさん。ヴァルガさんに、ホムラさんも……

 って、お前……」

もう1人見覚えのある人物が、

「おんやぁ?あの時のメガネボーイ!それと、魔女っ娘ちゃんとアーマーボーイも!」

燕尾服を着た女……サザンだ。

「魔女っ娘……?」

「いや、確認しなくてもエルの方だと思うんだけど。

 ところで、アーマーボーイ……?」

アレンもキョロキョロ。これはひょっとしてギャグなんだろうか。

「タイガ君……この人と知り合い?」

「あぁ。前、海岸地帯の洞窟に行った時サザンってプレイヤーに会ったって言ったろ?

 それがこいつなんだ」

「イーエーーーイ!無事覚えてくれてたんだね~!お姉さん嬉しい!」

大ジャンプして喜びを表すサザン。

相変わらず高いテンションだ……

「……」

引いているツバキ。……正直俺も、こいつはあまり得意ではない。

「えっと、サザっちゃんだっけ?ちょっと聞きたいんだけどさ」

「ん?何?上から72、56」

「違うって!サザっちゃん、ポラっちゃんの何?」

見ると、ポラリスは……

「……お、おい!?」

その場に座り込み、ガタガタと震えている……

「え~?なんでアタシが悪いことになるのさ~?

 イベント前だし緊張してんでしょ?きっと」

緊張?いや、ポラリスが緊張するか……?

「悪いが、ポラリスに限って、それはあり得ない。

 こいつはどんな状況でも緊張はしなかった。

 それがお前とすれ違っただけでこうだぞ。何かあるんだろう?こいつと」

「ないないない!万にひとつも覚えはありま~せんっ!」

X字に両腕。

「何をしているんだ?サザン。早く行くぞ」

「おぉっと~!ごめんアキラ!いーまーいーくー……ゾイ!」

4人は噴水の方面へ歩き去っていった。

「……」

まだ震えるポラリス。

「ポラリス……どうしたんだよ」

「……!?」

キョロキョロと左右を見た後……

「ん?……なんでも、ないよ」

いや、あるだろう……


「それでは次は第九波、えぇっとぉ……

 『流浪の民』『ゴールドマイン』『虹色の万華鏡』『ここから始まる』『影狼』

 この五組のギルドは、噴水前にお集まりくださぁい」

このやる気のない声……ルビーだ。

「……」

ポラリスとディアナの事が気になるが……

「ごめん、タイガ……いや、みんな……

 このイベントが終わったら、話せれば、話すと思う。

 だから今は、このイベントに集中させてほしいんだ」

「ぽ、ポラっちゃんがやるなら……ウチもしゃべらないとね。

 言うから、マジで、ガチめに」

何だかフラグっぽい言い方だが、ポラリスとディアナの言う通りだ。

今は目の前のイベントに集中しよう。


噴水前にやってくると……

「どうも皆さまぁ。今回のイベントの進行役の、ルビーでございまぁす。

 これより皆様をぉ、決戦の地である{神の領域}へ向かわせまぁす。

 援護班の方は青い魔法陣に、攻撃班の方は赤い魔法陣にお乗りくださぁい」

「……よし、行くぞみんな!」

俺が腕を高々と掲げると、

「「「「「「お~!」」」」」」」

メンバー全員が、大声で気炎を上げた。




目を開けると、そこは船のような乗り物の甲板だった。

周りを見ると、ツバキ、リエータ、ディアナがいる。

雲を切り裂きながら、飛行船が飛んでいる。

かなり高いところを飛んでいるが、息苦しさは感じない。

「みんな、大丈夫か?」

「うん!全然大丈夫!」

「同じく、大丈夫です!」

しかし、ディアナがいない。

「で、ディアナ……?」

甲板の後方へ行くと……

「ぎぃもぉぢぃわぁるぅい……」

「ディアナちゃん!?」

VRMMOなのに船酔いするか……?

「と、とりあえず救急車呼びましょうか?」

「なんで船酔いに救急車なんだよ」

と、そこへ……

「攻撃班の皆様ぁ、本日はイベント参加、ありがとうございまぁす」

ルビーがやる気なさそうにこちらに話しかける。

「攻撃班の皆様は、ゼウスに対し、ひたすら攻撃をしていただきまぁす。

 ゼウスの攻撃をかいくぐりながら攻撃を行い……

 ゼウスにダメージを与えれば与えるほど、スコアが伸びまぁす。

 皆様の攻撃がそのままスコアになるわけですからぁ、大事な役回りですねぇ。

 他の戦闘と違い、ゼウスの攻撃でやられても1階層下の位置からやり直せまぁす。

 ただぁし、誰かがやられるたびにゼウスの高揚度が高まっていき、

 高揚度が最高潮になるとぉ、皆さまの拠点……すなわちこの飛行船が破壊され……

 ゲームオーバーになってしまいまぁす。

 その場合スコアは本来得られるはずだった半分のスコアまで落ち込んでしまいまぁす。

 それではぁ、まもなく接岸しまぁす。幸運を、祈りまぁすよ」

ルビーは、消えていった。

「……」

胸に手を当て、息を整えるツバキ。

ツバキとしては、初めて『まともに』挑むイベントだ。

緊張しているのだろう。

「……大丈夫か?」

俺はそっと、そんなツバキの手を握る。

「!?」

ツバキは顔を真っ赤にして……

「や、やめっ……!」

パッと、俺の手を振りほどいてしまった。

「わ、悪い……!さすがに馴れ馴れしくしすぎだよな」

「……い、い、いえ……!」

ドクンドクンと、互いの心臓が高鳴る。

「ほ、本当に……悪い」

深々と頭を下げる。

「……」

しかしツバキは、俺の方を見なかった。

本当に悪いことをしてしまった……俺は深く後悔した。

そうしていた俺を見たリエータに……


(ほら……そう言うとこだよお兄ちゃん……)


と、思われていたのを俺は知らない。




神の領域に降り立った俺たち。

そこは塔の屋上のような場所だった。

声が聞こえる。

「これより3分は援護班の皆様の練習の時間となりまぁす。

 攻撃班の皆様は、今のうちにスキルの確認をお願いしまぁす」

と言っても、俺たちはスキルを今更変える必要もない。

とりあえず戦闘が始まるまで、無駄な体力は使わないようにしないと。

「聞こえるかい?タイガ」

通信が入る。

「……ポラリスか。そっちは大丈夫か?」

「うん。もう仕掛けを使える場所も覚えたから、こっちは大丈夫だよ。

 戦闘が入ると通信が使えなくなるらしいから、その連絡だけしておくね」

「わかった。お前に任せる。エルとアレンも、頼むぞ!」

「「はい!」」

二人の声を最後に、通信は途切れた。


3分後、空がどんよりと暗くなりだした。

「……そろそろ、だな」

「始まる前から病み状態なんですけど……」

ようやく船酔いの気持ち悪さから解放された様子のディアナ。

「……」

静かに目を閉じ、何度も呪文のように『大丈夫』とつぶやくツバキ。

そして黙って槍を構え、待つリエータ。


バリバリバリバリ!


空に裂け目ができ、そこから……

まさに神と呼ぶにふさわしい神々しさと威圧感。

そして、まがまがしさを持った竜が現れた。

「オオオオオォォォ!!」

そして、その姿を見た瞬間……

「「「「え?」」」」


【ゼウス レベル1】

次回、ゼウス戦。

レベル1のゼウス、その力とは……?

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