大規模なイベントの後には、やることが増えがちだ。
メンテナンスが終わり、ログインする俺。
「お、タイちゃ~ん」
「おはようタイガ」
「おはようポラリス。ディアナも一緒か」
町はイベントの時と同じように、妙な緊張感はなく、元通りの穏やかさを取り戻している。
「タイガ、とりあえずイベントが終わった後だからスキル屋に行こう」
「お、確かサブ属性装備できるんだったな」
「ウチはもう水属性サブにしたよ~。タイちゃんもポラっちゃんも秒で付けよ!」
スキル屋の中に行くと……
「あ、タイガさん」
「こ、こんにちは……!」
すでにエルとアレンがいた。
「おう、お前たちも来てたか」
「は、はい。わたしは進職のためですが……」
ステータスを確認……と、俺もステータスの割り振りを後回しにしていた。
後で割り振っておかないと。
エル レベル24
得意武器:杖 得意属性:水 サブ属性:風
職業:アクアメイガス(1/15)
HP:180
SP:130
腕力:166(+10) 知力:1(+30) 器用さ:1
素早さ:1+10 体力:1(+10) 精神:1(+20)
武器:コーラルロッド
【サンゴを使うことにより、水の力を封じ込めた杖。
水属性スキル発動時にのみ、消費SPを2割減らす】
防具:フロッグローブ
【カエルの皮をふんだんに使ったローブ。
素早さが10上がる代わりに、被雷ダメージが10%増える】
腕:カニのコウラ
【カニの甲羅を、盾で持つように改良したもの。少しなまぐさい】
アクセサリ1:なし
アクセサリ2:なし
アクアメイガス
【杖と水得意。サブ武器として、斧を装備できる上級職。
水魔法と杖を使った攻撃を多く覚える】
アレン レベル26
得意武器:斧 得意属性:水 サブ属性:炎
職業:バイキング(2/15)
HP:150
SP:110
腕力:41(+20) 知力:1 器用さ:1-10(+10)
素早さ:141 体力:1(+20) 精神:1+10(+10)
武器:スチールアックス
【良質な鋼鉄で作られた斧。重いが、意外とバランスが取りやすい】
防具:オールプレート
【全身をすっぽりと、覆い隠す鎧。防御力は高いが、器用さが10下がる】
腕:(装備不可)
アクセサリ1:星の砂
【地球上の物質ではない、どこか遠くからやってきたと言われる砂。
精神的状態異常に若干強くなり、精神が10上がる】
アクセサリ2:なし
バイキング
【斧と水得意。サブ武器として、長剣を装備できる上級職。
斧のスキルや、広範囲に及ぶ水属性スキルを覚える】
「二人とも、大分レベル上がってるな」
相も変わらずステータスは極端だが、スキルでカバーできるだろう。
特にエル。腕力166からのデストロイヤーとか想像に難くない……
「ありがとうございます……!これも、タイガさんやポラリスさん、
ディアナさんのおかげだと思ってます……!」
「いや違うっしょ。タイちゃんやポラっちゃんはともかく、
ウチは何にもしてないから。MKされる筋合いなんてないよ」
と言うディアナ。
「んじゃ、俺も属性つけてくるかな」
「ボクも」
……その後、ステータス割り振りなども行った結果、俺たちはこうなった。
タイガ レベル29
得意武器:長剣 得意属性:闇 サブ属性:水
職業:ダークナイト(4/15)
HP:200
SP:210
腕力:20+20(+20) 知力:70+10 器用さ:40+20(+10)
素早さ:36 体力:18+20(+20) 精神:10+20(+10)
武器:邪剣アジ・ダハーカ
【世界を滅ぼすほどの激情を持つ三つ首の大蛇の力を封じ込めた長剣。
腕力と器用さが20上がる。超覚醒可能】
サブ武器1:シェルスピア(槍)
【水棲の魔物の素材をふんだんに使った槍。軽くて扱いやすい】
サブ武器2:飛刃オーキュペテー
【例外武器の一種のブーメラン。投げることで遠距離の敵を攻撃可能。
投げる攻撃は器用さ、近接への攻撃は腕力に依存。超覚醒可能】
防具:魔鎧テュポーン
【世界そのもの、と言えるほど強大な蛇の力を封じ込めた鎧。
体力と精神が20上がる。超覚醒可能】
盾:皮の盾(破損中)
アクセサリ1:砂塵のお守り
【砂の塵から身を守るアクセサリー。知力が10上がり、目潰し無効】
アクセサリ2:なし
ポラリス レベル32
得意武器:弓 得意属性:光 サブ属性:炎
職業:トリックスター(5/15)
HP:195
SP:170
腕力:1 知力:10+15(+10) 器用さ:107+35(+30)
素早さ:1+15(+30) 体力:85 精神:5+20(+10)
武器:神弓アマツミカボシ
【星の神が顕したとされる霊験あらたかな大弓。
器用さが20、知力が15増加。超覚醒可能】
防具:天衣フレスベルグ
【幻の結晶鳥を討伐した証。器用さと素早さが15上がり、
相手からの攻撃で命中率を下げられなくなる。超覚醒可能】
腕:(装備不可)
アクセサリ1:毒蛇のマフラー
【巨大な毒蛇をあしらったマフラー。精神が20増加し、瘴気毒以外の毒効果を無効化する】
アクセサリ2:赤サンゴの腕輪
【赤サンゴを使った腕輪。挑発効果が発動する代わりに、被ダメージを5%低下】
ポラリスは単純に火力が欲しいから、
俺は回復などの手段で少しでも闇属性を円滑に使いたいからと言う理由で、
サブ属性は決まった。
また俺はライフドロップとエイドウォーター、この2つのスキルを覚えた。
ライフドロップ 消費SP:10
【癒しの水の力で傷を癒す。回復量はやや少なめ。
レベルMAXで{ライフレイン}を編み出し可能。クールタイム:30秒(+5)】
エイドウォーター 消費SP:12
【癒しの水の力で状態異常を治す。レベルアップで治せる状態異常が増加。
レベルMAXで{エイドレイン}を編み出し可能。クールタイム:45秒(+5)】
「よし、いい感じだ」
だが、スキルのどれを外すか、それが問題だ。
仕方ない……使ってきて名残惜しいが、グラビティアップ、ダウンと変えよう。
「あれ?てかタイちゃん、盾は?」
「……あ」
……装備品を見て気付かなかった。
「いけね。カインと戦った時にぶっ壊したんだった……直しに行くか」
と言っても、皮の盾ではもはや限界がきている。
現に、盾で攻撃を防いだのは数えるほどだ。
とはいえあって困るものでもない。
「あ、わ、わたしも行きます……」
「僕も行きます。サブ武器の長剣を見に行きたいので……」
「ウチも行こっかな。ただ何となく」
「いらっしゃ……って、おぉ、大所帯じゃな」
「お邪魔します」
ディグの武具屋にやってくると、俺は盾を壊したことを説明した。
「ふむ……盾を修復するよりかは、新しい盾を作ればいいと思うが……
皮の盾では防御力が釣り合っておらんじゃろ」
「まぁ、それもそうですね。おすすめの盾、あります?」
「これなんかどうじゃ?」
クリスタルの盾 製作費:5800マナ
【見た目の割に軽い、クリスタルを多く使った盾。
ごくまれに回復、補助以外の魔法を相手に跳ね返す】
ライトクリスタル:0/8 ブルーエレメントの氷柱:0/4
ブリジンバードのトサカ:0/2
「……」
見た目よりも効果よりも『軽い』と言う言葉に惹かれてしまう俺がいる……
「と言っても、ライトクリスタルの量は多いし……
ブリジンバードのトサカが若干レアな素材での」
「そうそう、ウチも法螺貝作る時苦労したなぁ。
全然落とさないからオール覚悟でポコパンしてたわ~」
ディアナが言う。
「それにしても……」
俺の剣と鎧、ポラリスの弓と服、ディアナの大剣を見て……
「証装備ばかりじゃな、お主ら……どんな運のよさなんじゃ……?」
「あ、あはは……」
笑ってごまかしている間に、ポラリスが一言。
「攻撃力、付加能力的に言えば、ディグさんの武具の方が優秀ですね。
例えばこの、ヨイチの弓とか。……素材が圧倒的に足りませんけど」
ヨイチの弓 製作費:19500マナ
【伝説の弓使いが使っていたとされる弓を、現代によみがえらせたもの。
器用さが10上がり、クールタイムを30%カットする】
地獄武者の錆び刀:0/4 だいまどうエビの殻:0/8
ドラゴンの皮:0/8 光食らいの鉱石:0/2
「だいまどうエビの殻なら、ウチのが4個余ってるよ。
にしてもオシャンな弓。ウチも弓使いたくなっちゃうなぁ」
「まぁ、それ以外の素材も圧倒的に足りないし、大丈夫。
それに、ただでもらうのは悪いしね。一応フレンドと言っても他人だし」
遠慮するポラリス。
「じゃあ、ギルドを作って素材を共有したらいいんじゃない?」
「え?」
「ほら、タイちゃんもポラっちゃんも前回イベントランク5位だったし、
ギルド作るとなったらきっと入りたい人って多いと思うよ?」
ギルド……
「つっても、入りたい奴なんか本当にいるか?俺まだまだ初心者だぞ。
たまたま噛み合って上位陣に食い込めただけで」
と、後頭部に手を添えていると……
「「……」」
「……あの、某チワワのCMみたいに目で訴えるのやめてくれないか。アレンはわからんが」
エルとアレンが、こちらをまっすぐ見つめる。
「ギルド……確かにいいかもね。ボクもそういうのに憧れてるし。
今日はイベント後と言うのもあって、ギルドを始めたいって人多いらしいしね」
端末で掲示板を見ながら話すポラリス。
「そうじゃな……ギルド内で素材を提携すれば、集めやすいじゃろう。
それによってワシの商売もウハウハじゃ」
~サファイア先生の ワールドオーダーオンライン講座~
『ギルド』は、レベル20以上のプレイヤーが誰でも作ることが出来る、
グループ活動の事を指します。
すでにこのワールドオーダーオンラインには、
『ダークリゾルブ』『鋼の心』『黒き悪魔たち』
この3大ギルドのほかに、大小様々なギルドが存在しています。
ギルドを作るには『ギルドリーダー』を決定し、
次にギルドの本拠地となる『ギルドホーム』を決定すればOK!
……簡単でしょう?
ギルドを結成することで、モンスターの素材は共有で使えるようになり、
『ギルドホーム』に戻ることで、いつでもHPとSPを回復できる、
ギルドグループで情報を共有できる『ギルドメッセージ』が使用可能。
ギルド参加型イベントに参加できる。と、至れり尽くせりです!
――――――――――――――――――――――――――――――――
そうと決まれば善は急げだ。
俺たちは5人で散開し、ギルドホーム探しを始めた。
すでにいくつかのギルドホーム候補の家は購入されていたり、
購入に10万以上の金額がかかったりと、なかなか難航した。
1時間後……
「ん?」
俺は、とある空き家を見つけた。
その家の中に入ってみる。
「お、お邪魔しま~す」
その家の中は、思っていた以上に手入れが行き届いていた。
2階建てで1階は囲んで座れる長いテーブルが。
2階には丸いテーブルと、保管庫のような箱がいくつかある。
「ここ、いいんじゃねぇか?」
念のため確認してみる。
「……40人も収容できるのかよ。すげぇな……」
正直過剰すぎる気がしなくもないが、これだけ入れるとなると何かと便利。
購入額は……40000マナ。
「……ディアナとかいくら持ってんだ……?」
俺は5000マナしか持っていない。他の仲間がいくら持っているか……
とりあえず俺は、全員に伝えてみた。
フレンドワープで、残りの仲間が集まってくる。
「おぉ~、いい家だね!」
「す、すごい……わたしなんて、何にも見つからなかったのに……」
「僕が選ぶ家より、よっぽど素晴らしいですね」
「こりゃバイブスアゲアゲだわ~!」
好感触だ。
「で、この家おいくらなのかな?」
「40000マナだ。俺は5000マナしか持ってなくてな……
みんないくら持ってるんだ?」
と、言うと……
左から頭を抱える。オドオドする。左右を見回す。
「いや、ウチMIMだし……」
MIM……無一文か。
「なるほどな……」
「マジか……」
俺は床に手をつき、派手に落ち込んだ。
「ま、まぁ、お金はいらない武具とか売るとしてさ、ギルドの名前どうすんの?」
ディアナの言葉に、俺ははっとした。
「名前……か。どうする?」
「そ、そうですね……皆さんの意見を、集めるのはどうでしょう?」
「それがいいね。勝手に決めるよりはよほど合理的だ」
と、言うことで全員に、名前を伏せて書いてもらった。
タイガーズ
偉大なるタイガさんを筆頭とした力強いプレイヤーたち
MKMS
つっよいひとたち
ボクら団
「……」
やっべぇ。
並べると俺が単純にダサいしサブい……
「えっと……とりあえず、ボクら団はポラリスだな。これは間違いない。
で、つっよいひとたちは多分エルだろう。消去法で。
……そこの二人。どういうことだ」
偉大なるタイガさんを筆頭とした力強いプレイヤーたち=アレン
「だ、だって、タイガさんがリーダーになるならなるべくヨイショした方がと」
「ヨイショって言ってしまってるし!」
MKMS=ディアナ
「え~?{マジカッケーマジサイキョー}っていうよりこっちの方がよくない?」
「お前はどこかのロックボーカルか!?」
まぁ、ギルドの名前は最悪、資金集め後でもいいだろう。
……そしてもう俺がギルドリーダーって決まってるんだな……
なんとかギルド結成。
しかしこのメンバー、揃いも揃ってネーミングセンス皆無です(笑)




