プロローグ 勇者
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――勇者。
その言葉には不思議な力がある。
希望の象徴にして正義の化身。弱きを助け悪を挫く様はまさに羨望の的だ。
強く、優しく、勇敢で如何なる困難をもものともしない精神力を持った神のような、男の子ならば必ず一度は憧れるであろう存在。
世界が、多元層の海の中に無数に存在するのだと証明されたのは遥か昔――
この瞬間にも、世界は生まれ、そして消えていく。
そんな数多ある世界を少しでも救うため、勇者を育て派遣する組織がある。
『多元世界救済機構』――それがその組織の名前だ。
無数に存在する次元からのSOSに対して、最適かつ最高の人材を派遣し、その世界の許す範囲内で――つまりは世界が自らの力で危機的状況に対応できる力を育てることが、彼らの役目。
だが、勇者とて人の子であることを忘れてはならない。
彼らとて食事をし、眠り、夢を見る。時に迷い、悩み、絶望もするし恋もする。卑しき感情だって抱くだろうし、欲も湧く。しかし、歴史の中で人はそれを忘れ、勇者は当たり前のように世界を救えるものだと思われている。
勇者がいれば世界は救われるのだと、人々は盲目的に信じ、崇めていた。
† † †