第6話・湖の怪獣少女……モン〇ター・ハンターVS怪獣少女
ルリハは周囲を森に囲まれた、浅葱色をした美しい湖に到着した。
森を壊さずに通過するにはどうしたら、いいのか思案しているルリハに竜子が言った。
「何をためらっている、怪獣だったら森の木をバリバリなぎ倒して進め」
「いやぁ、それはちょっと……枝が顔に当たりますし」
「四つ足怪獣は、そういうところは厄介だな」
◇◇◇◇◇◇
ルリハが、湖の湖畔を観察する。
「全部、森で囲まれているかと思ったら人間が歩く道もありましたね……あっ、狩場みたいな広い場所もある、これならなんとか森の木を傷つけないで、移動できるかも」
ルリハが注意しながら、湖湖畔の広い場所に移動すると。
湖が湧き上がって、二脚直立系の怪獣少女が湖の中から現れた。
白いマイクロビキニ姿で、頭の両側に放電型のツノを生やした黒髪長髪の美女怪獣が放電する。
頭から尻尾にかけて水晶結晶を生やした、黒髪の怪獣少女がムセながら言った。
「こほっ、こほっ、あぁ、苦しかった鼻の穴に水入った……やっぱり時々、水面に顔を出して呼吸しないとダメですね……あたしの名前は『 クリスタル』この湖の主の怪獣少女です……この間、タキタロウという魚を丸呑みしました」
ルリハの顔を凝視していた、クリスタルが言った。
「もしかしてルリハさんですか? 町や村を口から吐く火炎放射で焼き払い、逃げ惑う人々を容赦なく踏みつぶす大怪獣の」
「あたし、そんなコトしていない!」
艦橋に立つ竜子が言った。
「噂にとんでもない尾ヒレが付いて、広まっていたな……どうだルリハ、いっそうのコト噂通りに町や村を焼き払ってみたら」
「なんてコト、言うんですか! そんなコトしたら怪獣退治されますよ」
怪獣退治と聞いたクリスタルが、腰に手を当てて大笑いをする。
「あはははっ、ルリハさん面白いコト言いますね……今日がなんの日か知っていて、この湖に来たんですか?」
「えっ? あたしは普通に四つ這いで歩いてきただけですけれど?」
「じゃあ、今日はルリハさんにとって最悪の日になりますよ……せいぜい、狩られないように注意してください」
「狩られるって……なに?」
◇◇◇◇◇◇
放電ツノを光らせてさせて、戦闘体勢に入ったクリスタルがルリハの質問に答える前に、湖に武装をした人間たちがゾロゾロと森の中から現れた。
モン〇ター・ハンターたちは、電流を帯びたクリスタルの長い尻尾を見て言った。
「十分に充電されているな……狙うはあの長い電撃尻尾だ!」
「おい、なんか四つ這いの怪獣少女もいるぞ?」
「あれは、伝説の大怪獣『鵜ノ目 ルリハ』……あの怪獣少女の肉を食べると千年寿命が延びるぞ! こりゃラッキーだ」
「二匹まとめて、狩っちまえ!」
武器を手に襲いかかってくる、モン〇ター・ハンターたち──艦橋の竜子が言った。
「ルリハ、回転尻尾パンチだ!」
ルリハが大きく、体を反転させてトゲの生えた尻尾でハンターたちを、薙ぎ払う。
尻尾の一撃で吹っ飛んでいくハンターたち。ルリハの背中に乗った要塞戦艦から砲弾が発射されて、ハンターたちを撃破していく。
「ぐぁぁぁ! なんだこのモンスターは、砲台を備えてやがる?」
空中に吹っ飛んだハンターの言葉に、反論するルリハ。
「モンスターじゃありません、怪獣です!」
ルリハのハンター蹴散らしに、腹を抱えて大笑いをするクリスタル。
「あはははっ、愉快愉快、久しぶりにハンターが劣勢で慌てふためいているのを見た……いつもは尻尾を切断されて、持ち去られていたから……それじゃあ、あたしもモン〇ター・ハンターに攻撃を」
クリスタルの口から発射された三日月型の光線が回転して、木々を切り倒し、下敷きになったハンターたちの呻く声が聞こえた。
◇◇◇◇◇◇
数十分後──モン〇ター・ハンターVS怪獣少女の戦いは、ルリハの加勢で怪獣少女の圧勝に終わった。
仲間に支えられて去っていく傷ついたハンターたちに向って、電撃尻尾を振りながらクリスタルが言った。
「来年来やがれ! はぁスッキリした」
◆◆◆◆◆◆
湖のクリスタルに別れを告げて、荒野を四つ這いで進むルリハの、背中の戦艦の甲板では竜子の一人焼肉パーティーが開催されていた。
「肉うまっ」
焼いた謎肉を箸で口に運ぶ竜子。
ルリハのお腹が鼻先に漂ってくる肉の匂いに、ぐうゥゥと鳴る。
「あたしも、お肉食べたいです……あっ、でも怪獣ってナニ食べるんですか? クリスタルさんは湖の怪魚を丸呑みしたって言っていましたけれど……あたし、ナニ食べているんですか?」
竜子の手から持っていた箸が、甲板に落ちる。
「ついに、その質問がルリハの口から出てしまったか」
竜子が木製のカップに入った飲み物を、一口飲んで言った。
「怪獣がナニを食べているかなんて……考えなくてもいいだろう……フンとか尿は歩きながら、無意識に排泄しているんだから……ナニか食べているんだよ」
首を横にルリハ。
「いやいやいや、ちょっと待ってください……コレって重要な質問ですよ、あたし肉食なんですか? 草食なんですか? それとも雑食なんですか? まさか、電気とかウランとかオイルを体に取り入れているはずないですよね」
野菜を焼きながら、竜子がルリハに向って呟く。
「食べたかったら草でも木でも土でも、同じ怪獣少女でも食べたらいいだろう……気にするな」
「気にします! そう言えば、あたしって睡眠しているんですか?」
「しているぞ……四つ這いで歩きながら、短時間睡眠だ……左右の脳を別々に眠らせてな……時々寝ぼけてニヤけている」
「さっき聞き流しちゃったんですけれど……オシッコも、四つ這いで進みながら無意識に垂れ流し?」
「そうだ……世の中には知らない方がいい領域もある、ルリハはその領域についに踏み込んでしまったな」
涙目でルリハが言った。
「あたしって、いったいなんなんですか!」
甲板で、一人焼肉パーティーをしている竜子が。
「怪獣少女」と、答えた。