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一方そのころ、ポラリスたちは。 前編

今回はポラリス視点の会話。

今回と次回はポラリスを主人公とし、ポラリスの一人称、

「ボク」で進ませていただきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時は、少し遡って……タイガが巨人の眠る城を攻略中の事。




「やっと着いたね」

砂漠地帯のさらに奥、『巨大砂海』という場所に、ボクたちはやってきた。

「まさか砂漠地帯にこんな場所があったとはねぇ。マジでモトクラシーだわ」

「まぁ、掲示板の人たちも最近見つけたようだしね。

 砂嵐がきつくて、そもそも近付かないような場所だし」

「しかし、それにしても……」

ボクたちはエルの方を見る。

「オラァ~!もっとじゃんじゃんかかってこ~い!」

「うさ耳が生えた状態でバイオレンス。ギャップ萌えしない?」

「しない」


砂海を進んでいくと、敵が現れた。


【サンドワーム レベル34】


巨大な芋虫のような敵。しかも2体いる。

「現れたね……ここは」

「{アクアソリッド}!」

ボクが構える前に、エルが杖に氷をまとわりつかせて、

「おりゃあ!」

一撃。

……あっという間に、サンドワームは消滅してしまった。

「おし!もう一匹だな!」

少し面食らったが、ボクはもう片方に弓を構える。

「{秘剣・オオイカズチ}!」

ディアナが1撃。そこへボクが射かけようとするが……

「{天蓋砕き}!」

それよりも先に、アレンの斧が一撃を食らわせた。

そしてサンドワームは消滅した。

「へ~、やるじゃん!エルっちゃんもアレっちゃんも!」

「はっ!いつまでも足引っ張るわけにいかねぇからな!」

「それもこれも、ポラリスさんのおかげですし」

その言葉に、ボクはうなずくことは出来なかった。

「……?」

ボクのおかげ?そんなはずはない。

ボクは能力をどれだけ振ればいいか、それを教えただけ。

結局、一番はプレイヤーの才能なんだ。


……で、ボクはどうなんだ?

確かに他の人から見れば『頼りになると思われる』かも知れない。

でも、ボクはそうは思えない。

体力の高い敵にはエルやタイガに任せればいい。

素早い敵はアレンやツバキ、リエータに任せればいい。

強力な攻撃を使ってくる敵には、ディアナのパワーシールドが使える。


……ボクは?


ホーリーシールド?闇属性を防げないのでパワーシールドの劣化。

弓による攻撃?いや、そんなの役に立たない。

だって、構えるまで時間はかかるし、弓一発では器用さをいくら上げても……

スキルを使わないと倒しきれない事の方が多い。

そもそも敵を倒すということを考えれば、さっき言ったほかの人たちの方が適任だ。

サンライトキュアの回復?回復アイテムを使えばいいじゃないか。

……あれ?ボクって……


「おい、何やってんだよボクっ娘」

「……え?あ、うん。……何の話だっけ」

「……?」

首をかしげるエル。

「まだ何も言ってねえだろうが。てか、いつも通りつっこまねぇのかよ」

「ポラっちゃん、どうしたの?この頃ちょっと変だよ?」

「……そうかな?」

いや、いつもより変なことくらい、自分でもわかってる。


その後も……

「どりゃあ!」

エルの破壊力ある攻撃。

「{サンダーボルト}!」

安定感抜群のディアナ。

「{スティール}!」

被弾する気すらしないアレン。

その3人の大活躍で、砂海の攻略はスムーズに進んでいく。

「……」

そう、3人の大活躍で。

ボクが出来ることと言えば……

「{スパローキラー}!」

飛んでいる敵の足止め。

「{アローシャワー}!」

多くの敵の足止め。


……くらい。

トドメをさすのはほかのみんなだ。しかも……

「{アップトリップ}!」

接近しようとして……

「グギャア!」

「!?」

巨大な蛇の、ジャンボスネークの攻撃をまともに受ける。

「うぐっ……!」

「ポラリスさん!」

「{スマッシュ}!」

後ろからやってきたエルのスマッシュで、ジャンボスネークは消滅。

「ポラリスさん、大丈夫ですか!?」

駆け寄るアレン。ボクは右肩を押さえる。

「ひどいダメージ……今回復を」

「大丈夫。ボク自身でなんとかする」

サンライトキュアを自分にかける。

「……」

その様子を遠くから見守るディアナ。


それから少し進むと、岩つくりの小さな祠のようなところにたどり着いた。

……セーフティーエリアだった。

「セーフティーエリアってことは、ここはまだ続きそうだね。ちょっと休もうか」

「はい」

椅子に腰かけて、

「……」

少し目を閉じる。




――どうして!?


――『またやろう』って言ったよね!?お兄ちゃん!


――約束……したじゃないか……!


――ボクの事が……嫌いに……なったの……?


――もういい


――もういいよ!


――約束を破るお兄ちゃんなんて……ボクこそ大っ嫌いだ!


――後で後悔しても、絶対に許してあげない!




――嘘……つき……


――嘘つき!嘘つき!


――どうしてそんなこと、ボクにだけ隠すのさ!


――みんな嘘つきだ……ボクに対して、嘘つきだ!


――お姉ちゃんも、お兄ちゃんも、みんな嫌いだ!!




――なんで、なんで……みんな嘘をつくのさ……


――お兄ちゃん……!




「ちゃん……お兄ちゃん……!」

「……?」

はっと目を開けると、目の前にはほかの3人が。

あれ?……もしかして、寝てた……?

「な、涙流してましたけど……大丈夫ですか、ポラリスさん……?」

「……」

涙……か。

「それに、今お兄ちゃんって……ポラっちゃん、ひとりっ子だったよね?」

言ったところで、何かに気付いた様子のディアナ。

「……ご、ごめん、ポラっちゃん」

「……大丈夫。それよりみんな、もう出発していいかな?」

「……」「……」「……」

セーフティエリアの中の、時が止まる。

気を遣わせてしまった。ボクはそう思ってしまった。

でも……なんであんな夢を見てしまったんだろう?

とても懐かしい……夢だった。

「ポラっちゃん……」

ディアナが話しかけてくる。

「ポラっちゃんが悩んでるなら、ウチも聞きたい……かな」

「……」

これ以上隠し通していても、みんなのためにならないはず。

結局……ボクは足を引っ張ってばかりだな……




「最近、思うんだ」

歩きながら話を続ける。

「ボクは……このギルドにいる意味なんて、あるんだろうかって」

「どういうこと?」

「ボクの攻撃手段は、他の攻撃力を持つ人には、遠く及ばない。

 かといって、補助も微妙だしね。例えば、ディアナのパワーシールドがある。

 そして足が遅いから、さっきみたいに深手を負うことも多い。

 だから……みんなには遠く及ばないんじゃないかなって」

砂を踏みしめる、じゃりじゃりという音が響く。

「でも、ポラっちゃんが思ってる以上に、ガチめにポラっちゃんの存在って大事だよ?」

「そう言ってくれるのは嬉しい。だけど……」

「だけどもへったくれもあるかよ」

エルがボクに、鋭い眼光を向ける。

「んだ?オメェ、そうやって言って構って欲しいのか?」

「……」

「構って欲しいっつうか、ここで{そんなことないよ!}って言って欲しいのか?」

「おい、やめろエル」

アレンが止めようとするが、

「黙ってろ兄貴。オレは{ポラリス}に話してんだ」

豹変しているエルに、初めて名前を呼ばれた。

……エルの言うことも、もっともだ。

ボクはどうして欲しいんだ?

頼られて欲しいのか?慰めて欲しいのか?

「ごめんなさい、ポラリスさん、エルが……」

「……」

「エル、謝らないと」

「……」

ボクもエルも、何も喋らない。

いや、ボクは『喋れない』方が正しい。

「エル……空気を乱したらダメだろう?」

「乱してねぇよ。……気付いて欲しかっただけだ」

気付いて……欲しかった?


エルのその言葉がわからないまま、ボクたちは砂海を奥へ奥へと進んでいく。

出てくる敵は多く、レベルも高いが……

「オラァ~!」

「せぇい!」

「ふんっ!」

エル、ディアナ、アレン……その3人主体で何とでもなる。

ボクは……

「{スパローキラー}!」

正確に巨大な鷲、デザートイーグルに射るが……

「!?」

当たらない。

そんな、どうして?正確に射貫いたはず……

「ビイイィィィ!」

「!?」

唖然としているボクに、デザートイーグルが迫る。

「ポラリスさん!」


ドスッ


「うぐっ……!」

「あ、アレン!?」

ボクのせいで、アレンは大ダメージを負ってしまった。

「兄貴!」

その背後から、アクアソリッドで強化したエルが攻撃し、デザートイーグルが消滅。

「アレっちゃん大丈夫!?」

「だ、大丈夫です……!割と痛かったですが……」

「……」

ボクのせいだ。これはもう擁護できない……

「……あ、アレン……ボクが」

「もういい」

ボクの言葉より先に、エルが声を発し、ライフドロップをかける。

「ありがとう、エル」

「……」

エルはボクの方を、振り向きもしなかった。

失望……なのかな。

「……」

「ぽ、ポラっちゃん……大丈夫だから」

「……」

本当は泣き出したかった。

ボクに出来ることなんて……何がある?

今日にいたっては、足を引っ張っているだけじゃないか……


さらに奥に進むと……


【この先に強力な敵の気配あり。先に進みますか?】


オーバーソウルの警告メッセージだ。

「オーバーソウルまでいるんだね~。こりゃやる気ブチアゲだわ~!」

「行きますか?ポラリスさん、エル」

「オレはいつでも行けっぜ」

こんな状況で、オーバーソウルと戦ったって……

そう思っているボクの腕を……

「ねっ行けるでしょ!ポラっちゃん!」

「ちょっディアナ!?」

ディアナがボクの右腕をわしづかみ。

「てことで、レッツラゴー!」

こうなっては抵抗できない。

ボクは半ば強制的に、オーバーソウルに挑むことになった。

「!?」

目の前に見えたのは、砂の竜巻だった。

そしてその竜巻が晴れると……

そこにいたのは、巨大な翼が生えた、ライオンの魔物だった。

「ガオオオォォォ!」


【パズズ レベル52】

次回パズズ戦。

ポラリスは自身の悩みを払拭できるのか!?

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