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灰墨の碑  作者: ゴミ
14/32

初めての戦い、そこに示される生徒たちの実力とは?

「ゴーン」「ゴーン」「ゴーン」


”開戦”の合図のかねが鳴る


「さアて、お手並みを拝見、といこうか」


練兵場の東端と西端にある陣幕から

小さな小さな人馬の群れがわらわらと流れ出る

東端の兵は赤い布を腕や首に巻き付け西端は青である

南端のやぐらからは”両軍”の動きがよく見える


げきを持った兵、弓を持ち矢筒を背負った射手

弩を背負い腰に矢筒を下げた弩兵、四頭立ての戦車


東端のティトウスの兵は山のふもとを進み平野に出る

列は列を成していない、雑然として長く伸び騎馬は広く散らばっている


「無様だな」


つい、失笑してしまう

何故、隊列を組まないのだろう?

何故、”群れ”に留まっているのだろう?

何故、”軍隊”をやらないのだろう?

”演習”だからだろうか?


真に強力な軍隊とは一糸乱れぬ隊伍を組んで機動するものだ

幾千万いくせんまんユニットが一歩としてたがう事無く

足並みをそろえて進軍する、そのとき大地を踏みつける

ザッザッとする音が重なって聞こえることは無い

それは完璧な一音なのである

方陣は正四角形、鶴翼なら完璧パーフェクトな半月の形を成し

追い風をセイルのいっぱいにみなぎらせた帆船が

水上を滑るが如くに千里を疾駆する

たとえ山があり渓谷があり河川があろうとも整然たる隊列のほころぶことはない


ひるがえってあの”群れ”はなんだろう

擂鉢すりばちにいっぱいの小豆あずきを抱えたゾンビがスッテンコロリンと

ひっくり返ってぶちまけられた小豆あずきのようなあの”群れ”はなんだろう?

しかも先頭をゆくのは牛車である

酒の入った筒を荷台に積み上げた不格好な牛車である

”群れ”は立ち止まり、またしばらく進んで立ち止まり

先頭から筒を回して酒を飲む


つい、苦笑してしまう


前方を戦闘部隊が進み、後方に補給部隊が続く

これが進撃の基本である

遅く、戦闘力のない補給部隊を前方に配置する



この”独創的いのべーてぶ”な発想はどこから生まれたのだろうか

ティトウスくんは他人と違うことがやりたくて仕方が無いのだろうか?

パンの下にベーコン(ベイケン)き、頭に靴を乗せ

足に帽子をきたがるお年頃なのだろうか?


案の定、足の遅い牛車はユニットの行く手をふさ

坂に段差につっかえつっかえして行軍を遅らせる


「無残だな」


目もおおわんばかりの惨状と言うほかない


反対側はどうだろう


”物資多め”のレイレイちゃんの兵は練兵場の西端と中央の間にある

高地にたどり着くとの中に点々とある丘に拠って壁をめぐらし始めた

”酒の入った筒で”、である


「フフッ」


つい、吹き出してしまう

何がしたいのだろう?


守りを固めているつもりなのだろうか?

貴重な物資を壁として用いるつもりなのだろうか?


もしかして


”物資”の重要性がわからないのだろうか?


残念ながら・・・・


それは大いにありえる事だ

太古より、愚かな軍人は”物資”の重要性を理解しない、いや、出来ない

何故なら、軍人と言うのは刀で敵をぶった斬る事しか頭にないからである

やいばの鋭さを誇り弓の張りの強さを誇り

じ切った敵の首を頭上にかかげてはドンドンと太鼓を打ち鳴らし

服を脱ぎ捨て力こぶを作り、己が筋肉を見せつける事しか頭にないからである


キリクテペからバンデーまで多くの軍隊が”物資”の不足により敗北してきた

圧倒的な数を誇りながら、強力な武器をたずさえながら

矢の欠乏によって、あるいは食料の欠乏によって破滅してきた


多くの人々は戦いの帰趨きすうを定めるのが

強力な武器や華麗かれいなる戦術だと思っている

堅甲を着こみ強弓ごうきゅうを射かければいくさに勝てると思っている

だが、”勝敗”はそんなところでは決まらない

強力な魔法や鋭い穂先が勝利を呼び込むことは無い

真に勝敗を決めるのは・・・


レイレイ軍の東端の騎馬が馬首をめぐらせ西端の陣幕に向かって駆けだした


始まったようだ

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