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何れ…食う?!

異世界トリップした場所が処刑場…だなんて、やっぱり私は運を持っていないな。


溜息をつきながら、顔を上げた先の竜を見た。


処刑場…ということは、この竜は処刑される為にここにいるんだ。

でもいったい何をしたんだろう。


そんな私の視線の意味を感じ取ったのだろうか、竜は面白そうに眼を細め、私を見ていたが、おもむろに槍が刺さっていた前足をペロリと舐めると

《俺は…兄を殺した犯人だそうだ。》


えっ…兄を殺した?



でも、なぜ(…だそうだ。)なんて他人事のような…そんな言い方をこの竜はするのだろう。


《どう言う意味だと思う?》


「わからないわ。私はこの世界を、そしてあなたという竜の性質も知らないから…正直わからないわ。でも、聞いたわよ。」


《なにをだ。》


「今までに、この世界に来た4人の女性が竜に食べられたって。」


そう言った私を竜は、一瞬だけだったけど、キョトンとして

《あぁ…そういう事か》


と言うと、人間のようにクスリと笑い


《確かに…歴代の王に食われたな。》


本当だったんだ。


震えそうな体を、両手で抱きしめた私に竜は続けて言った。

《俺の母もそうだった。》


えっ?


《俺の母も異世界からやって来て、父に食われ…俺を産んだんだ。》


食った…というのは、それって…あの…あれだ。男性が女性を…と思ったその時だ、眩しい光と共に、竜巻のような風が吹き、私は洞窟の奥へと吹き飛ばされ、光の中から、泣きそうな顔で自称幸運の女神が


「千愛姫ちゃん!!どこ?!」

と叫びながら現れた。


ぁ…ああっ…自称幸運の女神!


でも私が返事をする前に竜が、驚いたように先に声を上げた。

《リリアーヌ?》


自称幸運の女神は、ポカンとした顔で竜を見ると

「…エリック坊や?!」



エリック…ぼ、坊や?!って、まさか…?


自称幸運の女神の視線の先には…


えっ、この竜が…


この竜がエリック坊や?プッ…


でも出てくる笑いは、一瞬にして止まった。


《…それはやめろ。》

低い声は、地響きが聞こえるかのようで、思わず口を抑えた私だったけど、あの自称幸運の女神は、さすが強心臓だった。


というより、全然相手の話を聞いていないのか


「もう、1000年振り会ったのに、冷たいわよ!」


《…2000年だ。親父が死ぬ前だったからな。》


「……もう、そんなになる?」


《あぁ、母が亡くなり、すっかり老けこんだ親父が、リリアーヌが来ることだけが楽しみしていたのに、突然…リリアーヌが来なくなって、親父は寂しがっていた。なぜ、急にこの世界に来なくなったんだ。》


あの少しおちゃらけの女神が、視線を下に向け

「…聞いたの。他の女神達が…話しているのを聞いたの。私のスクラッチで、この世界にトリップした、黒髪で黒い瞳の女性達は…この国の竜に食べられた事を。


世界に干渉してはいけないんだけど…でも信じられなくて…聞いたの。そうしたら…エリック坊やのお父さんは言ったわ。


《守ってくれと言われていたのに、すまない、どうにも我慢ならず…食った。あいつが隠れて泣いていたのを知っていたのに…俺は…。もっと大事にしてやれば良かったと後悔している。》って…。私の力が…幸運を引き寄せる力が…弱かったからだと、わかっていたんだけど、もう、この世界に来るのが辛くて…。」


《なるほど、そう言う事か。》


竜の言葉をどうとったのか、自称幸運の女神は、鼻をすすると

「…すべては私の力不足だから。」


そう言って微笑むと

「それより、エリック坊やは、なんでこんなところにいるの?ここって、戸惑いの森の処刑場じゃない?こんなところにいたら、罪人だと思われるわよ。」


《…もう、そう思われている。》


「はぁ~?!」


《ロードを殺したと…》


「ロードって…一番上のお兄ちゃんじゃない?エリック坊やが殺したと思われているの?」


《あぁ、そうだ。》


「エリック坊やはそんな子じゃないことは、この私が一番知っているわ!」


そう言って、自称幸運の女神は何度も、頷きながら

「でも…良かったわ。封印の槍で、竜としての力を抑えられてしまっていたら、危なかったわね。」


《封印の槍は、見事に俺の右手に刺さった。》


「ええっ?!でも、あの槍は異世界から来た女性にしか…抜けな…い。…あぁ!!千愛姫ちゃん!千愛姫ちゃんはどこ!ぁああ…まさか、まさか…食べちゃった?」


竜は自称幸運の女神から、洞窟の奥に座りこんでいる私へと視線を移した。



私を見る竜の瞳孔が細くなり

《いや…まだだ。でも何れ…あの女は食う。》



ええっ?!…じょ、じょ、冗談だよね。


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