闇に沈む「椿」の花は、希望の光に焦がれて。 8
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少し時は遡って、洞窟の入り口……
「なんで俺を助ける……!?」
「なんで……ねぇ。オレにもわかんねぇ」
「エル。ここは僕が」
アレンが前に出る。
「登場の仕方から見て、あなたはプレイヤーキルを受けた様子。
一体中で、何が起こっていたんですか?」
「バカ、言えるかよ。そんなこと言ったら、俺はまた……」
言いよどむ男に、エルは……
「いいんだぜ?お前をここでボッコボコにしても」
と、杖を向ける。
「おう、やってみろよ。どうせ俺は……妹に……もう顔向け出来ねぇ」
「あ!?」
「レックスに歯向かったんだ。俺は多分、ツバキさんみたくひどい目に合わせられる」
「お、おい、ちょっと待て!ツバキが……なんだって!?」
男はうつむいたまま話さない。
「悩みがあるなら、僕たちでよければ、お話を聞きますよ」
「言うわけねぇだろ!俺らはお前らにとって敵だろ!?」
「敵なら、話してはいけない……わけではないでしょう?」
「……何言ってんだ」
両隣に何の警戒感もなく座るエルとアレンに、男は観念した様子で……
「俺……本当はこのギルドにいたくなかったんだ。
レックスの……あいつのツバキさんに対するやり方は、あまりに苛烈すぎて……
同じ兄妹として、見てて耐えられないこともあったんだ。
それで、さっきも入り口でドラゴンにやられて、逃げ帰ったら……このざまだ」
「妹さんは……?」
「妹なら、この前のイベントみたいに、ツバキさんの装備を着せられて……
今、お前らを倒すために移動してる……と思う。
あいつは俺と違って……レックスに従順なんだ……
レックスが本当は何をしているのか……知ることも無くて……かわいそうでよ……」
うなだれる男。
「……でも、こんなどうしようもねぇ兄の言うことなんか、聞くわけが」
「ダメです」
声を上げたのは、アレンだ。
「伝えたい言葉を、自分の言葉で伝えなくてどうするんです!
なんでも言いあえて、痛みとか悲しみとか、喜びとか……
分けあえるのが本当のきょうだいというもの。最初から諦めてはいけません」
「オレもそう思うぜ。……不安なら、オレも付き合ってやる」
しかし男はまだ戸惑う。
「……で、でも、俺はお前らを……倒そうとまでしてたんだぜ!?
背後から攻撃されるとか、そう言う可能性は考えねぇのか!?」
「ねぇよ。そもそも、オレたちを本当に倒すなら、今やってるだろ?」
「……僕たちは、あなたを信じています」
エルとアレンは立ち上がり、洞窟に向き直る。
「な、なんで……」
「何もかも疑ってかかっていては、大切なものも信じられなくなります。
僕はそう言った人物にはなりたくない。それだけです」
アレンのその言葉に、男は再びうなだれた。
「……地下二階に通じる階段の……途中だ」
「え?」
「そこは洞窟の一部がホログラムになってて、隠し部屋になってる。
レックスや他の奴らが改造した証拠があるはずだ。俺の妹もそこで……」
二人で向き合い、うなずく。
「全部終わったら、妹と一緒に自訴するんだぞ」
「……わかってるさ、それぐらい。もともとこの世界にもう俺の居場所はないし」
「兄貴、いけてるか?」
「……うん。もう送信したよ」
端末を操作し、ギルドメッセージを送った。
「ぐっ……!」
一方洞窟の中、ポラリスはダークリゾルブたちの集中砲火を受けている。
戦闘経験の少ないプレイヤーばかりで、レベルも低いが、
これほどまでに数が多いと、やはり体力の高いポラリスでも厳しい。
しかし、ディアナがシェイドに捕まっているので反撃も出来ない。
「ど……どうする……」
「ぐ……ぽ、ポラっちゃん……!」
意識を取り戻すディアナ。
「ハァ~~~ッハッハッハッハァ~~~~!」
ディアナが意識を取り戻すと同時に、再び殴り始めるシェイド。
「ディアナ!」
「う、ウチ……は……いいから……!気にせず、こいつを……!」
それを聞いた瞬間、ポラリスは目を大きく開く。
「ウチはいいから、気にせず?出来るわけねぇよなぁ!」
「いい子ちゃんなお前らに出来るわけねぇだろ!」
「ほらほら、やってみろよ!傷付けてみろよ、いい子ちゃん!」
はははと、周囲で笑いが起こりだす。
その笑い声が、寄せる波のように、徐々に大きくなっていく。
「{アローシャワー}!」
「はっ?」
アローシャワーが激しく命中。
「グギイイイアアア!」
激しく狼狽するシェイド。
「うわあっ!」
投げ飛ばされるディアナ。
「ディアナ!」
その左腕には矢が刺さっているが、ディアナはそれを思い切り抜くと……
「さすがポラっちゃん……わかってくれてんね!ホントBFFだよ!」
「{ベストフレンドフォーエバー}ね」
「さて……」
大剣をシェイドに向ける。
「ウチをポコパンしたツケ、そっくり返してもらうわよ!」
「ウウウワアアアアアアア!!」
我を忘れて襲い掛かってくるシェイド。
「破壊衝動全開で、自分の意思で行動できない獣の様な奴に……」
「{秘剣!」
「後れを取るようなディアナじゃないよ」
「オオイカズチ}!」
鋭い一閃が、その『獣』を正確にとらえる。
直後に激しい雷がほとばしり、
「ガアアアアアアアアア!?」
シェイドは、一撃で消滅した。
「シェ、シェイド様ぁ!?」
「お、お前、なんで攻撃できんだよ!?仲間だろ!?
仲間すら気にせず攻撃するとか、貴様……外道か!?」
「逆だね。{仲間だから}だよ」
ポラリスは、冷淡に言い放つ。
「仲間だからこそ、{仲間がやって欲しい事}は全力でやる。
仮にそれが、その仲間を傷付けてしまうことになったとしても、ね。
ボクは仲間を信じてる。仲間もボクを信じて、そう言ってくれる。
お前たちみたいに、独りよがりな奴らが集まった集団とは違うんだ」
「ポラっちゃん、さすが神ってるぅ!」
「そう言うほどでもある」
サンライトキュアをディアナにかける。
「く、くそう、やれ!」
襲ってくるダークリゾルブたち。
「{天地一閃}!」
唸りをあげる大剣。まるで地面を食らうかのように、衝撃波が波立つ。
「{ミルキーウェイ}!」
取りこぼした相手を、ポラリスが鮮やかな弓さばきで射貫く。
「く……クソ……なんなんだ……お前ら……!」
が、その時だ。
「!」
背後から突然の跳び蹴り。ポラリスはそれを、ホーリーシールドで跳ね返す。
「……また、まねっこみたいだね」
そこに立っていたのは、3人のツバキ……の、装備をした人物。
仮だが、コピーツバキと呼んでおく。
「うっわ、タイちゃんの言うことマジだったんだ。タチ悪」
案の定、コピーツバキは何も言わずに駆け寄ってくる。
「{不動の構え}!」
攻撃を受け止めるディアナ。しかし、連続的な攻撃を受け、次第に押され始める。
「ぐっ……結構やばたん……!」
「……」
無心のまま殴り続ける。まるで、感情のないロボットのようだ。
ポラリスの弓もかわされ、距離を一気に詰められる。
「{アップトリップ}!」
ディアナを狙うコピーツバキの頭上に移動。
しかし、その場で先ほどのコピーツバキに向かって、
「!?」
「なんてね、{アローストライク}!」
アクロバティックに縦に回転し、逆さになりながら撃つ。
正確に放たれた矢は、コピーツバキに命中。着地した後……
「{バーニングソウル}!」
サブ魔法で覚えたバーニングソウルを使い、体中に炎をほとばしらせ、
その後、弓を射る。赤く光る矢は、再びコピーツバキを貫いた。
「んじゃ、ウチも、{スプラッシュ}!」
水しぶきが上がる。威力はそれほど高くはないが、追加効果の素早さダウンが発動。
動きが遅くなったコピーツバキに、大剣を振りかざす。
「……」
だが、何かがおかしい。
「ポラっちゃん!」
「うん。こいつらも……」
ダメージを与えているが、すぐに全快まで回復している。
「ははははは!さすがレックス様だ!こうなることも予想してたんだな!」
「お前らごときじゃ倒せねぇんだよ!オラ!俺らも行くぞ!」
動きを止めていたダークリゾルブの面々が、怒涛の波のように襲い掛かる。
さすがにこの軍勢相手では旗色が悪い。そう、思っていた時だ。
「{メテオドロップ}!」
「ぎゃあああ!」
「!?」
地上に降り立つ、赤い竜と見まごう槍の先にいたのは……
「寄ってたかって女の子二人をいじめるなんて、いい度胸してるじゃない?」
「リエータ!……あ、あとボクは男!」
「まー、この際どっちでもよくない?リエっちゃんがいれば百人力だし!」
即座に地面に刺さった槍を振り回し、
「たぁっ!」
そのまま横薙ぎ一閃。銀色の残滓が美しくも苛烈に敵を攻め立てる。
「……」
コピーツバキが3人同時に駆け寄り、攻撃しようと腕や足を伸ばす。
「……その姿で、あたしと戦うの?……やめて」
前方に突進。
「あのイベントの事を思い出して、手加減できなくなるから」
リエータの目から、殺気があふれる。
「リエータ!」「リエっちゃん!」
二人同時に声を上げる。
「大丈夫。先に行って!」
「ちょっ行けんの!?さすがに数オソロだし!?」
「伊達にイベントでっ高い成績残してないよ!」
槍を片手で持ち、構えを取るリエータ。
と、その時……
ピロリン!
「?」
ギルドメッセージだ。
「アレンから?」
アレン(Allen0327):誰でもいいので、このメッセージを見た方は
地下二階に通じる階段の途中を調べてください
そこに、ダークリゾルブの改造の証拠が残っているはずです
「地下二階に通じる階段の……途中……?」
「!!??」
ポラリスがわざとのようにそう言うと、ダークリゾルブたちの余裕が、一斉に焦りに変わる。
その様子を見て、何かを確認する。
「……なるほど、そう言うことだね。行こう、ディアナ」
「りょ!」
ディアナが駆け出す。ポラリスはリエータに背を向けながら話し出す。
「リエータ、キミには助けられっぱなしだね」
「感謝なんていらないよ。これはあたしが勝手にやってることだから!」
「……だね」
走りだすポラリス。
「に、逃がすな!追え~!」
一斉に駆け出す。余裕ではなく、焦燥感を身にまとって。
「さてと……{レッドドラグーン}!」
リエータの左手に纏った赤い竜が、炎を吐きだす。
命知らずで駆け寄った男たちを、一斉に灰へと変える。
「ひ……?!」
「キミたちの腐った感情も、腐りきった考えも……」
ジャキン!と、槍を構えて威圧感を放つ。
「一人残らず叩き直してあげるから、覚悟してね」
階段を降り始める二人。リエータが食い止めているため、誰もダークリゾルブはいない。
「……」
「でも、どう調べんの?ポラっちゃん」
「ディアナ。{パワーシールド}を使えるかい?」
「え?……りょ。{パワーシールド}!」
裂帛を放つと……
「?」
一瞬だけ洞窟の壁が歪んだ。……しかも、2か所。
「二手に分かれよう。おそらくどちらにも、ダークリゾルブがいるはず」
「あ~、こんな場所にいるんだもん。陰キャの中の陰キャ、キングオブ陰キャがいるだろうね」
そしてポラリスとディアナは、ホログラムの中に入っていった。
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……砂ぼこりが晴れる。
「危ないところ……だったな」
「そうですね……」
ツバキのオーバードライブで、辛うじてシャドウレーザーを回避。
しかし、ツバキは少しダメージを受けている。
「大丈夫か?」
「はい。飛んだ破片が当たっただけです。……それより……」
レックスの方を見ると、レックスはさらに激昂している。
『貴様ら……!オレ様がせっかくの慈悲で貴様らを{倒してやろう}と思っていたのに……
その慈悲すら無駄にする気か!?何様のつもりだ貴様らぁ!?』
その激情を表すように、レックスの体からは煙が上がっている。
『まぁいい……どの道貴様らがオレ様に勝てる道理など生まれない……生まれるはずがない……
何もかもを犠牲にし!邪魔者は徹底的に排除し!ここまでのし上がったオレ様の道を……!
貴様らごときがっ!遮るなああああああ!』
……もはや、その理想は形骸化している。
自分を王とした、世界を統べる者たる理想。
しかし裏を返せば、それはただ駄々をこねる子供の妄言のようなものだ。
「ツバキ」
「……」
少しだけ目を閉じた後、目をカッと開くツバキ。
「大丈夫です。……私は、もう迷わない!」
そして足に力を込め……駆け出した。
「私を信じてくれる人が、1人でもいるなら……私はこの力で戦います!
信じてくれる人のため……そして、その信じてくれる人を信じる私のためにも!」
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バーニングソウル 炎 消費SP:30
【気炎を身にまとい、一定時間武器の攻撃力を上げる。
武器の攻撃力のため、スキルには効果がない。
レベルMAXで{ソウルオブソル}に強化可能。クールタイム:30秒】
次回、レックス戦決着。




