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プレアデス解放物語  作者: yutaka
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第2話 ニセの力と真の力

王族の家系に生まれると、民を支配する手口を徹底的に叩き込まれる。


オレは、幼い頃からこんなものを、イヤというほど学ばされてきた…


教育係「皇子。今日の授業はゴイムを上手に騙すテクです。たくさん勉強していただかないと、私は王様からクビにされてしまいます」


オルワン「そんなものが、本当に勉強だとでもいうのか?」


教育係「私は王様のご命令に従うだけございます。私にも女房子供がいるのです… この仕事を続けるしか無いのです…」


オルワン「アンタは、自分の子供にはどんな教育をしているのだ? 父ちゃんのように立派な男になれと、本当に胸を張って言えるのか?」


教育係「それは…」


オルワン「生きるために計算高く振る舞い、本音を隠し、権力者に媚を売って生きながらえる父ちゃんのようになれとでも教えているのか?」


教育係「……」


オルワン「子供は親の背中を見て育つ! 子供に見せるべき姿は、父親の誇り高き生きザマなのだ!

どんな強い相手にも屈しない強い父親のカッコイイ姿を見せてあげようとは、思わんのか?」


教育係「………」


オルワン「子供が憧れるような、最高の父親になるつもりはないのか?

自慢の父親になるつもりはないのか? どうなんだ?!」


教育係「無理を言わないで下さい… 私は… 皇子のように強くはないのです… 弱い者の気持ちも、少しは分かって下さい…」


オルワン「オレは、その弱い者でも安心して暮らせる社会にしたいのだ! だからもう心配しなくてもいい… オレがプレアデスを解放したら、もう何にも怯えずに安心して暮らせる社会にするから」


教育係「はい… 皇子が王位継承したら、その様な社会にして下さい…」


オルワン「いや、王が死ぬのを待っていては、あと何十年掛かるか分からない。民は今すぐ救済が必要なほど困っているのだ。もう時間の猶予は無い…」


ーーーーーーーーーー


オルワン「やぁトム! 王宮の中にも、オレのシンパがかなり増えてきた。そっちはどうだ?」


トム「俺が調査した限りでは、お前の人気は凄まじい。もしもお前がクーデターを起こせば、民の大部分はお前を全面的に支持するはずだ」


オルワン「そうか。だが、王族にも最後のチャンスを与えようと思う。自らの自浄能力を発揮して、自主的に王室を解散させるチャンスをな!」


ーーーーーーーーーー


オレは皇子の権限を使って、王族会議を緊急発議した。


オルワン「あなた方に最後のチャンスを与えよう! 王室解散か、否か!」


王「バカなことを言うな! 王室制を放棄してたまるか!」


お后「そうよ! そんなことは断じて許しません!」


第二皇子「兄上! 何言ってんだよ! やっぱり次の王に相応しいのは僕だな」


オルワン「父上! 今、王の座を退けば勇退で済む。民から吊るし上げられ、恥をかく前に潔く権力を退くことをオススメする!」


王「お前は何を言ってるのだ! ええい!不愉快だ! こんな会議はもう終わりだ!」


王族たち「そうだ、そうだ!」


王族たちは、ハラを立てて全員会議室を出て行ってしまった。


やはりダメだったか…


オレは、ヤツラにとって最善の道を提示しただけなのだが…


あくまでも、平和的な方法を選んだだけなのだが…


ーーーーーーーーーー


オルワン「トム! ニーナ! 王族たちとの交渉は決裂した! いよいよ行動を起こす時が来た!

明日の早朝だ! 宜しく頼む!」


トム「よし! 分かった! 任せとけ!」


ニーナ「うん! 了解したわ!」


翌朝…


トムやニーナたちが、夜通し駆け回ってクーデター計画のことを民たちに知らせたお陰で、オレを支持する大群衆が王宮を取り囲んでいた。


オルワン「トム! ニーナ! 物凄い人数が集まったものだな!」


ニーナ「長い王族の歴史の中でも、かつてあなたほど民から愛された者はいないわ。この人数が、それを証明しているわね。でも、まだ到着していない人も多いから、この後も続々と集まって来るはずよ」


オルワン「そうか! それは心強い! では行こう!」


……………………


オルワン「王族たちに告ぐ! ただちに王室を解散し、権力の座から退くことを要求する!」


王「バカなことを言うな! この裏切り者め! ええい! もうお前は息子でも皇子でもない! 殺れ!」


王は、王国軍に命令をして、オレや群衆を全員殺すように命じた。


オルワン「勇敢なる王国軍の兵士たちよ! 見ての通り、オレたちは丸腰だ! ナイフ1本持ってはいない! オレたちに戦う意志は無い! オレたちは今、プレアデスのために行動を起こしている。王族たちは権力の維持と、自己保身のために群衆を殺そうとしている。よく考えてみるがいい! プレアデスのためになるのは、どっちなのかをな!」


兵士たち「ガヤガヤ… どうしよう… 皇子は、ああ言っておられるが…」


兵士たちは、戸惑っていた…


オルワン「兵士たちよ! プレアデスは、王族の所有物ではない! 一つの家系による、独占など認めてはならない! プレアデスは全ての人たちにとっての共有財産でなければならない! オレは約束をする! プレアデスを永遠に権力から解放することを! 誰もが安心して、自由に、平和に、そして豊かに暮らせる社会を作ることを! もう誰一人飢えや貧困で苦しむ人のいない世界を作ることを!」


兵士たち「ザワザワ……………」


オルワン「全ての人が、安心して暮らせる世界を作る。 全ての人が、お腹いっぱい食べられる世界を作る。 全ての人が、笑顔で暮らせる世界を作る。誰一人寂しい思いをしなくても済む世界を作る。 誰一人、置いてきぼりにしない優しい社会を作る! それには皆さんのような勇敢なる人たちの力が必要なのです。どうか、その力を民のために使って下さい! 弱い人たちのために使って下さい! 苦しんでいる人たちのために使って下さい! 困っている人たちのために使って下さい。 愛する者のために使って下さい!」


ガチャッ… ドサッ…


兵士たちは、一人、また一人と次々と手にしていた武器を地面に下ろし始めた。


兵士たち「分かりました! 我々は皇子を支持いたします! プレアデスの未来を皇子にかけてみます!」


王「ええい! お前ら! 何をしている! さっさとソイツらを殺ってしまえ!」


そこで、トムが王に向けて叫んだ。


トム「オイ! 王よ!!! お前まだ分からんのか! 王国軍の陰に隠れながら吠えてる卑怯者のアンタと、丸腰で、しかも最前線で軍と対峙し、民の盾になり、背中で守っているオルワンとの格の違いを! さっさと白旗を上げろや! みっともねーだけだぜ!」


オルワン「トム… ありがとう…」


トム「しかし… オルワン… お前は、いったい誰に似たんだ? ハハハ…」


オルワン「さあ? オレにも分からん ハハハ…」


ニーナ「ウフフ…」


それまで黙って聞いていた王国軍のトップが口を開いた。


王国軍最高司令官「王様! 皇子たちの言う通りです。プレアデスのためになるのは、あなたではなくて、皇子の方です。我々王国軍は、もうあなた方には従いません。皇子を全面的に支持することを、ここに宣言いたします!」


群衆「おおおおおお!!!」


群衆から、うなりのような大歓声が起きた!


群衆「皇子が勝った!!!」


「皇子の完全勝利だ!!!」


「我々の希望、オルワン皇子の大勝利だ!!!」


そして、割れんばかりの皇子コールがわき起こった。


「皇子! 皇子! 皇子!……」


見ると、兵士たちの方も、誰に命令されるでもなく、自ら銃を手に取り、なんと!王に向けて構えていた。


王「や、やめろ! 撃つな! ワシはまだ死にたくない! 頼む! 助けてくれ〜!」


オルワン「王族たちよ! これでお分かりのはずだ! 今すぐ降伏しなさい! そうすればオレが、あなた方の身の安全の保証をすることを約束する!」


ーーーーーーーーーー


権力とは、従う者がいなくなった時に無効と化す薄っぺらな力。


故に、真の力とはなり得ない。


真の力とは、失われる事も、損なわれる事もないものなのだから。


権力とは、搾取を正当化するための屁理屈。


肩書きとは、無能さを隠すための装飾


暴力とは、怯える者の武器。


失われる事の無い真の力とは、仲間への愛、信じぬく信念、従わない勇気、屈しない強さ、諦めない強靭な精神力。


オルワンは、これを行動で証明した。


ニセの力と、真の力では、最初から勝負は決まっていたのだった。


オルワン皇子の圧勝劇は、こうして幕を閉じた。


誰一人、傷付けることもなく。


誰一人、血を流すこともなく。


オルワンは、仲間への全体愛は、権力よりも強いことを証明した。


非暴力は、軍事力よりも強いことを証明した。


この日より、オルワンは伝説の英雄として、未来永劫語り継がれるようになった。


そして、プレアデスが精神文明へと舵を切り変えたのは、この時からだった。




つづく…



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