表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEVEN TRIGGER  作者: 匿名BB
神々に魅入られし淑女《タイムレス ラヴ》
259/361

真意の嬌飾《リアマスク》1

明けましておめでとうございます(激遅)

遅くなり大変申し訳ございません……

ここから六章二部となります。


このような大変なご時世の中、私のような作品を見ていただき有難う御座います。

皆様方に少しでも楽しんでいただければ幸いです……

「グハッ!」


 陽だまりの空の下。

 無様な悲鳴と共に投げ出される身体。

 取り落した真剣が砂利の上で金音を立てる。


「ふぅ……そろそろ一息付けよう」


 鯉口に収めた刃鳴りのような声。

 地に這いつくばったまま真紅の瞳で見上げた先、弓のように巨大な野太刀を腰にぶら下げていた竜は、瞬きと同時にその蒼い瞳を黒く染める。


「待て()()、決着がつくまでとさっき言ったじゃないか!」


 俺は口に付いた血と砂を拭いつつ叫ぶ。

 高ぶる感情に呼応するように、真紅の瞳がさらに深紅へと染まっていく。


「そう言ってこれで何度目だと思っている?十三回だ。君がそうして這いつくばっているのを見るのは」


 呆れたように吐息を挟み、懇願する(弟子)へと竜は背を向けた。

 孤島で救われたあの日から数年。

 俺はこの竜と名乗る少女とずっと旅をしていた。

 その目的はもちろん家族を二度も奪ったあの鬼を見つけ出し、復讐をするため。

 竜とも因縁があるらしく、満身創痍だった俺を見つけたのも奴を追っている過程でとのことらしい。

 真っ赤に染まったこの血眼(ちまなこ)も、あの時、俺を救うために竜が授けてくれた『悪魔の紅い瞳(レッドデーモンアイ)』という魔眼だ。

 世界に七つあるという黙示録の瞳(アポカリプスアイ)。竜の持つ『蒼き月の瞳(ブルームーンアイ)』と同じこの瞳は、使用者に無尽蔵な力と不老を授けてくれる。

 例えそれが、使用者の肉体を蝕み破滅へ追い込むものだとしても、魔眼というものは望んだ力をそのまま顕在化してしまうものらしい。

 そうならないためにも、毎日こうして魔眼の扱いやその戦い方について、(師匠)(弟子)に稽古をつけているのだが……何千何万と戦ってただの一度も勝てた試しがない。

 技術、力、情報、経験、何一つとっても劣っている俺が竜に勝てるはずもないことは、自分自身が一番よく理解しているつもりだが、だからといって納得できるわけではない。

 ……悔しい。

 ギシッと歯噛みした犬歯が音を立てる。

 太陽が昇るのことが常識であるように、俺は出会ってからずっと、這いつくばって(こうして)師匠を見上げていることが当たり前となっていた。


「だからこそ次は────」


「ダメだ」


 俺の考えを見透かしたような────いや、()()()()()()()()()()師匠は、珍しく語彙を強めた。

 怒っている。

 たった数文字の、それも見た目こそ幼年の少女の言葉に、俺の身体が畏怖や恐懼(きょうく))といった感情で強張った。

 躾けられた犬のように、それだけでこの人に抵抗できなくなってしまう。


「色がいつもより濃くなっている。瞳に力が入り過ぎている証拠だ。全く、その力を感情のみでコントロールするなと、十一年六か月二十七日前からずっと言ってるじゃないか」


「そんなことは分かってる……分かってるけどよ……っ」


 何度やっても勝てない自分が、果たして前に進めているのか実感が持てない。

 こんなとこで(くすぶ)っていて本当に奴に勝つことができるのか。


「大丈夫、君は私が思っていた以上の速度で成長している。それに……もうその身体は時間という概念から外れたものだ。そのことを気にする必要はないよ」


 瞳に込められていた力が、それを聞いて静かに抜け落ちていく。

 血赤で塗りつぶしたような色が元の黒へと戻っていった。


「さぁ、ご飯にしよう。今月は君が当番だろ」


 着ていたセーラー服のスカートを靡かせ、振り返った少女は微笑んだ。

 決して大きいとは言えないその華奢な体躯からは、さっき見せた凄まじい怒気はすっかり霧散していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ