悲しい時には
遠く北の大地より、私は旅をしている。
旅のさなか、私は幾人もの旅人と出会い、そして別れた。
中でも
あの時に出会った彼らを、今も私は覚えている。
幾度目かの秋。
私は、夜風に吹かれ泣きはらす若き旅人に出会った。
私は訪ねた。
「なぜ泣いているのか?」
彼は答えた。
「もう、ずいぶんと彷徨っているが、未だ行くべき場所が見つからない」
私は言う。
「行くべき場所は、きっとあなたの心の中に」
幾度目かの冬。
私は、雪に凍え泣きはらす一人の旅人に出会った。
私は訪ねた。
「なぜ泣いているのか?」
彼は答えた。
「もう、ずいぶんと歩いているが、なんと遙かな道のりなのだろう」
私は言う。
「貴方の明日は、また愛に包まれている」
幾度目かの春。
私は、夜露に濡れ泣きはらす年老いた旅人に出会った。
私は訪ねた。
「なぜ泣いているのか?」
彼は答えた。
「ここまで旅をして来たが、もう終わりの時が来てしまった」
私は願う。
--- その涙が、永遠に輝くように ---
旅のさなか、私は幾人もの旅人と出会い、そして別れた。
その度
私も悲しみに涙を零し、祈りに星空を見上げた。
そうして
幾度目かの夏。
私は旅の途中。
「目指すべき場所は、未だ遙かに遠い」
おわり