どうしようもない話
「高校時代のクラスメートで同窓会をするんだけど・・・」
高町 遥からの電話を受けたのは、今から2ヶ月前のことだ。10年ぶりに聞く彼女の声は俺の記憶に残る彼女の声と変わらない。高校時代のクラスメートになんて別に会いたくもないが、彼女だけは別だ。そう、俺は高校時代、彼女のことが好きだったのだ。
おっと、誤解するなよ。昔好きだった女に会えるんだから、下心がなかったとは言わない。が、多くを期待してたわけでもないんだ。なにしろ10年もたってるんだ。彼女の苗字が変わってたっておかしくない。そう、俺は多くを望んでいたわけではないんだ。
でも1週間たち、2週間たち、同窓会の日が近付くにつれて、俺は段々怖くなってきた。いつしか「同窓会が中止になって欲しい」と願うようにさえなっていた。
しかし、現実は非情だ。同窓会まであと2週間をきったある日、再び遥から電話がかかってきた。同窓会は予定通り行われることになったらしい。
俺は同窓会の日、仕事を休むことに決めた。
で、今日がその同窓会の日ってわけだ。こうして、お前と酒を飲む羽目になるとは思わなかったがな。なに? じゃあ、なぜ同窓会に行かないのかって? 無茶を言うなよ。無理に決まってるだろ。
◆◇◆◇◆◇
誘われてない同窓会に行けるはずがないだろ。
確かに俺は遥からの電話を受けた。でも、あれは『俺の勤めるホテル』に入った会場予約の電話だ。そして、俺に同窓会の案内状が届くことはなかった。もちろん、実家にもそんな連絡はきてないそうだ。
同窓会は中止になった。キャンセルの電話がかかってくるはず。そんな風に考えたのは、まあ、自分に言い聞かせるためのウソだな。俺はいつしか案内状よりも、予約キャンセルの電話を待つようになっていた。
高校時代の俺は、そりゃ馬鹿のこともたくさんした。でも、クラスの連中、いや、遥にそんなに嫌われていたのだろうか?そもそも俺の勤め先に予約をいれたのは、果たして偶然なのだろうか?
今の俺にはそれを確かめる勇気はないよ。
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