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作者: YUMA

それは 突然 現れた・・・そして始まったんだ・・・・


いつものように平凡な朝だった

「また寝坊だ!~」 ヒロシは あわてて ベッドから飛び起き、速攻で着替えると

朝食の菓子パンをつかむと 家を飛び出した。

俺は 《葉山 ヒロシ》 ごくごく平凡な 高校2年生だ

「またコロッケパンかよ~ これで4日連続だぞ・・・」

「母さんは バリエーションってもんが わからんのかな・・・」

ブツブツとぼやきながら いつもの高校への通学路を早足で歩いていると

「おはよう!」と明るい声で 背中を叩かれた これも 毎度のこと・・・

「おうミハルか・・・おは!」

「また コロッケパン?! 良く飽きないね~」

「こいつが 好きなの!!」

本当はズボラな母のせいだが、説明するのも面倒で 俺は 心にも無いことを 答えてしまった

こいつは 《佐藤 ミハル》 近所に住んでる 小学校時代からの 幼なじみのクラスメートだ

未だ 世間でいう 恋人 などでは無いが 友人以上恋人未満 って間柄 だろうか・・・・

「そうそう 昨日の晩から テレビで話題になってる 謎の雲 の話 知ってる?」

「なんだよ! 謎の雲 って」

「え~ 知らないの ヒロシ!! 結構 ニュースで取り上げられてたのに! おくれてる~ 」

「ウルサイ! 俺は ニュース番組は見ないの!!」

というか 好きなスポーツ番組やお笑い番組以外 テレビ自体 あまり見ないのだが・・・・

「で なんなんだよ その 謎の雲って!!」

「なんだか 世界のアチコチで 現れてるらしくて 色々な大きさがあるらしいけど 丸い雲で

不自然な色で 急に現れて その場所で動かないで 徐々に大きくなってるんだって・・・」

「ふ~ん 気持ち悪いな  ちなみに あんな感じか??」

少し前から 気になっていたのだが 我々の目指す高校の ちょうど 上空に 気になる雲が浮かんでいたのだ

朝から曇り空だったので 注意して見ないと分からないのだが 何だか妙に 不自然な雲だった

「え!! 気づかなかった まさに あれだ! テレビで見たのに ソックリ!!」

それは まさに 普通の色では無い色の雲だった  灰色でも無く やや茶色がかった 何とも 例えようの無い 嫌な感じがする雲だった

「ホントに雲かな~ それにしては まったく動かないし・・・しかも雲にしては 低すぎるよな・・・」

「ねぇ 確かに 少しずつ 大きくなってない 少しずつ 降りてきているようにも見えるけど・・・・・」

「わ!! それより マズイ 遅刻だ! 走れ!!」

「何よ! 早く言ってよ もう5分しかないじゃない」

走りに走り 遅刻2分前で滑り込んだ我々は その後 校内にいたこともあり すっかり 雲のことは忘れていたのだが・・・・

そろそろ終業時間という頃だった

まず 窓際の クラスメートが 騒ぎ始めた

「何だか 外が変だ!! 急に暗くなった!」「暗すぎるぞ まったく 外が見えない!!」

授業中にもかかわらず 皆 窓の周りに 殺到した

「まだ夕方の16時だぞ 嘘だろ!」「なんだよ 全く 見えないし 何だ この色は!!」

外はまだ夜でも無いのに 真っ暗だった・・・・いや 黒では無い 見たことも無い 嫌な暗い茶色だった

そう どこかで見たような・・・あの 雲の色だ!  

今になって 朝に見た あの嫌な雲 あの色が 頭に蘇ってきた・・・・

「皆 席に着きなさい! まだ 授業中だぞ! なんなんだ 変な天気だな・・・それになんだこのヒドイ湿気は・・・」

先生が 窓から 身を乗り出し 外の様子を見ようとした その時だった・・・

「わ~~!!!!」

先生の悲鳴が聞こえた・・・・と同時だった  消えた・・・一瞬だった・・・・消えたんだ・・・・・

「きゃ~」女生徒の絶叫! あとは 皆 パニック状態だった

「ねぇ ヒロシ 見た?見た?」 隣の席のミハルだった

「見た・・・消えた・・・」 茫然としていたが その ミハルの声で 俺は 我にかえった

「とにかく 外はやばそうだな・・・絶対 窓際に近づくなよ!」

「わかった・・・・」さすがに気丈なミハルの顔も 心なしか 青ざめて見えた

泣く者、スマホで電話や、情報を求めようとする者で 教室は ザワザワしていたが その後 少しずつ 皆 落ち着き始めたようだった

しかし 次にまた 変なことが 起こり始めた

窓際に近い者 数名が 急に 騒ぎ始めた と言うより 大声で 独り言を言い始めたのだ

「なに? 大事な人? 何 言ってるんだよ !」 「誰だ! 誰が話しかけてる!!」 「YESかNO??」 「なに 言ってるんだ?!」 

何人か 同時にしゃべっているので 聞き取りづらいが 皆 同じようなことを 叫んでいる

そのうち それぞれが 「YES」「NO」と答え始めた。

そして・・・何人かが 急に・・・消えた・・・消えたんだ・・・それこそ霧のように・・・・かき消されるように・・・・・

「いったい 何なんだ!!」 また 教室は 大騒ぎとなった

茫然として 心ここにあらずといった様子の 消えなかった者 数名に 皆が 殺到した

「どうしたんだ?」「何があった?」 質問が それこそ 一斉に その数名に 浴びせられた

ほとんど 皆が 口も聞けない状態だったが なんとか聞き出せたことは

突然 頭の中に 「大事な人 守りたい人 がいるか?」と 問いかけの声が 聞こえたようだ

そして どうやら 消えなかった者は 皆 「YES」 と答えたらしい

「そうか とにかく YESと答えれば 消えないんだな」 得意そうに 一人の男子生徒が言った

ただ そう簡単にはいかなかったんだ・・・・

もはや窓際に近づく者はいなかったが また数名が叫びだした

「聞こえた 声が聞こえたぞ!  YES! YESだ!」 

同じように 声が聞こえたらしい数名が いっせいに「YES! YES!」と叫んでいる

しかし・・・・・そのうちの ほぼ半数? が また かき消されるように 消えてしまった・・・・・・

もう騒ぐ者はいなかった・・・・ 皆 訳が分からない恐怖で ほぼ無言 数名の泣き声だけしか聞こえない・・・・・

「いったい 何なの!?」 ミハルが叫んだ

「訳がわからんが どうやら 嘘の判別まで されてるのかもな」 確信はないが 俺は答えた

「どういうこと?」

「多分 声をかけてくる者には 嘘がわかるんじゃ無いかな? そして嘘をついている者は消される・・・」

「じゃ 消えた人は 大事な人 守りたい人が いない人? そんな人いるのかな!?」

「分からない・・・ミハルはどうだ??」

「え!?」 意表をつかれたのか 黙り込んだミハルは なぜか こんな時なのに 心無しか 赤面しているようだった

そして それは いきなりだった

僕らにも 声が かかったのだ・・・・・

まさに 頭の中に 声が 直接 聞こえてきた 妙に響く少し金属的な声・・・

「大事な人 守りたい人がいるか?  YESかNOで答えよ・・・・」

それまで 自然に 母さんを対象に「YES」と答えるんだろうな と思っていたが

「YES」と答えようとする俺の頭に とっさに 浮かんだのは

横で 同じように 真剣に 問いかけに 答えようとしている ミハルの顔だった

そして 僕らは ほぼ 一緒に「YES!」と答えた・・・・・・・・・・

そして 数秒・・・・・・・・・・僕らは 残った・・・・・・・・・

しばらく 茫然と 意識を失っていたようだ・・・・・・・

気づいた時には 横にいるミハルの他には 40数名いたクラスメートがわずか10数名になっていた

「これから どうなるの?」ほとんど 泣き顔の ミハル・・・・

「分からない こうしていてもしょうがない まずは 学校内の様子を探ろう」

残った10数名を引き連れて 僕らは 教室を出た 校内は異様な静けさだった・・・・・・

どうやら どこのクラスも同じような 状況だったらしい

どこという当てもなかったが さすがに外に出る訳にもいかず 皆が集まれる場所ということで 僕らは無意識に 自然と 体育館に集まった

僕らの高校は3学年で1,200名の生徒がいる かなり大きな高校だったが 残ったのは わずか 先生が4名、生徒が60~70名程度のようだった

「ほんと これから どうなるんだ」 さすがに楽観的な俺も 次第に絶望的な気分になってきた

先生の話によれば 電話は不通、テレビも映らず 全く外部の状況が分からないらしい

またこの先生4名とも いずれも若い教師で 満足な情報も無い上に オロオロするばかりで 何とも頼りにならなそうだ・・・・・

外は 例の 不気味な「雲」に覆われ 僕らの先生だけでなく 雲に触れた者は 一瞬で消えてしまったようだ

外部に助けを求める方法は無し・・・・・

そして 皆 声を出す者も無く 静まった 体育館で それは また 始まったんだ・・・・

おそらく その声は 今度は いっせいに 皆に 話かけてきたようだ

「大事な人を守れ!」・・・・・・・・・・・・・それだけ・・・・だった・・・・・・・・

皆 さすがに 何を言われたのか意味が分からず ポカン としていた

「なに? なんだって!?」ミハルが 泣き顔で聞いてくる

「大事な人を守れ としか 言われなかった・・・」

「私も! 何から? 何から 守るの?! 」絶叫するミハル

「分からないけど・・・・・かなり ヤバイかもしれない」

暗い体育館で 周りに注意していなかったので気づかなかったのだが 体育館は完全な閉鎖空間では無く

四方の下部は 開閉式の窓になっており 換気のため いつも 空いているのだ・・・・

そして 目を凝らして見ると 今まさに その窓から あの雲が 静かに そしてかなりのスピードで 入りつつあった

「逃げよう!」

僕は ミハルの手を引くと とっさに 走り始めた

あては無かったが この場にとどまるのは危険だ ということだけ本能的に理解した

そして皆が 同じように 一斉に逃げ始めた

既に かなりの 勢いで 雲は侵入を始めており、体育館の隅の方にいて 逃げ遅れた生徒は 絶叫とともに 数名が消えていった

僕らは 単純かもしれないが また 教室に戻ることにした

しかし 甘かった

思い出してみれば 教室の窓が ほとんど 空いていたのだった・・・・既に 教室は 雲で 満たされていた

行き場は無かった・・・・

どうやら そこら中から 雲が 侵入したようで 僕らの周りは 廊下のわずかなスペースを除き 既に 雲に囲まれつつある様子だった

「だめか・・・」

ほとんど 諦めかけた その時 僕は 僕らの教室の並びに 理科室があることを ふと 思い出した。

そして 理科室の中には 実験用の 密閉式のかなり大型の容器があることを・・・・・

「行くぞ!」 俺は 再び ミハルの手をひき 走り始めた もう 雲は そこら中に 充満しつつあった

なんとか 理科室に たどりつくと 確かに 片隅に その容器があった

ただ 思った以上に 容器は小さく 何とか 人が1人 入れるかどうかの大きさだった

考えている時間は無い・・・・・・・・理科室に飛び込んだ時に 目に入った 床に転がっていた 酸素ボンベを とっさにつかむと

泣きながら 嫌がる ミハルを半ば 強引に 容器に押し込んだ

「なんで!? ヒロシは! どうするの! 私だけは嫌だよ!」

「聞け! 俺が大事なのは 守りたいのは お前だ! お前だけでも助かってくれ! 」

もう時間が無い・・・・雲は もう 足もとまで ジワリと 這いよってきていた・・・・・

「酸素ボンベを使えば 1日程度は 大丈夫だ! 生きてくれよ! 」

俺は 強引に 容器の強化ガラスの蓋を閉め 下に転がっていた ビニールテープで急いで密封した

ミハルが 容器の中で 泣きながら なにか言っているのが わかる

「なんだ? 」

初めは 分からなかったが 口の動きで 分かった

「私 も あ な た が 大 事 」

こんな時なのに ふと 幸せな気分になり 思わず 笑みが浮かんだ

そして ミハルに 口の動きで 「ア リ ガ ト ウ  サ ヨ ナ ラ」と告げると

嫌な 湿気を 足もとに 直に感じつつ 目をつぶった・・・・・終わりか・・・・・・・

その時だった・・・・・・・・

急に つむった目に 激しい光を感じて 目を空けると 雲?が 白く発光し 足もとをつつんでいた

雲に 今まで 感じていた嫌な感じは無く 不思議とあたたかく 優しい温もりさえ 感じた

そして あの 声が聞こえた

「お前は守り切った・・・・・ ともに生きよ! 」

雲が ゆるやかに 後退しはじめた

あの襲われた時の 荒々しさ 禍々しさは 既に無く それは 引き波のように 緩やかな消え方だった

俺は 何だか 訳がわからないまま 急いで 容器の蓋を開け ミハルを容器から 抱き起こした。

ミハルは 泣きながら気を失っていたようだが すぐに意識を取り戻した

「どうしたの? 私たち 助かったの?」

「うん 訳わからんが・・・・・・どうやら そうらしい 生かされたのかな?」

ふと 気づくと 夕方にも関わらず 外が明るくなっているようだった

閉め切られていた理科室のカーテンを開けると 雲 あの妙な丸い雲が 白く輝き 上空に浮かんでいるのが 分かった

雲は どうやら 少しずつ 上空に遠ざかっていくようだった

助かった 安堵感の一方で 訳もわからず 腹が立った俺は 遠ざかる雲に向かって叫んだ

「一体 何なんだ! お前は何様だ! 何でこんなことする! 」

全く返答は期待していなかったのだが しばらくすると あの声が聞こえてきた

「人間の創造者・・・傲慢な人間を整理しにきた・・・・お互いを大事に思える人間のみを この世に残す・・・・・・・」

遠ざかる距離のせいなのか 途切れ途切れながら かすかな声ではあったが・・・・・


それから数年は 世界は大混乱で 日々生きるので必死だった

だって 俺の町で 生き残ったのは 俺とミハルだけ だったから・・・・ 

そして ようやく マスコミが復活し 全世界で 似たような 出来事が起こっていたことが分かった


ハッキリとは 分からないが 日本の人口は ほぼ3分の1になり、全世界でも何十億という人間が一瞬で消滅したらしい・・・・


今 俺は ミハルと 1歳になる娘を抱きながら 丸い夕焼け雲を見てる

綺麗な雲・・・・もう あんな雲は見たくないな・・・・・・


END

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