レズとBL好きな女子高生
月曜日の朝。それは日本人なら誰もが嫌がる日だろう。だが今の少女には何も苦ではない。なぜならーー
『フたば、おはヨぅ』
人の声が加工されたアラームが少女の耳へ入り、脳に衝撃を与える。
「おはよう! 凛ちゃん!」
少女はいつも通り天使の甘い声に釣られる様に起きた。このアラームは夜空 凛という友人の声を一言ずつ丁寧に切り取って作ったものだ。
ベットから出て軽い食事をして最低限の身支度を済ませたらすぐ家を出た。
高校に入学してまだ間もない5月中旬、友達との距離も掴み始める頃ーー少女は学校の真反対に走っていた。
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少女こと矢崎 双葉はレズビアンだ。キッカケは凛という少女に一目惚れしたこと。たまたま男性に向けるカッコイイの対象が女性だっただけの話。
今の双葉には目標がある。いつも「あんた」としか呼ばない凛に「双葉」と呼んでもらうことだ。
双葉は予定通り目的地へと到着する。時刻はジャスト8時。
するとその家のドアが開く。中からは綺麗な黒髪ロングをぶら下げ、まるで二日酔いでもした様な表情をしている少女が出てくる、この少女が凛だ。
「おはよう! 凛ちゃん!」
今朝の寝起きの声より何倍もハリのある声で挨拶をする双葉。それを気怠そうな凛はーー
「ん」
戦友との何十年ぶりかの再会はこれで十分と言わんばかりな一言。それにも慣れているのか、双葉は笑顔で凛の手を引く。
「あれ? 先週薬指にあげた約束の指輪は?」
凛は双葉の発言に若干の頬を引きつりながら言う。
「約束の指輪とか重いな……あれなら家に置いてきた」
「ひどい凛ちゃん! 私との約束以外に大事なものがあるの!?」
あまりの衝撃に驚きを隠せない双葉。しかし凛の答えは早かった。
「校則」
「でっすよね〜! 流石は凛ちゃん!」
ポンッと判子を押す様に納得する双葉。
「あんたも今付けてる指輪家に置いてきな、どうせ家の前通るんだし」
何気なく双葉のことを気にかける凛。
「好き……」
凛の優しさに反射的に答えてしまった。
「ん? 何か言った?」
「え!? な、なんでもないよ!」
反射的に出た爆弾発言により赤面しながら黙ってしまう双葉。そんな双葉を横目に凛はいつも思っている質問をする。
「ねぇ、なんで毎朝学校とは真反対のウチの家来るの?」
双葉と凛は高校で出会った仲なので凛の疑問も当たり前だった。しかし双葉はこの今更すぎる質問を呼吸をするように答える。
「幸せになろうね……」
何を今更、当たり前なことに頬を赤く染めながらながら答える。言葉足らずの双葉に呆れるように凛も口を開く。
「語彙力が……はぁ、あんたが思ってるようなことは出来ないよ、女同士だし」
「じゃあ総理大臣になるって法律変える!」
「小学生か! あ、どうせなら男同士も結婚出来るようによろしく」
「うん! わかっ……え?」
凛の衝撃発言に急停止する双葉。
「ん? 話してなかったっけ?ウチBL好きなんだよね」
「ダメだよ凛ちゃん! 男同士の愛はドロドロだよっ! 見ちゃいけません! メッ!!」
生まれたての子鹿のように足を震わせながら全否定する双葉。
「あ、そうそう、あんたの左の席の高橋いるじゃん」
「え? う、うん」
「高橋、あんたの右の席の田中の事ずっと見てるよ」
「ぎゃぁぁぁあ! ホモに挟まれたぁぁぁあ!!」
全身が鳥肌に襲われている双葉。
「き、気持ち悪い……」
「大ブーメランだからな? このレズっ子め」
間髪入れずにツッコム凛。
「で、でも……」
「でも?」
ここまで言われてまだ言うか、と感心までする凛。
「でも……右の席の田中くんずっと私の前の席の林くん見てるし……林くんは……」
「は、林くんは……?」
BL好きな凛は堪らないという面持ちでニヤニヤしている。
「林くんは左腕に付けてる腕時計と見せかけた鏡でずっと高橋くん見てる!!」
「とんでもないカミングアウトで三角関係来たぁぁぁぁぁぁあ!!!」
吐き気を催してる双葉をよそに凛は今日一番の元気な声で叫んだ。
「すごいじゃん双葉! 男同士の熱い友情に囲まれるなんて! 羨ましいなぁー!!」
「もうやめてよ凛ちゃん……はぁ、席変えたいなぁ」
さすがに双葉を気の毒に思ったのか凛は1つ提案を出してきた。
「先生に一部席変えられないか聞いてあげるよ、目が悪い人とかは変えられるでしょ?」
凛の提案に感動を覚える双葉。しかし疑問が1つあった。
「凛ちゃん? なんでそんなに息荒くしてヨダレ垂らしてるの?」
「これは双葉の為これは双葉の為これは双葉の為ーー」
「り、凛ちゃん?」
「双葉! 今すぐ学校へ走って! 先生の元へ! ウチと双葉の席を交換してって伝えに行くよ! 言わなきゃ伝わらない事もあるよ双葉!」
我慢の限界とばかりに全力で走り出す凛。それを必死に止めるように後を追いかけ叫ぶ。
「待って凛ちゃーん!せめて……せめてBLネタ以外で私の名前を呼んでぇー!!」
少女たちは走り出す。まだ見ぬ光を目指して。
初めて小説を書いた初心者です。まだまだ至らぬ点が多すぎると思いますがよろしくお願いします。