明るい笑い
「知り合いが就職活動したんだけど全滅でさぁ」
そんなことを笑いながら話す、彼女の顔には少し影があった。
俺は小学校からの幼馴染と近くの喫茶店で昼食を取っている。
大学生になってからというもの、お互い学部が違うため前ほど頻繁に会っていなかった。
半年振りに見た彼女はどこか憂いを帯びたような、ほのかに暗い表情をしている。
「あんたはもう決まったの?」
彼女の光の無い目が俺を捕らえる。
これは相当やばいな……
下手な返事をすれば恐ろしいことになる。
しかし、どうしたものか……
しばらく思案した後俺は腹を決めた。
「一応、出版社関係に就職が決まったよ」
正直に答える。
「そ、そう……。良かったね。あんた昔から本が好きだったもんね」
彼女の目が剣呑に光る。
まずったか?
「そっちこそどうなんだ?カウンセラーになりたいとか行ってたじゃんよ」
虎穴に入らずんば虎児を得ず。
取り敢えず向こうの事を聞いておく。
恐らく答えは・・・・・・
「う~ん、ちょっとね」
やっぱりうまく言っていない様子。
この返事の仕方は事情を聞いて欲しい合図。
だてに幼馴染をやっているわけじゃない。
「どうしたんだよ」
少しつついてみる。
「いやね、あたしって昔から子供が好きだし。ほら、色々あったからさ。子供のカウンセリングをする仕事につきたいな~とか、思って勉強してきたわけよ。で、この間実習があってさ初めて現場を見たの。そしたら、自信なくしちゃって」
彼女の視線が俺を射抜き訴えてくる。
まったく、コイツは昔からそうだ。
正義感が人一倍強くて、出来もしないのに首を突っ込む。
そいで、人一倍傷ついて落ち込む。
いつもそうだ。
だから俺は言ってやる。
「自信が無い?何でまた。お前はプロじゃない。失敗したっていいんだ。なにも、一人で背負い込む必要は無いんだ。お前がなんで自信をなくしたかは知らんけどな、その実習先で嫌なことだけがあったわけじゃないだろ?感謝だってされたはずだろ?まさかその笑顔よりも失敗の方が大事なのか?」
俺の言葉に、彼女の目は徐々に光を取り戻していった。
「そんな、そんなこと無いよ!」
だから俺はとどめの一言を告げる。
「自信もてよ、お前はちゃんとやっている。俺が保障してやる」
その一言で彼女は花が咲くように、それはそれはきれいに笑った。
------うん!ありがと