第1話 序章
小説【プレアデス解放物語】第1章
教育係「皇子! 起きて下さい! お勉強のお時間です。さあ早く起きて!」
皇子「オレは勉強などに興味は無い…」
教育係「あなたは立派な父上の後を継ぎ、王様にならなくてはいけないのです! そのためのお勉強を今のうちにみっちりやっておかなければなりません。さあ早く起きなさい!」
皇子「……」
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オレはプレアデス第一皇子。
名はオルワンという。
物心ついた頃から、王になるためのお勉強とやらを、毎日やらされている。
皇子とは名ばかりで、実質的には大した権限などありはしない。
王宮に閉じ込められ、四六時中教育係に監視される息苦しい毎日を過ごしている。
オレは、王になどなりたくはない!。
オレが欲しいのは自由だ…
そして、権力の無い世界…
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オレが得意なのは勉強ではなく脱獄。
愚鈍な教育係の隙をつき、よく王宮を抜け出している。
オルワン「やあ! トム」
トム「お前は、また王宮を抜け出してきたのか?」
オルワン「うん(笑) オレにとってあそこは王宮ではない。牢獄なのだ」
トム「しかし、お前ほど皇子らしくない皇子も珍しいよなぁ。ハハハ(笑)」
オルワン「うむ。オレもそう思うよ。ハハハ(笑)」
オレが気を許している友達の1人が、このトムという男だ。
身分など気にせずに、オレを対等な友達として扱ってくれる稀な存在。
オルワン「オレは序列も搾取も無い、愛と自由と優しさに満ち溢れる世界を作りたい。だから例の計画は頼んだぞ。トム」
トム「おう! 任せとけ!」
トムは反権力活動をしているグループのリーダー。
反骨精神の塊のような男だ。
オレは彼らと組み、密かにクーデターを計画している。
プレアデスに必要なのは支配者ではない。
支配者のいない世界なのだから。
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だが、それと並行して王族たちの説得も行っている。
平和を好むオレは、荒っぽいことは極力したくはないからだ。
彼らに王室を解散させ、万民平等社会にするように提案をしている。
オルワン「父上! 王室を解散して民を解放してあげてほしい。今のような圧政では彼らは生きるのがやっとなのだ。」
王「バカを言うな! そんなこと出来るか!」
オルワン「民を犠牲にする制度では、いつか全てを失う。そのことが分からないのか! 力による支配では弱者が犠牲になるだけなのだ」
王「力こそ全てだ! 力のある者が全てを支配する。」
オルワン「それは断じて違う! 力ではなく、愛が支配する社会にするだけで誰1人犠牲にしない世界を作れるのだ! 愛とは、普遍的なものなのだから!」
王「お前は何も分かっていないようだな! たくさん勉強して王位継承までに考えを改めておきなさい」
オルワン「オレはオレだ! 王になるつもりなんてない、オレはオレ以外の何者にもなるつもりはないんだよ!」
王「もうよい! 下がれ!」
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やっぱり何も通じやしない…
オルワン「母上! 王室を解散して民を解放してあげよう!」
母上「何をおかしなことを言っているの? 民は王族のために存在している下僕なのよ」
コイツもダメか…
オルワン「弟よ! お前はどうだ? 自由で平和で誰もが安心して暮らせる世界にするつもりはないか?」
弟「民なんてどうでもいいじゃん。僕達さえよければ、それでいいんだよ」
ダメだ…
コイツらは、自分のことしか考えていない…
その自己中さが、諸悪の根源だというのに…
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オレには親たちが勝手に決めた許嫁がいるが、オレが愛しているのはニーナという女性だ。
ニーナは女性ながらも、皇子専門の護衛団の団長をしている逞しい女性だ。
公務などで外出する時は、いつもオレの護衛をしてくれる。
オルワン「ニーナ!」
ニーナ「オルワン! 出掛けるの?」
オルワン「いや。君に会いに来ただけだよ」
ニーナ「うれしいわ!」
オルワン「君にも話してあるように、オレはレジスタンスたちと組んでクーデターを起こす。」
ニーナ「分かったわ。私は何があっても皇子をお守りするだけよ」
オルワン「ありがとう。ニーナ! 決行の日が決まったら知らせる」
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トム「ようオルワン! 王族たちの説得はどうなった?」
オルワン「ダメだ… アイツらは聞く耳を持たない。やっぱりクーデターしか方法が無いようだ」
トム「そうか… 分かった。オレたちはいつでもOKだぜ」
そこへ、数十人の民がこちらへ近寄って来た。
民「皇子様… 我々下々の者は、生きていくのが、やっとでございます… もうこれ以上の年貢を納める事は出来ません……」
オルワン「申し訳ございません… 全て我々王族のせいです…」
民「いえ… 皇子様を責めているわけでは…」
オルワン「トム! スマないが、また手伝ってくれ!」
トム「ああ! 分かってる。 またいつものアレだろ?」
オルワン「皆さんは、ここで待っていて下さい!」
皇子は、民にそう告げると王宮に戻って行った。
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貯蔵庫係り「皇子! またですか?」
オルワン「うむ! また取りに来た」
オレは以前から、王族が民から奪った年貢を、コッソリ民にお返ししていた。
貯蔵庫係り「こんなことを続けていたら、いつかバレますぞ」
オルワン「もしも、王族の連中にバレたら、皇子の命令でやったと言いなさい… 脅されて断り切れなかったとね…」
貯蔵庫「いえ、私の事ではなくて、皇子のことが心配です」
皇子「ありがとう! だが正しいことをして殺されるのは恥ではない。 自己保身のために不正を見てみぬフリしたり、不正をする者に加担する行為が恥なのだ」
貯蔵庫係り「分かりました… 私は陰ながら皇子のファンです。私も可能な限り、協力させていただきます」
…………………………
オルワン「皆さん! お待たせしました! 全員に行き渡るほど持って来たので、これを皆さんで分けて下さい。そして、ここにいない人にも配ってあげて下さい」
民たち「こんなにたくさん? いつもすみません… 私たちは皇子様のお陰で生きながらえる事が出来ます…」
オルワン「いえ、王族のせいで皆さんは生きるのがやっとの生活を強いられているだけなのです。これは全て、王族が皆さんから奪った物です。遠慮なくお持ち下さい」
民たち「いつも、ありがとうございます」
オルワン「私がプレアデスを解放するまで、どうか命をつないでいて下さい」
つづく…