その日、人類は思い出しそうな、そんな城の中へ。
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【WOO】新しく出来たギルドを生暖かく見守るスレ 2【ギルド】
628 名も無きアーチャー
ボクの所属してるギルド、
だんだんドラゴン化する人やウサギのコスプレした人が増えて
何だか動物園みたいになってきてるなぁ(滝汗
このままじゃボク無個性になりそうで怖い……
629 名無しの冒険者
ウサギのコスプレってなんだよおい
630 光の使者ナナーシー
いや、ドラゴン化する人も十分におかしいけど……
ウサギのコスプレって誰がしたの?まさかタイガ?
631 ナナシドラゴン
申し訳ないが需要なさそう
・・・
638 名も無きアーチャー
>>631 だろうねwwwタイガ男だし
>>630 エル。杖持った子ね
装備品変えたらいきなり帽子突き破って耳生えてきたらしい
装備脱いだら耳引っ込んだけど、装備する装備なくなっちゃうから
とりあえず恥ずかしさ我慢してもらおうと思う
639 リエータ教信者
どうせならリエータたんに着て欲しかったよハァハァ
640 名無しの冒険者
いや、リエータはビキニアーマーだからいいんだよ
わかってねぇなぁ
641 名無しの冒険者
いや、俺はバニー姿のリエータも見てみたい
もしくは全身ガッチガチな鎧姿でも
642 名無しの冒険者
和風な服も似合うんじゃね?忍び装束とか
643 名無しの冒険者
いいねそれ!
じゃあオレは着物でもいいな!
・・・
650 名も無きアーチャー
はいはいもどってこーい
いい加減にしないとタイガにビキニアーマー着せて写真上げるよ?
651 名無しの冒険者
すいませんでした
652 名無しの冒険者
ごめんなさい
653 名無しの冒険者
二度と妄想しません
654 ナナシドラゴン
いや、これで言うこと聞くっていう会話の流れもすこしおかしいけどな!?
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7月30日。イベントまで、あと5日だ。
そろそろ全員の装備も考え、援護班と戦闘班にどう分けるかも決めないといけない。
「とりあえず、全員素早さは問題ない。
だから、戦闘班にはなるべく戦闘に慣れている人物に入って欲しいところだ」
「つまり、リエータは確定。そしてギルドリーダーであるタイガも、戦闘班に入らないとね」
「だよな……さすがにリーダーが戦闘に参加しないのはまずい」
戦闘班は3人から。つまりあと1人必要だ。
とはいえあまり戦闘班に回しすぎると、援護班の仕事が増えて大変だ。
問題は戦闘班に誰を入れるか……
まず、入れるとまずいのはポラリス。
光と闇属性を共に使うため、ポラリスの力を発揮することが出来ない。
次に、エルもまずいだろう。
腕力特化であるということはすなわち、攻撃を受けると確定で吹き飛んでしまう。
攻撃力は魅力的だが、ここは我慢してもらおう。
アレンは攻撃を避けることについては一級品だが、攻撃力があまりない。
与えたダメージがそのままスコアになるので、あまり攻撃力を落としたくはない。
ツバキはまだレベルが足りない。
育てれば心強いが、時間は足りるだろうか。
証装備もないため能力の底上げもあまり出来ない。
ディアナは戦闘勘的にも、レベル的にもスキル的にも……
リエータの次に使い勝手がいいと言える。
だが、素早さがやや低めなのが気になる。俺が言える立場ではないかもしれないが。
「……とりあえず、援護班がやりたいなら手を挙げてくれ」
エル、アレン、ポラリスが手を挙げる。
「ツバキ、お前は戦闘側でいいのか?」
「はい。後方援護という役割には慣れていないので……
あ、もちろんタイガさんの指示に従います」
確かに、動くことの出来ない援護は逆に足を引っ張りかねない。
となると……レベルを火急的速やかに上げる必要がある。
「ん~、竜の座する洞窟では結構レベル上げきつくなってきたしなぁ……」
考えるリエータ。
「あ、なら……あそこはどう?巨人の眠る城」
ディアナの言葉で、久々に思い出した。
「エルとアレンが見つけた場所だよな。そこならレベル上げに使いやすそうか?」
「出てくる敵のレベルにもよりますがね。僕は行って損はないと思います」
「で、でも、あそこはオーバーソウルもいますが……」
何もオーバーソウルを倒すのがすべてではない。
すでに倒されている可能性だってあるのだから。
「もしオーバーソウルが生きていれば、討伐を狙うの?」
「そうだな。挑戦してみる価値はありそうだ。問題は誰がツバキと行くかだが……」
…………………………
「……」
全員の視線が俺に集まる。
「俺!?」
「言い出しっぺの法則、だよ。タイガ」
まぁ俺も新しいマップには行ってみたい好奇心はある。
「じゃあ、あたしも行こうか?」
手を挙げたのはリエータ。
「そうだな。リエータがいればそう負けはしないだろう。
で、ポラリス、ディアナ。お前たちはエルとアレンのレベル上げを頼む」
「わかった。砂漠地帯にまだ行ってない場所があるから、そこに行ってみるよ」
「エルっちゃんとアレっちゃんとは本当おひさだよね~!あ~、テンションブチアゲ~!」
エルとアレンは、ポラリスとディアナに対して頭を下げた。
とりあえずあちらは任せて大丈夫だろう。
「おっし、行くぞリエータ、ツバキ」
「はい!」
「いや~、何気にタイガ君と一緒に探索は初めてだね~!」
密林地帯の洞窟の奥。
「……」
巨大な石の扉がある。その前に……
「坊ちゃま、大丈夫ですか?だから1人なんかで行くなと、あれほど言ったのに」
「や、やかましいわい!行ける思うたんや!セーフティーエリアまでたどり着いたから!」
「あれ、カインとシルビアじゃねぇか」
俺が手を振ると、向こうも気付いたようだ。
「お?お前タイガやない……か……!?」
目を真ん丸にするカイン。
「つ、ツバキ!?なんでお前ここにおるんや!?」
「え?」
「ワシやワシ!ほら!同じ小学校の2年先輩やった、めっちゃやさしくしたった」
当然、首をひねるツバキ。
そりゃそうだ。
『俺はお前と一緒に走った徒競走でお前が1位だった時に、3位だったんだ!』
的な感じの事を言われても。
「覚えてないんか~い!なんでや!覚えといて欲しかったわ!」
「坊ちゃま、今更蒸し返さなくてもよいのでは?」
蒸し返す?
「ね、蒸し返すってどういうこと?」
「坊ちゃまは実は、ツバキ様に一目惚れをされていたのです。
年下の、しかも、立花ホールディングスの社長令嬢様に」
カイン、咆哮。
「結果はもちろん、玉砕されたそうです」
「あぁ、思い出しました!確か、給食のプリンを私に渡してきて……」
「ィヤメロオオオオオオオオ!」
プリンをどうしたのか若干気になるが、そんなことより……
「お前、ぼろぼろじゃねぇか」
「悪かったな!甘いもん渡せば女の子は振り向いてくれるって、オトンから」
「違う、体だよ」
カインは自らの体を見る。
「まぁ、ここに出てくる敵が強うてな……ワシじゃ恥ずかしながら、歯が立たんかったんや」
「坊ちゃま、だからわたくしは止めたのです。掲示板でも難しいと話題と」
「け、掲示板なんてなんぼのもんじゃいと思ったんや!
ここで帰ったらクロウとエミリーにま~たどやされるがな……」
冥府神の加護がなければ、惨敗していたカインが敵わなかった。
それはすなわち、俺では相当厳しいということがわかる。
だが……
「そんなに難しいダンジョンじゃ、返って燃えてくるよ!」
戦闘狂、ここに極まれるリエータと、
「足を引っ張らないように、がんばらないと!」
やる気のみなぎり方が尋常じゃないツバキ。
「……」
ははは、これは……行くしかないな。
なるべくやられないようにするが、もしやられてもここに戻るだけということが分かった。
それだけで不安要素はだいぶん減るだろう。
「ツバキ、リエータ。頼む」
「タイガさんのため、リエータさんのために、頑張ります!」
「ふっふっふ~。あたし、暴れちゃうよ~!」
「……!」
――リエータ姉さまのために、頑張ります♥(言ってない)
――あたし、暴れちゃうよ~♥
ボンッ!
「「お前は何を想像したんだ(や)」」
俺とカイン、同時に顔を真っ赤にするシルビアに突っ込む。
「とりあえず、もつ煮込みのお手並み拝見といこうやないか」
「あぁ。証装備手に入っても、お前にはやらんぞ」
「はっ!言うてくれるな」
俺たちは扉の方に向き直り、城の中へ入った。
「坊ちゃま。ちなみに告白の言葉は何だったので?」
「……」
「このプリンみたいに甘い恋を、キミと一緒にやりたい」
「……えっと、羽織るものは……」
「クソがああああああ!」
城内に入ると、そこは西洋の城のようなたたずまいだった。
入ったところから非常に広く、どの部屋から入るか迷うほどである。
「手分けして探す?」
「ん~、でも敵がどれぐらい強いかわかんねぇしな……」
と、その時だ。
「……」
何か聞こえる……?
「ツバキ!」
「えっ?」
突然巨大な腕が、背後から現れる。
「きゃあ!?」
巨大な腕は城の床を破砕し、宙に浮く。
間一髪で回避するが、尻餅をついてしまうツバキ。
「な、何?」
リエータと共に後ろを向くと、腕が宙に浮いた、頭に牛の様な角を生やした赤い巨人、
そして同じく腕を宙に浮かせた、頭に山羊の様な角を生やした青い巨人が立っていた。
「グオオオォォォ!」「グワアオォォォ!」
【コットス レベル50】
【ギュゲス レベル50】
「!?お二人とも、正面の方を!」
ツバキの言葉のまま、正面に向き直ると……
さらに同じように腕が宙に浮いた、鹿のような雄々しい角を生やした黄色い巨人が。
「ガアアアァァァ!」
【ブリアレオス レベル50】
「巨人の眠る城って……こういう意味だったのか!」
「3人ともオーバーソウルなのかな……試しに……」
プロミネンスをコットスに撃つリエータ。当然効いていない。
「やっぱり……!」
「ならこれはどうだ?{シャドウレーザー}!」
今度は俺が、ギュゲスにシャドウレーザーを撃つ。
が……
「何!?」
びくともしていない。それどころか、ダメージすら食らっていない。
「な、なんだ……!?」
「{旋風拳}!」
ツバキの旋風拳も……
「……?」
ブリアレオスには全く効いていない。
「ガアァ!」
さらにブリアレオスは、手から雷の弾を放つ。
「っ!」
急いで回避するツバキ。
「どうやら……こいつらは倒せないみたい」
槍を構えるリエータ。
「倒せないって……どうするんですか?」
「多分、こいつらに関係のある仕掛けが、どこかにあるはず。そうだろ?」
「うん。そう見て間違いないはずだよ!だから……」
『だから』
何故だろうか。その言葉だけでリエータが何をしたいのかがわかった。
「……行くぞ、ツバキ」
「えっリエータさん……!」
「大丈夫だ。この間のあれを見てもわかるだろ?」
「……」
なおも心配するツバキに、リエータは槍を構えながら、左手の親指をぐっと上げた。
「……はい!」
俺はツバキを連れて、階段を上がろうとする。
それを追いかけようとする3体の巨人に……
「よぉし、んじゃ、牛さん、山羊さん、鹿さん。ちょっと遊ぼっか」
槍を構えるリエータ。
「無理すんなよ!リエータ!お前もきつかったら逃げていいからな!」
「うん!」
リエータに軽く手を振りながらそう言うと、リエータも手を振り返した。
「……さ、ここは働かないとね」
次回、次々回、(3話後も?)巨人の眠る城編。
果たしてタイガたちは攻略できるのか?




