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30分小説

明るい笑い

作者: 雨月 嶽

「知り合いが就職活動したんだけど全滅でさぁ」

そんなことを笑いながら話す、彼女の顔には少し影があった。

俺は小学校からの幼馴染と近くの喫茶店で昼食を取っている。

大学生になってからというもの、お互い学部が違うため前ほど頻繁に会っていなかった。

半年振りに見た彼女はどこか憂いを帯びたような、ほのかに暗い表情をしている。

「あんたはもう決まったの?」

彼女の光の無い目が俺を捕らえる。

これは相当やばいな……

下手な返事をすれば恐ろしいことになる。

しかし、どうしたものか……

しばらく思案した後俺は腹を決めた。

「一応、出版社関係に就職が決まったよ」

正直に答える。

「そ、そう……。良かったね。あんた昔から本が好きだったもんね」

彼女の目が剣呑に光る。

まずったか?

「そっちこそどうなんだ?カウンセラーになりたいとか行ってたじゃんよ」

虎穴に入らずんば虎児を得ず。

取り敢えず向こうの事を聞いておく。

恐らく答えは・・・・・・

「う~ん、ちょっとね」

やっぱりうまく言っていない様子。

この返事の仕方は事情を聞いて欲しい合図。

だてに幼馴染をやっているわけじゃない。

「どうしたんだよ」

少しつついてみる。

「いやね、あたしって昔から子供が好きだし。ほら、色々あったからさ。子供のカウンセリングをする仕事につきたいな~とか、思って勉強してきたわけよ。で、この間実習があってさ初めて現場を見たの。そしたら、自信なくしちゃって」

彼女の視線が俺を射抜き訴えてくる。

まったく、コイツは昔からそうだ。

正義感が人一倍強くて、出来もしないのに首を突っ込む。

そいで、人一倍傷ついて落ち込む。

いつもそうだ。

だから俺は言ってやる。

「自信が無い?何でまた。お前はプロじゃない。失敗したっていいんだ。なにも、一人で背負い込む必要は無いんだ。お前がなんで自信をなくしたかは知らんけどな、その実習先で嫌なことだけがあったわけじゃないだろ?感謝だってされたはずだろ?まさかその笑顔よりも失敗の方が大事なのか?」

俺の言葉に、彼女の目は徐々に光を取り戻していった。

「そんな、そんなこと無いよ!」

だから俺はとどめの一言を告げる。

「自信もてよ、お前はちゃんとやっている。俺が保障してやる」

その一言で彼女は花が咲くように、それはそれはきれいに笑った。


------うん!ありがと



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