第2話・ルリハの体は謎が多すぎる
ルリハが、竜子と骨伝導で会話をしていると──艦内に警報が鳴り響き、敵機の接近を告げる謎のアナウンス声が響いた。
「前方、二時の方角……ロウソク岩群の方から、大型空挺爆撃怪獣少女『サファイア』の生体戦闘機編隊接近中」
竜子とルリハに緊張が走る。
キャプテン・竜子が謎のアナウンス声に訊ねる。
「生体戦闘機編隊の機体数は?」
「三十機……すべて、サファイアの体から生まれた子機体です」
「やっかいな数だな……ルリハ、戦闘体勢へ移行」
慌てるルリハ。
「ちょっと、待ってください竜子の他にも誰かいるんですか? 今の敵機襲来のアナウンスしたの誰? 大型空挺爆撃怪獣少女って何?」
「怪獣がゴチャゴチャ考えるな……ルリハの砲口から【超波迎撃怪獣砲】発射準備」
「今の指示、誰に言ったんですか? いったい、あたしの体ってどうなっているんですか?」
ペットボトルの水で喉を潤しながら、キャプテン・竜子が言った。
「質問は却下する……ルリハ、口から火を吹く準備をしろ、怪獣なんだから、一度くらい火を吹いてみろ」
「ムリです」
◇◇◇◇◇◇
ルリハは、前方から巨大な飛行怪獣を中心に、飛んでくる編隊を見て泣き出しそうな顔になった。
「どうして、毎回毎回、あたしの進行を邪魔する怪獣少女や、軍隊が現れるんですか」
竜子が答える。
「それは、ルリハが怪獣だからだ」
竜子が電声管を通して艦内に指示を伝える。
「要塞戦艦の砲台と、ルリハの体にエネルギーの供給を……」
「だから、いつも誰に指示を出しているんですか?」
キャプテン・竜子は椅子から立ち上がると、舵輪を回してルリハの舵をきった、ルリハの体は竜子が舵輪を回した方向に動く。
キャプテン・竜子が笑みを浮かべながら言った。
「怪獣少女の進行を妨害するな……止めるもんなら止めてみろ!」
竜子が足者のアクセルを吹かすと、ルリハの脳内にヤル気ホルモンのドーパミンが迸って。
ルリハの四つ這い歩行の速度が速まった。
ワケがわからない表情でルリハが呟く。
「あたしって、いったいなんなんですか! 自分の意志で動いているんですか? 艦内の操作で動かされているんですか? どっちなんですかぁ?」
◇◇◇◇◇◇
ルリハの前方に、接近してくる飛行怪獣少女の全貌が、目視できる距離まで迫ってきた。
エイのような体の底部に手足を広げた、マイクロビキニの少女が埋もれたような格好で、飛行してくる大型空挺爆撃怪獣少女。
サファイアの周囲にはサファイアが生み出した小型の子怪獣少女サファイアが群がって飛んでいる。
サファイアが言った。
「ルリハ、久しぶり……今回は戦闘機タイプの娘たちで遊んであげる……あはははっ」
サファイアは体内で自分の分身の生体爆弾や、生体戦車や生体兵士を作り出して。
生体爆撃もすれば、空挺隊生物を降下させたり、生体戦車も落とす。
ロウソクみたいに立ち並ぶ、ロウソク岩群の数本を怪獣機体の巨大な胸部接触で破壊しながら飛んできたサファイアは、ルリハに攻撃を開始した。