第6章 青水侯爵への報告と決意
キラ、ティア、そしてリュイは侯爵邸の大広間に案内され、フルーメ・メルクリス侯爵と対面した。青いストレートの髪が彼女の静かな威厳を際立たせているが、疲労の影がその顔に浮かんでいた。
「お帰りなさい。浄化の力が一部戻り始めたという知らせを聞きました。ご尽力、感謝します。」
フルーメが穏やかに微笑むが、その瞳には緊張の色が見えた。
キラが一歩前に出て説明を始めた。
「はい。しかし完全な解決にはまだ時間がかかります。川の汚染源を調査する中で、『カラスタイト』という特殊な鉱石が使われた錬金装置を発見しました。」
彼はグローブを外し、装置の構造を描いた簡易図を取り出した。
「カラスタイト……それは橙土島でしか採掘されないものです。」
フルーメの表情が険しくなる。
「はい。そしてこの鉱石が、中央島と密かに取引されていた可能性が高いです。浄化力を反転させる技術は、この装置の性能と規模を見る限り、中央島と橙土島の錬金術によるものかと。」
キラの言葉に、リュイが補足する。
「浄化の兆しは確かに感じられますが、中央島がこれ以上の妨害を企てれば、回復が遅れるどころか再び危機に陥る可能性があります。」
彼の声はどこか感情的だったが、治癒師としての専門的な分析は信頼感を与えた。
フルーメは深く息をついた。
「もし橙土島と中央島が手を組んでいるとしたら……青水島が再び浄化の力を取り戻すことは、彼らにとって都合が悪いということでしょう。ポーションの生産が回復すれば、今まで通り他の島への供給が行き渡ります。そうなると大きな軍隊を保有する赤炎島が中央島にとって不安要素になる可能性があるのです。」
フルーメは眉を寄せ、深く考え込んだ。
「青水島が力を取り戻すことは、島民にとって必要不可欠です。それが他の島との緊張を生むなら、それでも構いません。しかし……」
その声はどこか揺らいでいた。
フルーメは息を整え、毅然とした表情に戻った。
「まずは、残る水源の調査を急いでください。浄化装置を完全に復旧させるためには、島中の力を循環させる必要があります。また、橙土島の取引に関する証拠が掴めれば、中央島への牽制材料として利用できます。」
キラは力強くうなずいた。
「分かりました。僕たちで浄化の力を取り戻し、島を守ります。」
「お願いします。私は秘密裏に赤炎侯爵とコンタクトをとりましょう。」