反省会、心を鬼にした主人公、どんなにつらくても現実を見据えることが成長につながる
首を傾けて生徒たち、そして観客たちを見回し
「君たち」
ニィと口端を吊り上げ問いかける
「”レイレイ君”の”は・い・い・ん”が分かるかな」
戸惑いの顔が並んでいる、ある者は目を泳がせ
ある者は息が詰まったように絶句している
やはり、わからないようだ
生徒たちの中を左に歩きながら静かな、しかしよく通る声で
「レイレイ君は敗北した、何故か?」
「兵力に乏しかったからだろうか?」
「築いた”砦”が玲瓏たる大要塞ではなかったからだろうか?」
振り返り右に歩きながら続ける
「ティトウス君があまりにスゴイ戦術を用いたからだろうか?」
「それとも、レイレイ君に神々のご加護(笑)が無かったからだろうか?」
生徒たちを振り返り手を広げて告げる
「これらは全て、誤りだ」
声を張り上げる
「レイレイ君の敗因、それは」
「戦術の欠如、だ」
生徒たちを見回す
絶句したまま固まっているようだ
彼らには”戦術”が何なのかすら分からないのだろう
そのような形を持たないものが勝敗を定めるとは思いもよらないのだろう
ピッカピッカした剣やスゴイカターーーーイ鎧によって
勝敗が決まると思っているのだろう
「ククク」
つい、嘲笑してしまう
勿論、私は戦術が低級なものである事を知っている
その”先”がある事を知っている
真に勝敗を定めるのが戦略や兵站である事を知っている
だが、それらはあまりに高尚すぎる
平均的な人間への”教育”は初歩的な事から始めるものである
低級な事から始めるものである
”本当の才覚”を備えた者にとっては時間の無駄以外のなにものでもないのだが
この場所には”神童くん”しか存在しない
つい、心配になってしまう
これから王国の中枢を担うであろう若者たちがこの水準では
王国の未来はどうなってしまうのだろう?
衰亡の坂を転げ落ちていくのではないだろうか?
破滅の岸から飛び出していくのではないだろうか?
奈落の底へ墜落していくのではないだろうか?
勿論、王国がどうなろうと私には関係のない事である
”強者”には関係のない事である
だが、可哀想な弱者たちは困るだろう涙するだろう
”王国”のような空想上の存在に縋らなければ
生きていけないような純朴な人々は
悲嘆に暮れるだろう嘆き悲しむだろう転げまわるだろう死ぬだろう
まア、その光景は面白そうではある
だが、私とて悪魔ではない
認めたくはないものだが、優しい心もある悪魔である
「”講義”をしてやらないといけないようだな」