表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/79

かくて光へ伸びた「椿」は、大きく花開く。 前編

少し加筆。


サブタイトルを変更しました。

「こ、これは……どういうことだぁ!?」

顔を青くしながら続けるレックス。

「お前の負けってことだ。完膚なきまでの、な」

俺が前に出る。

「チートを使うような悪質な奴のお前には……{チート級な奴ら}で対抗しようとしただけだ。

 何なら一つずつ、説明してやるよ」

俺は指を立てた。

「まずひとつ。こいつらはこのゲームにおけるいわゆる{インフルエンサー}でな。

 こいつらが例えば、お前の改造の証拠を写真に収めて、SNSや掲示板にあげれば……」

端末を見せる。


【ダークリゾルブ】レックスの改造証拠発見【WOO】


1 名も無きアーチャー


信じる人だけ、信じて欲しい

でも、これは実際に見て、実際に撮ったものだよ

きっとこの装備を使って、レックスはツバキを追い詰めてたんだろうね


そこに写っていたのは、壁に縛られたダークリゾルブの面々と、

その部屋の中に大量にあったコピーツバキの装備。

そして……動画で言っていた言葉と、一言一句違わない原稿。

それがあがるやいなや……


―――――――――――――――――――――――――――


は!?なんだよこれ!?合成……じゃないんだよな!?


恐ろしいことしてるなおい……

ちょっと待て、じゃあ嘘をついてるのは……


うっわ、サイッテー。

あの動画で見せたのって全部嘘ってこと!?


複製とか、普通にマナー違反だからな……

ちょっとでもレックスを信じた俺がバカだった


この原稿、あの動画カンペガン見だったってことかよ


自分の言葉で謝ることも出来ないのか。クソすぎるだろ


そんなことも知らずに僕たちはツバキを……

ツバキに謝らないと……!


―――――――――――――――――――――――――――


「ウチのもあるよ!」


【悲報】レックスさん、やはり改造厨だった【WOO・鬼畜ギルド】


1 大剣大好きっ娘


ほら、見てよこれ

これを見てもまだ「レックスが正しい」なんて言える?


そこに写っていたのは、同じように壁に縛られたダークリゾルブたち。

改造に使ったとされるコンピューター。

そして、改造のデータが事細かに載せられたノート。


―――――――――――――――――――――――――――


あちゃ~、やっちまったなこれ


ゲスが過ぎねぇか、こいつ。こんな奴信じるんじゃなかった


ひでぇ、真面目にやってる俺らがバカみたいじゃねぇか


これをして何になるんだよ……ただの自己満?


レックスの高笑い、聞こえてくるみたいだなこれ……


―――――――――――――――――――――――――――


掲示板では、怒り、妬み、そして呆れの声が入り混じっていた。

「掲示板じゃ{チート級の有名人}だ。今、この二人の書き込みもあって、

 リスポーンで町に戻ったダークリゾルブを捉えようと来てるだろうよ。

 多くのプレイヤーが、お前に対する恨みを持ってな。

 聞いて天国見て地獄……いや、{聞いて地獄見ても地獄}だ」

「あぁ、このダークリゾルブに3人がかりで襲われたけど、正直ボクたちの敵じゃなかった。

 きっと、ハッキングに長けた人たちで、戦闘経験はなかったんだろうね。

 ちなみにタイガの言ってることは間違いじゃないよ?

 ナナシドラゴンさんっていう人が、その人たちを律してくれてるからね。

 今頃、ボクとタイガ、ツバキ、そしてリエータのBAN要請も却下されてるはずだよ?」

歯を食いしばるレックス。

「それともうひとつ分かったことがあるんだけど……それはもう少し後。

 タイガ、続けて」

「あぁ。次にお前は、助けを呼んでいたよな?残念だが、来ないんだよ。理由は……」

扉が開く。

「はぁっはぁっ……さすがに……疲れました……」

「これだけ精いっぱいやったんだもん。お礼は弾んでよね?タイガ君」

エルとリエータ。

「アレンは?」

「お兄ちゃんは……さっき男の人と女の人を連れて……」

あたしが説明するね。と、前に出るリエータ。

「コピーツバキに、イズミちゃんって人を使ったのは大失敗だったね。

 アレン君とエルちゃんが連れてきた彼女の兄のカイ君が、すべて吐いたよ?

 アンタに捨て駒として使われるってことも、アンタの悪事も。

 そして……アンタが捨て駒として使うために、リスポーン地点を洞窟の外に設定したことも」

「……お兄ちゃんは、護衛のためにあの二人を連れて洞窟の外に向かいました。

 あの兄妹が、この後動画であなたの犯した罪を告白するそうです。

 あなたのツバキさんの告発の時の、あなた1人の証拠と違って、

 ポラリスさん、ディアナさんの証拠もある……

 終わりです。レックスさん!」

エルが、自分に発破をかけるように、握りこぶしを作りながら言った。

「ば、バカな……!?一瞬で回復するはずだぞ!?コピーツバキは!?」

「この二人は{チート級の戦闘力}を持っててな。

 コピーツバキにはエル、他にはリエータで挑んだんだろ。

 エルの自動スキル{デストロイヤー}はHPMAXの相手に攻撃力が上がる。

 それに例えば{バーニングソウル}とかを使えば、回復の暇もなく即死させられる。

 お前の改造は、完璧に墓穴になっちまったわけだ。残念だったな」

わかりやすく首を鳴らすリエータ。

「流石にあの数全員ってのは、ちょっと疲れたけどね。エルちゃんがいてよかった」

そこへアレンからギルドメッセージ。

「……あの二人、無事に町に戻ったらしいぜ。

 それでアレンが町の奴らを説得して、あの二人が土下座して許しを請ったそうだ。

 後はあの二人が罪を告発する動画を投稿すれば……ってとこだ」

「じゃ、じゃあお前は!?お前はどうなんだ!?お前こそ改造を……」

虚勢を張ることしかできないレックス。もはやその姿が、哀れにも見えてきた。

「俺?俺はスキルがチート級なだけさ。ついでに言うと、ツバキも」

「結構ギリギリだったんですが、タイガさんが回復してくれたおかげで精神的に楽になって……

 その後効き目が残った{オーバードライブ}で、あなたの背後に回り込んだんです」

「で、俺は{冥府神の加護}っていうスキルがあってな。そのスキルのおかげで、

 どんな攻撃も無傷でたまに耐えられるんだよ。

 何がチートだ。何が改造魔だ。お前の汚らしい理想と、俺たちを一緒にするんじゃねぇ」

唖然とするレックス。

……まぁ、低い確率とはいえ強すぎる。次回のアップデートで弱体が入りそうだ。

「……で、ポラリス。もうひとつわかったことってなんだよ」

「いや、それがね……ツバキに悪いことなんだけど」

「わ、私……?」

『ごめんね』と謝る様に手を添えてから話し出す。


「ツバキのご両親……レックス派の人が運転する車に追突されて死んだんだって」


「……!!??」

ツバキは口を覆った。

「綿密な打ち合わせしたんだろうね。どうにかして{事故に見せかけて殺せないか}

 それを実行に移すことで、キミは自分の手を汚さないで邪魔者を排除出来たわけだ。

 両親ともに亡くなれば、キミは苦労をせずに経営の実権を握れる。

 とても好都合だよね。キミにとっても、キミを慕う人たちにとっても」

「じ、自分の親すら平気で殺せるとか……マジで言ってんの……!?

 超SSじゃん……マジで……超SSじゃん……!?」

しかしポラリスのその言葉を聞いたレックスは……

「ひ、ひひひひひ……」

肩を震えさせて、

「あ~~~っはっはっはっはっはっはぁ~~~!」

大声で笑いだした。

「自分の親を平気で殺す?それの何が悪いんだよ!?

 オレ様は不要になった{道具}はすぐに{捨てたい性分}なんだよ!

 だからツバキもすぐに捨ててやったんだ!だからカイもすぐ捨ててやったんだ!

 親父やお袋と同じように、ゴミ切れのようにな!

 あ~あ、せっかくうまくやってたと思ったのに、道具共のせいですべて台無しだ!

 だがオレ様は人間がこれまでやってきたことを、ただ単にやっているだけだ!

 それを責められる道理などない!道理などないんだよ!

 ひゃ~~~っはっはっはっ!」


「……え?やっぱりそうだったの?」


ポラリスのその一言で、

「はっ?…………!?」

初めて自分から、罪を認めてしまったことに気付いた。

「ポラリス君……ブラフをかけたんだね」

「うん。ボクはただ単に、ツバキの話を聞いてて{キミ派の奴がやったんだろうな}

 そう思っただけで、ボクは{キミがやったと誰かが言ってた}や、

 {キミがやった証拠を見つけた}なんて、一言も言ってないよ。

 それに{わかったこと}は{この洞窟に来てから}じゃないしね」

ツバキの足が震えだす。

俺の肩も震えだす。

やはりこいつは……人間じゃない。人間として……見てはいけない。

「今の言葉、全部録音させてもらったからね。今更後悔したところで遅いよ?」

リエータがこれ見よがしに端末を向ける。

それを聞いた途端、レックスは膝から崩れ落ちた。

「オレが……立花ホールディングスを牛耳る……その夢をかなえるために、

 {あいつら}は、どうしても邪魔だったんだ。

 だからこそ、オレが{殺してやった}んだよ……」

殺して……やった?

冗談じゃない。

実の両親を殺して、何故それが殺して『やった』と言えるんだ。

「オレのどこに非がある……?」

しかし、悪びれる様子がまるでないレックス。

それどころか……

「……そうさ!オレのどこに非がある!?

 オレはツバキを助けてやったんだぞ!?無能だの失敗作だの言われているツバキを!

 {奴ら}から助けてやったんだぞ!?その恩を仇で返すつもりかツバキ!」

さらにツバキに駆け寄り、こう続ける。

「なぁ、わかるだろ!?わかるだろ!ツバキ!

 オレは慈悲深いんだ!お前のためを思ってあいつらからお前を助けてやったんだ!

 その時の恩を今返す時だぞ!?助けてくれツバキ!助けてくれ!

 わかるだろ!?わかるだろぉ!?わかるだろって!?」

「……」

ツバキは、いまだに放心状態で、手足をぶるぶると震えさせている。

わかっている。ツバキは、臆病なんだ。

ツバキは、やさしいんだ。

ツバキは……いまだに『家族』である兄を、どうするか迷っているんだ。

……だから、俺は……お前の背中を押してやる。

「{ダークアニメート}」

ツバキの体の中に、闇の力が入り込む……!

「……命令してやる。ツバキ。思い切り行け」

黙ってうなずくツバキ。

「そいつの胸倉をつかめ。そして……」


「一発、ぶん殴れ!」


ドゴォ!


「がああああ!?」

ツバキの渾身の一撃が、レックスの左頬を殴り飛ばす。

レックスは血を吐きながら、地面にもんどりうった。

「はぁっはぁっはぁっはぁっ……」

殴ったツバキは、呼吸が荒くなっている。

「き、き、貴様ぁ!ツバキぃ!?何をしている!?

 ほかの奴の命令のまま、兄であるオレを殴るなど……!」

「あ?命令?」

「知れたこと!ダークアニメートで命令を……」

ツバキの体力は、徐々に回復している。

それもそうだ。俺がツバキにかけたのはダークアニメートではなく……

「ぶ、ブラック……ソウル……!?」

「その通りだ。これは別の奴にもかけられるからな。

 そもそも、ダークアニメートを味方に使うなんて、恐ろしくて出来るかよ。

 わかったか?レックス。

 ツバキはもう、お前の恐怖の言いなりになるんじゃなく……

 自分を信じて、自分自身の意思でお前との離別を選んだんだ!」

「……ち、ちち、違う……これは何かの間違いだ、そうだろ?ツバキ?そうだろ?」

泣きそうな顔をしながら、ツバキになおもすがろうとするレックス。

……哀れだ。哀れすぎる。

これが自分しか信じられず、人を道具としか思っていない人物の末路なのだろう。

「ツバキ!何とか言ってくれ!オレを……僕を助けてくれよぉ!ツバキぃ!」

「……兄さん……」

ツバキは、涙を流しながらこう言った。

「……残された唯一の家族の事……これ以上、嫌いにさせないでください……!」

それを聞いたレックスは地面にくずおれると、大声で号泣しだした。




……レックスの身柄を、運営に引き渡す。

これにより、レックスはBANは免れないだろう。

そして今回の事故の事も詳しく分かった。匿名で警察に届ければ……

レックス……いや、シドウは逮捕されるはずだ。


だが俺には、ひとつだけ、腑に落ちないことがあった。

「結局、ツバキのご両親は、なんでツバキを出ていかせようとしたんだろうな」

「わかりません……今は、もう、証明のしようが……」

「思ったんだけどさ」

ポラリスが声を上げる。

「ひとつだけ、言葉を入れたら、意味が一変するんだ。あの言葉」

「え?どういう事?」


――でも、本当に……?本当にあの子をいつか追い出すつもりなの……?


「その方が、{ツバキの}ためになるだろう?」

「!……ポラっちゃん、それってまさか」

うなずいた後、続ける。

「多分、ツバキのお父さんとお母さんは、レックスの野心に気付いていたんだ。

 そしてレックスが、自分たちの命をも狙っているということも。

 だからこそ、これ以上ツバキを会社関連の問題に付き合わせるわけにはいかない。

 ツバキを出て行かせて、自分たちを嫌わせて、自分たちだけで被害を受けて……

 そして、ツバキには、気を遣わせずに、生きて欲しいと思っていた……

 ……好意的解釈が過ぎるかもしれないけどね」

「父さん……母さん……」

両手を見るツバキ。俺はそんなツバキに……

「よかったな、ツバキ」

「え?」

「お前はやっと……父さんと母さんの温かさを、知ることが出来たんだ」

「はい……!」

ぎゅっと、握りこぶしを作った。

「あ、み、みなさん、出口が見えてきましたよ!」

そこでは……

「あ、皆さ~ん!」

アレンが、手を振っていた。

「お兄ちゃん!」

まずエルが走りだす。

それにつられて、他の仲間も、足を地上に押し進める。

「……行くか、ツバキ」

「……はい!」


ツバキの花は、こうして闇から這い出て……

そして、希望の光へと、歩き出した。


自分自身の、意思と、力で。

タイガはチート級の強運持ちですね……

次回でツバキ長編完結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ