叱るだけでは人は伸びない、褒めるだけでは人は失敗に気づけない、生徒たちの実力を知り主人公が下した決断とは?
「すーばーらーしい」パチパチ
ゆっくりと大きな声で、胸を反らせ拍手しながら
”群れ”に割り込んでいく
”神童くん”たちが一瞬、硬直する
鳩が豆鉄砲を食らったような顔
雉が水鉄砲を食らったような顔
鷺が肘鉄砲を食らったような顔
「フフッ」
つい、笑みがこぼれてしまう
私に褒められる事がよほど意外なのだろう
まるで天上より賞賛の声が降ってきたように感じているのだろう
まア、間違いではない
だが・・・・
お子様たちの涙ぐましい努力を無下にしてやるほど私は非情ではない
心の無い自動人形ではない
「私も無垢な”神童くん”の仲間なのだな」
つい、自嘲してしまう
首を傾けて、自身の甘さにあきれてしまう
目の前でティトウス君が引きつった笑顔で固まっている
手を大きく広げ、薄い笑みを浮かべて賛辞を述べてあげる
「みーごーとでした、流石は王国の柱、”ミスラ魔法学園”
に、通えるほどの人財、いや、逸材、の、面目躍如
こんな演習であるとはいえ、あんな相手であるとはいえ
力を尽くして勝負に臨んだことは堂々たる騎士道精神の発露ではあるでしょう
機知に富み縦横自在に兵を動かす事だけが価値ではない
言われたことに素直に従う真っ直ぐさ、がむしゃらでひたむきな努力
それは将の資質ではなくとも兵隊にはふさわしい!」
ティトウスは硬直した笑顔で頭をかきながら
「あ、あはは、それはどうも、うれしいなあ」
ラカヌニントスが言った
「えー、えと、ティトウス君の将軍ぶりは実に見事なものでした
あなたは本当に優秀です、これほど見事に集団を統制できるならば
必ずや将官として大成するでしょう」
ペリペリペリパリパリパリと木の皮を剥がしている女に向き直る
「なーかーなーかの健闘ぶりでした、たとえ戦術が分からなくても
兵站が分からなくても、あきらめずに戦い抜く姿勢
それはあらゆる仕事、いや、人に使われる仕事に限っては、ですが
真にUsefulな資質だ、誇りを持っても良いのですよ」
レイレイが風呂に入れられる猫のような顔でこちらを見た
ラカヌニントスが言った
「高地をそのまま押さえるのではなく、その広さ、兵力に対しての広さを
計算に入れ要地にのみ砦を配置する判断
押し込まれたときに牛車で円陣を組み即席の陣地を作る判断
何れも的確でありました
惜しくも敗れてしまいましたが
戦車隊のゴーレムが迅速な反撃を自主的に行ったことは
あなたの戦術教育の優秀さを証明しています
将官としてのあなたの資質は非凡なものです」
ラカヌニントス君は生徒のフォローに必死のようだ
深窓の御令嬢の玉のような心を傷つけまいとしているのだろう
だが・・・・・
人間は敗北から学ばなければ成長しない
”自らの欠点を直視して改善し続ける”
これを出来ない者が最終的な勝利を得る事は決してない
「私が”反省会”をしてあげよう」