最近のRPGは急にヌルゲーになる。そして急に鬼畜要素も出る。
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【WOO】なんか変な長剣使いがいたんだけど【初心者さん?】
72 名も無きアーチャー
これまで話に出てた長剣使いとフレ登録した
名前はタイガ
最近このWOOに参戦したらしい
73 名無しの冒険者
マジぇ!?雨宮大河と同じ名前やんけ
74 名無しの冒険者
あのプロゲーマーの!?
75 名も無きアーチャー
同じ名前なだけあって別人なはず
大河さんはワールドオーダー全部プレイするほど好きって言ってたし
魔法の使い方とかわからないってプロゲーマーとしてありえないでしょ
とりあえず今皮の盾と鎧作り手伝うことにしたんだけど
ウェアウルフってどこに出たっけ
76 大剣大好きっ娘
ウェアウルフなら北の洞窟の近辺
ウチも北の洞窟に用事あるし、あとで落ち合う?
77 名も無きアーチャー
あ~、いいよ
あまり強い人たちで無双しすぎたら
初心者さんうまく育たないかもしれないし
78 名無しの冒険者
え?でもそいつツバキとフレンドなんだろ?
ツバキ呼べばそれで解決すんじゃね?
79 名も無きアーチャー
いや…ダークリゾルブの巣窟な北の洞窟なんだし
ツバキがその付近で初心者を手伝うとは思えないよ
とりあえずボクで何とかする
ところで弓も腕力依存の仕様という名のバグ修正まだかな
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【WOO】ダークリゾルブ被害者の会専用スレ【鬼畜ギルド】
318 名無しの冒険者
雪山でダークリゾルブの奴に一方的にボコられたわ…
せっかくブリジンバードのトサカ入手できたのに
ゲームオーバーでパーだ
運営はよ対策しろや…
319 名無しの冒険者
俺もパーティ全員ボコボコにやられたわ…
せっかく新しい杖作れるってパーティの人言ってたのに
320 名無しの冒険者
中でもツバキの実力相当だもんな
今日まだプレイヤー狩りは見つかってないけど
アーチャー氏がフレンドワープしてるとこ見たらしい
321 名無しの冒険者
あいつとフレンド?物好きな奴がいたもんだなぁ
322 名無しの冒険者
まぁとりあえずわかることは、ツバキとフレンドって言われてる
そいつも警戒対象か?
323 名無しの冒険者
いや、それは大丈夫と思う
そいつはアーチャー氏ともフレンドらしいし
アーチャー氏が負けることないだろそいつに
・・・
327 名も無きアーチャー
なんか呼ばれた気がした
まぁ、今のところボクに敵意向けてないし、ボクもこのまま行こうと思う
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「やぁ、待たせたね」
と、ポラリスの声が聞こえるが……
「{シャドウガン}!」
それ以上に、魔法を唱えられたことの喜びが勝った。
右手の二本の指に闇の力がほとばしり、本当に銃を撃ったかのように……
その指から煙が立ち上る。
「お、やるじゃんタイガ」
「ポラリスか。もう終わったのか?」
「うん」
……最初からスキル屋で練習すればよかった。
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「スキル屋?」
時は少し遡る。
「うん。多分タイガは魔法の使い方自体をまだわかってないと思う。
だから、この町にあるスキル屋って場所で、スキルの使い方を教えてもらうといいよ。
ボクはその間に、作ってほしい防具を作っておくしね」
そんな便利な店が……いや、今までのシリーズにもあったか。
「あと、差し出がましいんだけど、タイガ、フレンド登録していいかな?」
「別に構わねぇけど……なんで?」
「うん。ボク歩くの遅いからさ、フレンドワープで何とかならないかなって」
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そして、今に至る。
「それにしてもすごいですねタイガさん!魔法の使い方の呑み込みが早いです!」
と、スキル屋の女主人が話す。
「どもっす。今までのゲームじゃ、唱えて終わりだったんすけど……
VRMMOとなると、やっぱりやり辛さを感じますね。……{シャドウガン}!」
よし、大分慣れてきた。
これならもう、俺は足を引っ張ることはないはずだ。
「で?お前はどうだ?新しい装備作ったのか?」
「うん。一応ね。試し撃ちは多分もう少し後だけど」
背中に白い弓が装備されている。
ラビットキラー
【ウサギ殺しの名を持つ弓。素早さが10あがり、
相手より素早ければ素早いほど火力が上がる】
……ついでにスキルも買っておこう。
グラビティダウン 闇 消費SP:5
【手に触れている物の重力を、一時的に大幅にカットする。
レベルアップで効果時間延長。クールタイム:10秒】
グラビティアップ 闇 消費SP:5
【手に触れている物の重力を、一時的に大幅に増加させる。
レベルアップで効果時間延長。クールタイム:10秒】
反撃の構え
【武器を構えている際直接攻撃を受けると、一定の確率で自動的に反撃する。
反撃の構えで敵を5回倒すとレベル2、10回倒すとレベル3(MAX)になる。
レベル3で{大反撃の構え}を購入可能】
「反撃の構えはわかるけど、グラビティダウン、アップはどうして買ったの?」
「ま、見てればわかるさ。……ところでポラリス」
「わかってる。ウェアウルフなら北の洞窟の近くの高地だ。
敵は多分、多少は強くなるはず。皮の盾を作ってから行こう」
魔法を使えるようになってからというもの、戦闘は快適だ。
「{シャドウガン}!」
あれだけ苦労させられていたゴブリンも、指先から放つシャドウガンで蹂躙。
森の中にいるスパイダーも……
「{シャドウガン}!」
不意打ちさえ食らわなければ、シャドウガンで何とでもなる。
ちなみにポラリスには、なるべく手伝わないようにお願いしておいた。
代わりに……
Get!【トビウサギの耳】
Get!【刺激的毒袋】
Get!【ゴブリンの角】
レア素材を渡していく。
これほど世話になっているんだ。レア素材くらい安いものだ。
そうしてレベルが5まで上がり……
ピロリン!
シャドウガンのレベルが 2 に上がりました
シャドウガンの威力が上がりました
クールタイムが1秒減りました
「属性スキルのレベルの上がり方が思った以上に緩いな」
「まぁ、このあたりの敵が弱いって言うのもあるけどね。
とりあえず、トビウサギの皮は集まったんでしょ?」
「あぁ。皮の鎧の分も含めてな」
「じゃあ先に町に……て、しまった。フレンドワープ、あと1回しか使えないや」
困った顔を浮かべるポラリス。
「そんな時のための、俺だ」
「え?」
……町に戻ってきた。
「やれやれ」
「あ、あのさ……タイガ」
「なんだ?」
俺はポラリスを背負ったまま、ここまで歩いてきた。
「……恥ずかしい」
「そうか?これが一番だろ?
グラビティダウンでお前も定期的に軽くしてるから俺も疲れねぇし」
「ま、周りの人の目が……」
……確かに町に入るまで気付かなかったが、周りの目が若干痛い。
「べ、便利なのは……いいことだけどさ……」
ポラリスは耳まで真っ赤だ……
「わ、悪い……」
ディグの武具屋にやってきて、ようやく盾を入手できた。……のは、いいのだが……
「か、皮の盾って……結構重いんだな……」
「相も変わらずヒョロヒョロじゃなあお主は。
……ところで今日、ツバキちゃんを見なかったかの?」
「ツバキ?あぁ。なんか今日は急用ができたって言ってました」
「そうか、残念じゃなぁ。せっかく頼まれてた装備品、出来上がったのに」
ディグの手には、青い装具が握られていた。
「俺、届けましょうか?」
「おう、頼まれとくれい」
俺は青い装具を、ディグから受け取った。
「やめておいたほうがいいと思うんだけどな……」
「おい、どういうことだよそれ。フレンドにアイテム渡すだけだろ?」
「ま、それ自体は悪いことじゃないよ。でも、ツバキは……
そういや、まだタイガに説明していなかったね。……場所、変えようか」
ウェアウルフ目的のため、北の洞窟近辺の高地に向かいながら話す。
「ツバキ……彼女には兄がいるんだ。
その兄がまとめるギルドこそ、{ダークリゾルブ}。
プレイヤー、とりわけ初心者~中級者狩りを生業としてる。確か名前は……レックス」
「プレイヤー狩り……?んなことしていいのかよ」
「まぁ、ルールには違反してないね。……問題はそれ以外の彼らのやり方なんだ」
腕を組みながら続ける。
「なんでもレックスもツバキも、データの改造をしてるらしい」
「!?」
「前のイベント、モンスターをいかに多く倒せるかっていう……
いわゆる探索戦闘型イベントだったんだけど、1位はリエータ、138ポイント。
2位はレックス。129ポイント。そこからしばらく続いて……
9位にツバキだったんだ。確か101ポイント。
本当はツバキ、3位に入れるくらいにはポイントを稼いでたんだけど……
時間切れ間際にリエータに戦闘を挑んで、それで負けたんだよね」
「それでポイントを奪った、リエータって奴が優勝したと」
首を縦に振る。
「でも、前のイベント、ほとんどが炎得意か無属性の敵だらけだったんだ。
それなのに風得意、つまり炎属性が苦手なツバキが……
そもそもそれだけポイントが稼げるのか?ということが話題になってね。
それに{大剣大好きっ娘}が、炎を受けてピンピンしてるツバキを目撃したらしいし。
ちなみにレックスは闇属性で、それでなおさらピンピンしてたらしいよ」
……なんということだ。
俺に優しくしてくれたツバキは……改造プレイヤー?
「…………{大剣大好きっ娘}?」
いや、でも反射的に気になったのはこっち。
「あっ」
自分が口を滑らせたことに、気付くのに時間がかからなかったようだ。
「あ、ああ、なんでもない。なんでもないよ」
「……なら、いいけど」
響きは気になるが、踏み込んではいけない話題なのだろう。……きっと。
(危ない……カキコバレするところだった。
もしボクがタイガの事を面白おかしく書いてる。
そんなことがばれたらさすがに申し訳ないしなぁ)
何かポラリスが考えている様子だったが、俺は気にせず、
「で、その……ダークリゾルブってギルドは?目的はなんだよ」
と、話を戻した。
「噂じゃ{レックスのレックスによるレックスを世界の王にするためのギルド}。
レックスがこの世界のトッププレイヤーに君臨するために、ありとあらゆる手段……
例えば、北の洞窟の占拠。例えば、中級者あたりの素材集め妨害。
その他もろもろをやってるらしい」
「……で、そいつらに対抗策は何もねぇのかよ」
「あればやってると思う。そこまで無能……とは信じたくないよ?あるいは……」
「あるいは?」
「すでにこの世界自体が、ダークリゾルブに侵食されつつある」
そうこう話しているうちに、北の洞窟の付近にやってきた。
こちらの世界では夕方だ。現実世界ももうすぐ17時。
とりあえず数戦くらい……と思い、武器と盾を構える。
「とりあえずウェアウルフだけを狙っていこう。そのほかの素材は、また今度でいいはず」
「あぁ。もしピンチになったら頼む」
「おっけー。ボクは洞窟の入り口を見張っておくよ。キミがダークリゾルブに襲われる可能性もあるしね」
「頼む」
俺はポラリスに背を向け、歩き出した。
少し歩くと……
「ウオオォォン!」
ウェアウルフが飛び出してきた。
「{シャドウガン}!」
さすがに、そのために知力をあげていたんだ。
ウェアウルフにはかなり効いている。
「ウルルルル……」
そして逃げようとするウェアウルフ。
「逃がすかっ!」
シャドウガンを……しまった、クールタイム中だ。
「ならこっちだ!{ダーククラック}!」
地面から黒い手が飛び出し、ウェアウルフを捕まえる。
そして動きを止める。スタン状態だ。
「ウォッ!?」
「オラ!」
剣を突き立てると、ウェアウルフは消滅した。
そして宝箱が落ちているので開けると、
Get!【ウェアウルフの皮】
「まず1個……にしても……」
盾を手にした左手を気にする。
「グラビティダウン使ってるとはいえ、やっぱり重いな」
改めて自分の腕力のなさに落胆した。
そしてここで、レベル5に上がった。
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一方、こちらはポラリス。
「{スターゲイザー}!」
チュド~~~ン!
「む……やっぱり単発で落ちるか。この付近にはたまにアリジゴクとか出るから、
弓はそいつ用に使いたいしね……ん?」
Get!【ウェアウルフの皮】×2
「お、ラッキー。これでタイガが入手してたら、タイガの依頼は完了だねっと」
そして、メールを呼び出す。
「えっと……{タイガへ。そっちはどうかな?こっちは今、ウェアウルフが出てきたから}」
その時、
「ん?」
突然、地面が激しく振動する。
「何か来る……!?」
その振動は、徐々に徐々に大きくなっていく……
そして地面を突き破って……
「キシャアアアアアアアア!!」
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「うわあああああ!!」
「!?」
ポラリスの悲鳴が聞こえ、振り返ると……
そこには巨大な、蛇のようなモンスターがいた。
「な、なんだ……!?」
「グギアアアアアアアアア!!」
そのモンスターに照準を合わせると、このような表示が出た。
【エキドナ レベル42】
次回は初めてのボス戦。
圧倒的なレベル差。タイガとポラリスの運命は?