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スファクテリア島へ・昼

 アテナイ側の反撃は速やか、かつ予想外のものであった。


 スパルタから西へ70km、イオニア海に面する半島に、ピュロスという名の湾がある。

 アテナイ側は、ピュロス湾の入り口に北から張り出した岬の付け根に、将軍デモステネスを送り込み、そこに砦を築かせた。


 スパルタの支配地域に、アテナイ側が、飛び領を作ったかたちになる。

 将軍デモステネスは、そこに戦艦五隻と、数百名の部下をもって居座った。


 これが、戦略的にどれほどの意味を持つものか、当のアテナイ内部でも意見が割れていた。

 たった数百名で何ができるか、というわけである。


 スパルタ側も、当初はそう見て静観していた。

 だが、やはり完全に放っておくというわけにもいかぬ。

 長老会が開かれ、この砦に、海から攻撃をかけることに決まった。


 そうと決まれば、最初に押さえねばならぬ場所がある。


 スファクテリア島である。



 先にも述べた通り、ピュロス湾の入り口には、北から岬が張り出している。

 南北に長く伸びたこの岬は、イオニア海と湾内とを隔てる、巨大な天然の「防波堤」のようなものであった。

 この「防波堤」は、最も南の一点で切れているため、湾内へ船団が漕ぎ入れることは可能なのだが、その一点に、天然の「蓋」があるのだ。

 

 これがスファクテリア島である。


 この島は、イオニア海とピュロス湾内とをつなぐ唯一の入り口のど真ん中にあって、湾内を外洋から守る「蓋」の役割を果たしていた。


 スパルタ側は、まずこの島を確保した上でアテナイの砦を攻撃するべきであると考え、スファクテリア島に、こちらも数百名の戦士を送り込むこととした。  


 その数百名の中に、レオニダス率いる《獅子隊》も含まれていた。

 プラタイアでの大勝利から戻り、彼らが我が家で家族とともに過ごすことができた時間は、わずかに一月足らずだったのである。




「やれやれ! まるで、戦場こそが俺たちの家で、家族のもとには、ちょっと出かけていっただけのようだな」  


 船団を組んでのスファクテリア島への遠征の途上、船べりにもたれながら、フェイディアスがぼやいた。


「聞いてくれ、パイアキス。この俺が、娘たちに何と言われたと思う? 『父上、また来てね』だぞ、まったく! 赤ん坊だったころ、毎晩抱いてやったことなんて、すっかり忘れていやがる」


「私は妻にひどく泣かれて、困り果てましたよ。結局、出発間際までずっと泣いていました。気の毒に思いましたが、仕方がありませんね。それが、スパルタの戦士の妻のさだめですから……」


 フェイディアスもパイアキスも、ともに家庭を持っている。

 だが、互い同士で過ごしてきた時間のほうが、家族との時間よりも遥かに長い。

 

 ペルシャには、未婚の若い男ばかりを集めた軍隊があるという。

 ただ王のみを愛するように教え、強烈な忠誠心を抱かせるためだ。


 逆に、スパルタの戦士たちは結婚を強く推奨されていた。

 この時代、支配階級であるスパルタ市民の人口が減り続けており、子を産み、育てることが非常に重視されていたからである。


 ふと、いつものように静かな表情で座っているレオニダスの姿を見やり、フェイディアスは複雑な表情になった。

 結婚してもう七年近くになるはずだが、レオニダスとリュクネには、まだ子どもがいない。

 子がない者は一人前の男、女とは言えぬというのがスパルタの風潮だが、それを口にさせぬほどのレオニダスの働き、リュクネの威厳であった。


 誰が言い出したことか、レオニダスとリュクネのあいだに生まれてくるはずの子らを、神々が次々にオリュンポスの衛兵としてお召しになり、その代償として、戦場でレオニダスを不死の身となさっているのだという風説まで囁かれているくらいだ。


 結婚して長く子ができぬ場合、夫が家庭の外に女性を持つことが認められているのだが、レオニダスがそんなことをするとは、フェイディアスにはとても思えなかった。

 彼が、妻であるリュクネをどれほど深く愛しているか、知らぬ者はないのだ。


(リュクネ様ならば)


 と、彼は思った。


(他に女性を持つことを、自ら隊長殿にすすめたに違いないが……そうだ、あれほど強靭な精神を持った女性には、他に会ったことがない。惜しいことだ。お二人のあいだに男子があれば、その子は、またとない立派なスパルタの戦士となるだろうに)  


 フェイディアスが珍しく真剣な物思いにふけっているあいだにも、《獅子隊》の戦士たちを乗せた船は一路、海上をスファクテリア島に向けて突き進んでいる。  


 やがて、まったく何の前触れもなく、歌が始まった。  

 船上の狭い空間でさえも、それぞれに身体を鍛錬することに余念のない戦士たちであったが、さすがに一日のすべてをそうやって過ごすには無理がある。

 そこで、かわるがわるに歌を披露して長旅の無聊を慰める、というのが、いつからともなく始まった《獅子隊》の遠征中の慣例であった。


 戦士たちの中には楽器をよく奏でる者もおり、頼まなくても、うまく伴奏をつけてくれる。

 あまりにもたびたび遠征があるために、彼らの演奏の腕もめきめきと上達し、いまや本職はだしの腕前である。


「パイアキス、次はおまえが歌ってくれ!」  


 賑やかに歌っていた男たちが、出し抜けに大声で指名した。


「私ですか?」


「何しろ、俺たちのまずい声では、ばかばかしい囃し歌くらいにしか向かんのでな!」


 巨漢の兵士が、だみ声で叫ぶ。


「ここは名人の歌声をきかせてほしい。ひとつ、胸に迫るようなやつをやってくれ!」  


 パイアキスは、部隊でも屈指の歌い手として知られていた。

 宴会でも、彼の次に順番が回ってくるのを、みなが敬遠するほどだ。  

 ふむ、としばし考えて、


「わかりました」


 パイアキスは穏やかに笑った。


「それでは、異国の物語を一曲。ヘーローとレアンドロスの物語を……」  


 おお、と一同がどよめいた。

 それは海峡を隔てて惹かれあった、アビドスの若者レアンドロスと、アフロディテーの神官ヘーローの恋の物語だった。


 レアンドロスは夜毎に恋人のもとへと通うため、海峡を泳いで渡る。

 ヘーローは毎晩、塔に灯をともし、恋しい男が進路を見失わぬようにしてやるのだ。

 だが、ある夜、嵐で海が荒れる。

 それでも恋人のところへ行かずにいられなかったレアンドロスは、とうとう力尽きて波に飲まれてしまう。

 そして、漂着した恋人の亡骸を見た乙女ヘーローもまた、塔から身を投げ、自ら命を絶つのだった……  


 パイアキスは朗々と声を震わし、ときには切々と訴えかけるように、恋人たちの悲劇の物語を歌い上げた。

 戦士たちは、みな、うっとりとパイアイスを見つめ、その声に聞き惚れた。

 フェイディアスは、鼻が高いような、面白くないような、複雑な顔つきである。


「見事なものだ!」


 歌が終わると、戦士たちはこぞってパイアキスを誉め讃えた。


「きみは戦神アレスのみならず、詩歌女神たちムーサイの御加護まで受けていると見えるな」


「素晴らしかった! 荒れ狂う海の情景が目に浮かぶようだったよ」


「まったくだ! ……いかがでしたか、隊長殿?」


 一人が、出し抜けにレオニダスに話を振り、全員がそちらに注目した。

 一瞬にして、場がしいんとなる。


 この遠征が始まって以来、レオニダスはいつも以上に無口で、物思いに耽ることが多くなった。

 そのことには、部隊の誰もが気付いている。

 もともとほとんど喋らない男なので微妙な差なのだが、五年間も肩を並べて戦い、寝食を共にしていれば、それくらいは判るものだ。  


 言った男も、言ってから「しまった」と思ったようだが、言ってしまったからには、もはやどうしようもない。

 静かな思考を――その内容は彼らには知るよしもなかった――妨げられて、レオニダスが気分を害したのではないかと、恐るおそる隊長の表情をうかがう。  

 レオニダスは無表情に一同を見返していたが、ややあって、淡々と言った。


「つまり、作戦を誤ったのだな」


「……は?」  


 一瞬、部下たちの誰も、彼が言っていることを理解できなかった。


「悪天候をついての上陸の敢行は、相手の裏をかくという意味では、確かに有効だ」  


 レオニダスは、大真面目である。


「だが、自身の泳力と、潮の流れを読み誤ったのが敗因だった……」


「あああ」  


 パイアキスがその場にばったりと倒れ、一同はどっと笑った。

 レオニダスは、あまり動かない顔に、不思議そうな気配を浮かべている。


「隊長殿にかかっては、恋の歌も、あっという間に武勲詩ですなあ!」  


 フェイディアスが大声で言い、場がふたたびどっと湧いた。


「つまりですな、先ほどの歌は、たとえ嵐の海原をもってしても、恋人たちが互いを求め合う心を引き裂くことはできぬという……」


「それは、分かっているが……なぜ、その男は、天候が回復するのを待たなかったのだ」


 まったく分かっていない。


「では、隊長殿ならばいかがです? 愛しい奥方が、今まさに自分の訪れを待っている! 今宵、二人のあいだを隔てるものは怒涛の荒波……さあ、どうなさいます?」


 まいはだを詰めた上陸用のボートを、とか何とか呟いていたレオニダスは、ふと口をつぐみ、首をひねった。

 それから、ああ、と口を開いて、


「俺が行く前に、彼女が泳いでくるかもしれない」  


 この一撃で、戦士たちの腹筋はしばらくのあいだ再起不能となった。

 そろって甲板に倒れ、だめだ笑い死ぬ、と腹を抱えてひくひくしている部下たちを、レオニダスは、やはり不思議そうに眺めていた。  


 その様子を隣で見つめながら、クレイトスは、心の中でフェイディアスとパイアキスに感謝していた。  

 レオニダス様の御心をほぐすことができるのは、あのお二人の軽口をおいて他にない。  


 プラタイアでのあの夜以来、クレイトスは、彼の念者エラステースに対してどのように接すればよいのか判らなくなっていた。

 彼と自分とのあいだに、あまりにも広く底の知れぬ深淵が口を開けているように感じられ、それを越えることができるなどとは思えなくなっていたのだ。  


 この心境の変化は、クレイトスの、レオニダスに対する態度の端々にもあらわれることとなった。

 以前にもまして遠慮深くなり、ことばのやり取りの数も減った。

 視線を交わすことも少なくなった。


 レオニダス本人が、この変化に気付いているのかいないのかは、まったく判断がつかなかった。

 クレイトスには、それが悲しかった。

 やはり、レオニダス様にとっては、自分など、必要のない存在なのだろうか……


「さあ、やれ、美少年!」  


 いきなり派手に背中を叩かれ、クレイトスはもう少しで甲板につんのめりそうになった。

 犯人は、言わずと知れたフェイディアスだ。


「な……何をなさいます?」


「何だと? お前、俺の話を丸っきり聞いてなかったのか!」  


 そう言って、フェイディアスが大げさに目を剥いてくる。


「申し訳ありません! 何のお話だったのでしょうか?」


「だから、次は、おまえが歌えと言ってるんだ!」  


 揺れる船上で無理やり立ち上がり、びしりとクレイトスに指を突きつけて、フェイディアス。


「場が盛り上がるやつだぞ、いいな! もしも盛り上がらなかったら、そのときは……」  


 フェイディアスが脅かすように薄笑いを浮かべてことばを切ると、古参の戦士たちが次々と声を上げた。


「そのときは、何か罰を考えねばならんなあ!」


「片手ずつ腕立て伏せ百回か?」


「いや、それではいまいち盛り上がりに欠ける」


「うむ、やはり、ここは古来からの伝統、裸踊りしか!」


 完全に面白がっている。  

 場を盛り上げるといっても、すでにここまで盛り上がっているものをどうすればよいのか。

 クレイトスはうろたえ、思わず、レオニダスのほうを見た。


《半神》は――どうするのだ、と言いたげな心配そうな表情で、こちらを見ていた。


 一瞬、クレイトスは、自分の目が信じられなかった。  

 何を考えているのか判らない、鉄壁の無表情ばかりを見慣れていた。

 そして、あの夜の苦悩の表情。


 自分の念者エラステースが、こんな顔をすることもあるのだと、クレイトスは今、初めて知ったのだ。


(ああ、あなたは……僕を、気遣ってくださっている。こんなことでも……)  


 そのとき、不意にクレイトスの心にひとつの案が浮かんだ。

 正気の沙汰ではないぞ、と驚愕されそうな案で、自分でも、どうなるかは分からなかった。


「レオニダス様」  


 だが、クレイトスは、心が動くままにことばを発していた。


「どうか、恋歌のお相手を……」  


 うおおおおっ!? と、一同から珍妙な悲鳴があがった。  

 男女が交互に歌い交わす恋歌を、隊で随一の美青年クレイトスが歌うということも刺激的だが、その相手がレオニダスとなれば、これはもう、刺激的どころの話ではない。

 そもそも《半神》が歌うなどとは誰も想像したことすらなく、レオニダスに歌を求めるという冒険的な試みをした者は、これまでに一人もいなかった。


「お、おい、おい、それは……」  


 さしものフェイディアスも、慌てて舌が回っていない。

 確かに、場は盛り上がった。

 だが、もはや盛り上がりの域を超え、緊迫感すら生まれている。

《半神》が歌うなど、ありえないことだ。

 クレイトスは、いったい何を考えているのか。

 そして我らが隊長殿は、果たしてどのように断るのだろうか……  


 レオニダスは、しばらく黙って念弟エローメノスの顔を見つめていた。  

 やがて、彼は少しばかり呆れたように、小さく息を吐き――



  わたしの恋人よ、美しいおとめよ

   どうか、その姿を見せてくれ。

  あなたはわたしの菫の花、月桂樹の小さな枝

   月よりも清らかで、暁を思わす優美さをそなえている。


 

 低く、はっきりとした声で、そう歌いはじめた。  

 最初は歌詞を思い出すのに手間取ったか、視線を下げて一言ずつ確かめるように歌ったレオニダスだが、すぐに顔をあげると、クレイトスを見つめ、ほんのかすかに笑みを浮かべた。

 戦士たちはみな、ぽかんと口を開け、目の前で起こっている、ありえないはずの光景を見つめていた。


  

  わたしの愛する美しいおとめよ、

   どうか、その声をきかせてくれ。  

  あなたの声はそよ風のように優しく、愛らしく、  

   それを聞いただけで、わたしは有頂天になってしまう――



 レオニダスがクレイトスに手を差し伸べる。

 ここからは「おとめの歌」だ。

 クレイトスは、差し伸べられた手に背を向けた。



  あなたはなぜそのように優しいことばで、    

   わたしを惑わそうとなさるのでしょう?    

  殿方は若い牡鹿のように移り気、

   気の向くままに跳んでゆき、片時も留まることはない。


 

 レオニダスは小さくかぶりを振り、誘うように両腕を開く。


 

  わたしの愛する美しいおとめよ、

   ここへおいで、立って出ておいで。    

  ごらん、花は地に咲きこぼれ、小鳥たちは歌い、    

   清らかな水に、銀色の魚がたわむれている。

  ここにきて光の下で向かい合ったなら、

   純潔で気高いあなたにもわかるだろう。

  わたしの眼差しにこめられた愛情、

   わたしの想いが真心からのものだということが。


 

 クレイトスは、挑むように振り向いた。



  甘いことばは不実、熱い眼差しは気まぐれ、

   こちらかと思えば、またあちら。

  幾千の讃美のことばがいったい何になりましょう、

   生涯変わらぬ愛を手に入れることができないのならば!


 

 やりとりのたびに、戦士たちの顔が、きっちりと揃って交互に左右を向く。

 それがあまりにも面白く、クレイトスは危うく笑いそうになったが、何とかこらえた。

 ここで吹き出しては台無しだ。  

 それに……できるだけ長いあいだ、この歌を続けていたかった。  


 歌のやりとりを交わすうち、若者の熱心な求愛に、頑なだったおとめは、やがて心を開いてゆく。

 最後には、二人の心は通い合い、愛する者と結ばれる悦びを、共に声を合わせて歌う――



  おお、愛しい者よ!    

   こんなふうだとは夢にも思わなかった!    

  奔放な情熱に燃えた恋の火の向こうに、    

   このような安らぎがあろうとは!

  

  たとえ、この先にもっとも恐ろしい運命が待ち受け、    

   炎と硫黄の黄泉路をくぐりぬけることになろうとも、

    恐れることなど何もありはしない。

 

  わたしには帰る場所があるのだ、

   エリューシオンの園にも勝り、心も魂もすべてを託せる、    

    あなたの腕がわたしを迎えてくれるのだから。


 

 レオニダスとクレイトスが最後の協和声を見事に響かせた瞬間、一計を案じたフェイディアスが、そ知らぬ顔でクレイトスに強烈な足払いをかけた。

 クレイトスは、あっと叫んで足をもつれさせ、レオニダスの胸の中に倒れ込んだ。  


 戦士たちのあいだから、怒涛のような歓声があがった。

 後に判明したところによると、この歓声は隣の船に乗り組む総司令官エピタダス将軍の耳にまで届き、すわ反乱か、と彼を動転させたということだ。


「素晴らしい……!」  


 パイアキスは、すっかり感動している。


「レオニダス様がこれほどの歌い手であられたとは! なぜ、これまで披露して下さらなかったのですか?」


「クレイトスも、なかなかよかったぞ」


 フェイディアスは、意味ありげな笑みを浮かべていた。


「隊長殿を歌わせるとはな、まったく! おまえの奇策には、心底驚かされた。見事だ!」  


 クレイトスはしばし、レオニダスの腕に抱きかかえられるような姿勢のまま呆然としていたが、はっと我に返ると、ひどくうろたえて身を離した。

 顔が真っ赤になっている。


「申し訳ありません!」


「……いや」  


 こちらはいささかも顔色を変えず、レオニダス。

 その口ぶりは冷淡と言えそうなほどそっけなく、表情には、いまや何の感情も表れてはいなかった。


「では、次は俺が!」  


 皆の興奮がひとまず一段落し、かつ、互いの様子をうかがって順番を譲り合うあの気まずい空気が流れるよりも一歩先んじた絶妙の呼吸で、フェイディアスが勢いよく名乗りをあげた。


 彼が選んだのは、スパルタに古くから伝わる詩人テュルタイオスの勇ましい戦歌で、やがてそこに一人、また一人と加わり、しまいには、男たちによる勇壮な大合唱が海原をおして響きわたることとなった。  


 それから日が落ちるまで、クレイトスとレオニダスは、とうとう一度も互いに視線を合わすことがなかった。




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