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神々の庭のクロニクル  作者: 御神楽てるよふ
剣の想い、赤毛の来訪者
10/13

第九話 相対者と見守る者

 相対あいたいし、改めて”敵手”を見据える。 熱していた頭が芯の方から冷えていくような感覚を覚えながら、輝夜は袱紗ふくさを解いた。

 自らの主たる内親王ないしんのうと客人との、じゃれるようなやり取りに思わず割って入ってからの流れは今にして思うと自分でも恥ずかしい。 が、それでこの赤毛の剣士と剣を交える機会を得られたのならば、怪我の功名というべきだろうか。

「さてと」

 剣士――アレスが、こちらに声を投げかけてきた。 革のベルトに吊られた鉄塊と見紛みまがうほどの大剣を鞘ごと取り外し、手に担う。 なにやら複雑な機構が施されているとおぼしき柄には、使い手の髪の色と同じく、燃えるような輝きを放つ輝石がはめ込まれていた。

「で、本当に、やんのか?」

 発された問いは、挑発めいた確認だった。 かねてからこの相対を望んでいた輝夜は、無言で頷き、そして一礼する。

「お願い申す」

「……やけに素直じゃねえか」

 アレスは毒気を抜かれたような顔をした。 先程までの自分の様子からしたら、これは予想外だったのだろうなあ、と内心で自嘲じちょう気味に輝夜は苦笑する。

「実は、かねてより、あなたと手合わせしたいと思っていた」

「ほう」

 相手の視線に、こちらを値踏みするようなものが混じった。 いま自分は試されているのだ、という実感に身がこわばる。 むろん、ここで引くわけにはいかない。

「受けていただけるだろうか」

 輝夜はアレスの視線を正面から受け止め、真っ直ぐに視線を返しながら、利き手に刀の柄を握り、さやに包まれた切っ先を相手に向ける。 その様子にアレスは何か感じるものがあったのか頷くと、大剣を己の正面、腹をこちらに向けるようにして、防御の構えをとった。

「一発打ち込んで来い。 それで決める」

 その言葉にも、輝夜は走り出さない。 かわりに、柄を持つ手を組み替え、両手でそれ担う。

「はッ!」

 利き足の踏み込みと共に気合一閃、大上段から斜めに振り下ろされた刀が虚空こくうを切り裂く。 刹那せつな遅れて、快音と共にアレスの持つ大剣が震え、彼はわずかに瞠目した。

  風が二人の間を吹き抜け、晩秋に紅く色づいた落ち葉を運んでゆく。

「……その歳でそいつを使えるんなら、大したもんだ」

 声には楽しげな響き。 残心に移りつつあった輝夜は、剣の陰に見える口元が、笑みを形作っているのを確かに見た。

「あなたの故国にも、この技が?」

「対魔術師の切り札の一つだけあって、有名な剣豪は、いや、大抵の武器の名人ならその技は使う」

「伝えられる価値のある技は、洋の東西を問わないということか。 剣聖上泉伊勢守かみいずみいせのかみ、新当流の塚原土佐守つかはらとさのかみ、幕府初代剣指南の柳生但馬守やぎゅうたじまのかみ、いずれもこの『無走り』を使いこなしたと」

 いずれも歴史に名を残す剣豪たちの名前を挙げる輝夜の目には、憧憬しょうけいの光がある。 同時に、自らもいずれ、父や、ひいてはかの大剣豪たちと肩を並べる偉大な剣士となる、そんな幼いが真摯しんしな決意の色もあった。

「いいぜ」

 それらを見て取ったのか、アレスが頷く。 輝夜も表情を引き締め、体勢を残心から再び構えへと移行する。

「付き合ってやるよ」

 直後、鈍い刃鳴りが、晩秋の庭園にこだました。



 *****



 未熟な少女剣士と、練達の赤毛の傭兵ようへいの激突を、紫苑は興味深げに眺めていた。 そして思い出すのは自身の過去だ。いつだったかは誘導術式を付与した十二発の魔力弾を、誘導を逆手にとった亡父に事も無げに避けられた。 そのほかの亡父の友人達にも、ただの誘導弾は通用などしなかった――つくづく魔導院には人間の皮をかぶった化け物しかいない、と今でも思うが、そのあとで移動を制限するような軌道の熱光線を組み合わせる事を思いつき、さらに挙動の異なる何種類かの誘導弾に目くらましの無誘導弾を混ぜ、総発射弾数を十倍に増やすという思い付きを実行に移してからは、彼らが白旗を掲げる番だった。

 そんな思い付きをあっさり実行できるあたり殿下の方がよほどバケモンですな、とは亡父の悪友筆頭だった左院別当・弓削鷹亮の弁だ。 彼に続いてうんうんと頷き、反則だ何だと抗議を始めたいい年した中年どもをまとめて熱衝撃波で薙ぎ払った遠い日の自分。 それができるなら、小細工無用の速く強力な一撃が一番ということがよくわかった。

 思い出していて何か疑問を感じなくもなかったが、きっと気のせいだと片付けた。 気を取り直して、目の前で繰り広げられている勝負に再び意識を戻す紫苑。

「はああッ!!」

 気合の声を上げ、輝夜は八双はっそうの構えで一直線にアレスに向けて打ちかかる。 術式に込める魔力は最初から最大だ。 走るというよりは跳躍と言える勢いで、右半身向けて振り下ろされた刃を、アレスは左足を軸にした最小限の回転でかわし、その勢いのまま一回転して大剣を振り上げる。 斜め下から、着地した輝夜の背を狙った一撃は、輝夜が利き手に刀を持ち替え、空いた右手を地について身を沈めることで空を切った。 彼女は地についたその右手を軸にしてアレスの側に向き直ると、脚の勢いで砂利が跳ね上げられる。

「風よッ!」

 それを一瞬の風圧でベクトルと速度を与え牽制とし、下方から刀を振り上げた。 きらめく軌跡は、しかし一歩下がったアレスに届かない。

「確かに、はえぇな」

 楽しそうにアレスは口の端を吊り上げる。

「速さは攻防一体、そう教えられた」

 バックステップで距離をとって風圧刃を打ち込んでくる輝夜を目で追い、その寸分たがわぬ軌道上に大剣を置いてやりすごす。

「確かにな」

 そして返礼とばかりに、彼は大剣を軽々と大上段に振り上げ、虚空こくうを断つように振り下ろした。 放たれた、自身のものより数段上の威力に見える風圧刃を、輝夜は受けようとはせずに横っ飛びで回避する。

「あんまりさあ、うちを壊すようなことしないでよね」

「紫苑様、結界を張ってくださっているのですよね?」

「いや、まあ、そうだけど」

 呆れ気味の紫苑の言葉に、輝夜はアレスに視線を向けたまま答えた。 その間で二人は構えを整え、輝夜は自身の脚の感覚を確かめるように二歩踏み出すと、

べ――!!」

 踏み込もうとする前方に青く輝く格子状の陣が展開され、それを突き抜けた瞬間に彼女は爆発的な加速を行った。

 ――ベクトル付加型の加速術式か、と紫苑はその術式の効果を理解し、輝夜が四肢の防具の術式に魔力を注ぎながらもそれを展開できた事実に、いささかならぬ驚きを得る。 紫苑や彼女の父の見立てでは、輝夜の魔力量は術式構成の才はそれほどでもないという認識がなされていたが、彼女はこうした実戦で伸びる性質なのかもしれない。

「まだ速くなるってか?」

 呆れを含んだ声をアレスは漏らす。 彼にしてみればその突撃は、軌道がわかりきったものでしかない。 反応出来さえすれば、この種の攻撃は少しも脅威にはならないのだ。 果たしてそれが、相対する未熟者に理解できるだろうか。

「そいつぁ結構なことだが――」

 自分のすぐ横を、突風の如き勢いで突き抜けていった少女の背に視線を投げかけ、砂利をひとつ投げてやる。 背に感じた一瞬の冷たさに輝夜は、半ば強引に姿勢を低く取ろうとして、髪に砂利が絡むのも構わず地面を転がった。 これが投刃や苦無ならば、必ず回避しなければいけないものだからだ。

「あんまり退屈させるなよ。 さっきから同じ展開だぜ?」

「それは失礼をした」

 跳ね起きた輝夜が侘びを入れながら突っ込んでくる。 またかとアレスは思ったが、自分から逸れていくような軌道を不自然に感じる。 そこで輝夜の姿が一瞬ぶれた。 目の前に残ったのは疾駆する姿勢そのままの輝夜の姿。

 違う、と直感が警告を発し、彼はその反対方向に大剣を盾とするように構えた。 直後金属と金属が触れ合い、甲高い音と共に火花が飛び散る。

「残像か」

 呟くアレスの前で輝夜の姿が再びぶれた。 背後に現れた殺気を一歩前進してかわし、面倒になってきたアレスは、大剣のつばに埋め込まれた輝石に手を伸ばす。

 瞬間、観戦を続けていた紫苑の眼が見開かれた。 その輝石の正体を誘った彼女は、愉快そうに笑声を上げ、輝夜の敗北を確信する。

「晶石結晶回路! 単純明快ね、そう来たか!」

 アレスの魔力が輝石に流れ込み、内蔵された術式が起動する。 その術は何の工夫もてらいも無い、増幅された魔力の周囲への一斉放出だ。 衝撃をともなうそれに、輝夜の姿勢が崩れる。

 声にならない驚きと共に、たたらを踏んで後ずさる輝夜。 その隙をアレスは見逃さない。 振り向いた彼は意趣返しとばかりに地を蹴って猛進し、輝夜の背後に回りこんだかと思うと――

「ひゃあ?!」

 思わぬ場所に触感を得た輝夜が素っ頓狂な声を上げた。 脚を内股に曲げてもじもじとしている彼女の背後には、アレスが背中合わせで立っている。

「んっ、何処を、や、触って……!!」

 彼はその掌中に収まっているものの感触を吟味するようにニ・三回揉みしだくと、

「ふん。 ……薄いが、形はイイな」

 しみじみと頷いた。 その背後で、輝夜がへなへなと座り込む。 恥ずかしさと疲労で、その顔は紫苑の瞳のように真っ赤になっていた。

「まあ何だ、気にすんなよ。 まだ十四なんだろ?」

「……どっちの」

 ふらふらと立ち上がった輝夜。 うつむき加減の表情は、アレスからは見えないが――肩がわなわなと震えているあたりからして、抱いている感情はよく理解できた。

「どっちの意味だあああああ!!」

 涙目気味の輝夜の、一瞬で術式の限界を超えた魔力が注ぎ込まれたことによる脅威的な瞬発力での回し蹴りが、アレスの腰をしたたかに捉えたのだった。



 *****



「無茶しやがる……大丈夫か?」

「うるさい、この尻男! 手など借りてやるものかっ」

「そーかい。 初心だねえ」

「うるさい黙れこの馬鹿! 助平すけべ!」

 強引な超過駆動によって痛む四肢。 気を抜けば崩れそうな体を、刀を杖代わりにしてやっと支えているという有様で、息も絶え絶え。 おまけに涙目で声は震えている。 説得力がまるでないのを自覚しつつも、輝夜は強がらずにはいられなかった。

「最後は完全に魔力が術式の許容量を越えてたわ! ほんと、大したものよあなた」

 そんなところに、ぱちぱちと拍手をしながら、笑顔の主が近寄ってくる。

「いやその紫苑様、私のし、尻の件はどうでもいいのですか!?」

「まあ、それは、うん、一発ぶっ放したから」

 訴えかけるような輝夜に苦笑する紫苑。 手が示す先にいるアレスは微妙に煤けている。 とりあえずお仕置き一発ということで、紫苑が火炎弾を打ち込んだ結果だ。

「で……具合は?」

 かがみこんでくる主の、こちらを気遣っているはずの表情に、一瞬だが悪戯な成分が混じった気がして、輝夜は慌てて体勢を立て直そうとするが手足が動かない。

「どれどれ?」

「えひゃあ!?」

 楽しげな声だがその楽しさは自分をからかう時のものだ。 背後に回りこまれたのに対応する間もなく、つん、と疲労困憊の脚、それも太腿の後側をつつかれ、思わず突飛な声が出てしまう。

「やめてやれよオイ……」

「やーよ、この子なかなかスキ見せないんだもの。 弄れるときに弄るの!」

 赤毛の顔はどことなくげんなりしていた。 その静止の声にも主はかまわず、今度は二の腕を上衣の上からつつかれる。

「うみゃあ!? ……お、おやめくださ、ひゃあっ!?」

「だーめ。 ほれほれ力抜きなさい」

 背後から聞こえる声は、さらに悪戯っぽさを増したような気がした。 それと共にさらに容赦のない揉みしだきが、輝夜の四肢を襲う。 触られるたびに妙な声が漏れ、逃げ出してしまいたいような気分に輝夜はなったが、やはり脚は動かない。

「ったく強情ねえ」

 ややあって、言葉に続いて背中に感じたのは重さと柔らかさ。 事態を理解する間もなく、顔が羞恥しゅうち以外の朱色になるのがわかる。 心臓は早鐘のように高鳴り、これまでの責めの中でもなんとか体を支えていた手足がわけもなくかたかたと震える。  その重さのためか、それとも「紫苑様が私の背中にしなだれかかっている」という自身の脳がやっと認識した事実のためか。 そんなことを考える間もなく、今までとは違う場所に手がそえられる感覚。

「し、紫苑様……? あの、そこは」

 そこは膝裏。

「ひっどいなあ。 超過駆動の影響か余剰魔力漏出のせいか……だいぶ痛んでるわね」

 ひょいと抱え上げられながら、脚甲のベルト越しにふくらはぎを揉まれる。 どぎまぎとする表情を隠そうと、輝夜は無理やり首を曲げ、すると紫苑の着物に押し潰されかけた豊かな胸が目に入り、それはそれで何やら恥ずかしい。

「式がほとんど摩滅して…… 彫り直さないとダメだわ」

 とてつもなく近い距離で、憧れの存在が何やら呟いている。 心臓の音がもっと近くで鳴り響いて、内容はわからない。 自分の姿勢と位置とその相手のことだけを考えて、顔から火が出そうな思いだ。

「とりあえず、けっこうな魔力量なわけだし。 ちゃんとした魔術の制御法を身につけた方がいいわね、輝夜……おーい聞いてる?」

 目の前を肌色をしたものが横切っているが、何がなんだかわからない――。



 *****



 抱き上げるなり眼を白黒とさせた挙句に、頭から湯気を噴出して人事不省じんじふせいに陥った輝夜。 彼女を抱きかかえた紫苑は、アレスと共にそのまま縁側まで歩いてきて、板張りの上に倒れた少女をそっと置いた。

「ほら、面白いでしょ。 茹でたタコかカニみたい」

「お前……酷ェな」

 げっそりと応じるアレス。 紫苑の方はといえば、言い種とは裏腹に優しげな表情で、倒れた少女の頭をいとおしげに撫ぜ、ひざの上に乗せた。 されるがままの輝夜の表情も、どこか安らいでいるようにアレスには見えた。

「まあ、良かったわ」

「……何がだ?」

 呟くような言葉に、赤毛の傭兵は疑問を返した。 対する目の前の少女は答える前に、こちらと、隣に座っているアレシエルに視線を送り、最後にまたこちらを真っ直ぐに見つめる。 一瞬の逡巡しゅんじゅんのあと、彼女は日が傾きかけた空を見上げ、口を開いた。

「この子、ちょっとワケ有りでね……同年代の”友達”が、いないのよ」

 その表情と声には自嘲の色が透けて見え、「お前は」というさらなる言葉を押し留める。 それでも沈黙から悟ったのか、紫苑ははっきりとかぶりを振った。

「私じゃ、ダメなのよ。 どうしても、ほら……『姫殿下』と『少尉』なの。 少なくともこの子にとっては。 だから良かったな、って。 アレシエルは、この子と友達になれそうだし。 アレス――あなたはきっと、この子にとって目指すべきひとつの目標になる」

 ちょっと妬けるわ、と笑う彼女の目尻には、僅かに光るものがあった。

「私じゃ、三年あっても無理だったんだけどね」

「……本当に、そう思うのか?」

 つい、口をついて出てしまった。 こういう時は下手に喋るとロクな事にならないのはわかっていただろう、とアレスは内心で自分の失敗を呪う。 それでも言ってしまったものは仕方ないと、アレスはさらに言葉を続ける。

「だったら、どうしてこいつは、よりによってお前なんかの側に三年も居たんだろうな」

 はっと、紫苑は顔を上げた。

「……そうだな、俺だったら三日で辞めるな」

「何よそれ」

「お前みてぇな滅茶苦茶な奴のお守りなんざ、命令されたって願い下げだって事だ」

「じゃあ、どうして……」

「俺に言わせるなよ。 柄じゃねぇ」

 ”どうして、私の側に居てくれるのか”

 それは当たり前すぎて、思い至らなかったこと。

「あたしは――」

 別の方向からの声に向き直る。 アレシエルが、不思議とき付けられる紅い瞳で、こちらを見上げていた。 

「紫苑お姉ちゃんと輝夜ちゃん、とっても仲良さそうに見えたな。 あたしもそういうの、よくわかんないけど……とっても仲良しの友達か、うん、お姉ちゃんと妹みたいだった。 ちょっと、羨ましいな」

 女友達、或いは姉妹。 自分の記憶の中にある友人関係といえば、亡父と現在の魔導院首脳陣たちや、自分と焔崎のようなものに限られる。 それらと比較検討し自身と輝夜の関係の定義を試みるが、変数が多すぎて上手くいかない。 研究書や歴史書ばかりを読んでいたせいだ、と内心で彼女は嘆息した。 これからはもっと小説を読もう、とも思う。

「そう言うこった。 お前等二人は、お前が思ってるよりは、多分上手くやってるんだと思うぜ」

「……そうなのかしら?」

「そうだよ」

 赤毛の少女が、にっと笑いかけてくる。 その表情に、なんとなく安心できるものを覚えた紫苑は、柔らかく微笑み返し、寝息を立て始めた輝夜の艶やかな黒髪を、もうひと撫でした。



*****



 ――そこは、冷たい玉座。

 月も星も無い漆黒に、おぼろげな光が点り、ひざまずくひとつの影を照らし出す。

「……やはり、有象無象うぞうむぞうの傭兵どもでは無理か」

「は……」

 虚空から投げかけられた声に、影は頭を垂れて応じる。

「とはいえ、面白い事になった。 ”あれ”と彼女がこうして出逢い、一所に共に在るのだもの」

 少女のような幼い声色に矛盾するような、硬い口調。 だが不自然さは微塵も感じられず、むしろそうであることが自然であるようだった。

「しばらくは観察を続けるとしましょう。 その方が、後の楽しみが増すというもの。 たぶん」

「しかし、よろしいのですか? ”あれ”は……」

「劣化複製を繰り返すしか能が無い研究部局の面子など、捨て置けばいいわ」

「は……」

「陛下の最後の命。 我々はそれを全霊をもって完遂しなければならない。 ……あなたの働きにも、期待しているわ」

 光が消え、あたりには静寂が戻る。

 残された影は虚空を見上げ、ひとつ吐息して踵を返し、闇の中へと消えてゆく。


 ――御姉様。


 闇の中に、ひとつ声が響いたことには、その闇の主を除いて誰も気付く事はなかった。 

 ふたりの初の相対でした。 境ホラ風に言うとセ……いや皆まで言うまい。

 バトルは難しいですが書いてて楽しいですね。

 こちらも試験的にルビを増量してみましたが、どうでしょうか?

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