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第4章 中央の大滝 敵の妨害とリュイの協力

森の泉の汚染装置が爆発し、これ以上の調査ができないため、3人は調査を終えたあと、島全体に広がる汚染が、泉だけが原因ではないと結論づけ、次の目的地、『中央の大滝』へむかう。


リュイが地図を指差しながら島の水源について説明する。

「水源はあと三つ。中央の大滝、西の大湖、全ての源の山の源泉だ。」


「あと3つの水源にも汚染装置があるかもしれないから、全部調べなきゃね。」

ティアは気合十分と言ったふうだ。


「汚染の原因が分かったし、何より泉は回復したんだから、僕たちなら、解決できるさ!」

キラが前を向いて言った。


大滝は轟々と流れる水音を響かせ、圧倒的な存在感を放つ。島全体に浄化された水を供給する重要な水源であり、ここが汚染されていれば島の生態系は壊滅的な影響を受けるだろう。


「あれが中央の大滝か…」キラは山の麓で立ち止まり、仰ぎ見る。キラの背中に漂うわずかな緊張を察知し、ティアが隣に立った。


「ここから見てもとても大きな滝よね。すぐに装置が見つかると良いんだけど。」

ティアが言葉を投げかけるが、キラの頭に浮かぶのは装置を探す困難さとは別のことだった。


1つ目の水源、森の泉で発見した汚染装置。その爆発は単なるトラップではなく、何か重要な証拠を隠すためのものだったのではないか。この疑念がキラの胸に小さな棘のように刺さっていた。


「おいおい、そんな暗い顔するなよ、キラ。」リュイが軽快に肩を叩いてきた。

「俺たちは森の泉を浄化できたんだ、自信を持とう。余計な心配は後にして、今は目の前の問題に集中しないとな。」


「…分かってる。」

キラはそう答えたが、リュイの明るい態度の裏に、彼自身の気負いが隠れていることに気づいていた。


---


大滝の滝壺にようやく到着したキラたちは、言葉を失った。目の前に広がる大滝のあまりの大きさに、滝壺の神秘的な世界に圧倒されてしまう。 遥か上空から水流が、無数の銀糸のように空中を舞い、地面に到達する直前に一瞬の輝きを放ちながら、雷鳴のような轟音を轟かせて降り注いでいく。

滝壺はその衝撃を受けて、怒涛のような水の渦を巻き起こし、白く泡立つ水面はまるで銀色の霧のように立ち込める。滝の力が地面にぶつかるたび、あたり一帯には霧のような水滴が飛び散り、太陽の光を浴びて七色の輝きに変わる。まるで天と地が一体となり、無限のエネルギーがここで循環しているようだった。


キラが錬金術の力を捉えようと注意深く滝の様子を観察する。するとある違和感に気づいた。流れている滝より、あたりに散らばる水飛沫や滝壺の方がより汚染されているのだ。



キラは状況を2人に説明する。


リュイも考えを巡らせる。「滝の勢いを考えると、底に沈めるのは無理だな。もっと別の場所に仕掛けられているかもしれない。」

その時、鋭い矢が地面を貫き、キラたちの会話を断ち切った。


「中央の刺客か…!」

リュイがすぐさま、短剣を構え次の矢を叩き落とす。


暗闇から刺客が数人姿を現した。キラたちの行動を阻止するために送り込まれた者たちだった。


「動きを鈍らせる!」キラが叫び、地面に手をついて紫の光を放つ。その魔力が足元に広がり、刺客たちの動きが遅くなる。しかし、敵はただでは引き下がらない。ティアが赤と黄色の光が相手に向かって放ち、ひとときの隙を作るも、刺客たちは簡単には崩れず、3人はどんどん追い詰められていく。


その瞬間、ティアが足元に気を取られ、体勢を崩した。

「あっ!」

その隙を突いた刺客が放った矢が、ティアをめがけて飛んで来た。


「ティアちゃん!!!」キラが叫んだ。その瞬間、リュイが飛び込みティアを庇う。矢がリュイの腕を掠めた。

どさっ。リュイはティアを抱きかかえ、地面に倒れ込んだ。血がじわじわと彼の腕を伝い、白いシャツが赤く染まっていく。

「リュイ!」ティアが驚き、必死に彼を支えようとする。

「…平気だ。」リュイは辛うじて笑みを浮かべながら、息を整える。

「こんなもの、大したことないさ……キラ、滝の裏に何かあるかもしれないぞ!」


「僕が目眩ましを作る!合図で走って!」

キラが手を広げ、青と紫の光を混ぜ合わせた。滝の飛沫に光が反射して、視界を歪める幻影が生じる。敵が一瞬躊躇した隙を見逃さず、ティアが緑の力を使い、敵の足元に蔦をはわせた。視界が歪んだと同時に、足元に突如できたトラップに対応できず、敵はキラたちの姿を見失った。


 敵の目を欺き、3人は滝の裏の空間に飛び込んだ。水しぶきの音に混ざり、刺客たちの気配が遠ざかるのを耳を澄ませて確認する。湿った岩場に囲まれた暗い洞窟は、ひんやりとした空気に満ちていたる。


「これで少し時間を稼げる…」キラは肩で息をしながら言った。

「私のせいで……本当にごめんなさい……!」ティアの声は震え、瞳に溢れる涙が頬を伝う。

彼女の肩が小さく震えるのを見て、リュイは軽く肩を叩きながら笑みを浮かべた。

「ティアちゃんが無事で何よりだよ。俺なんて、ちょっとかすっただけだ。それに――ほら、君の治癒の才能も試せるじゃないか。」

「ええ?私が?…本当に私で大丈夫……?」ティアの声はかすかに震えた。

「大丈夫さ。俺がいる限り、失敗なんて怖くない。さあ、やってみて。」リュイは優しい口調で促す。


ティアは深呼吸し、軟膏を手に取ると目を閉じて集中した。指先に緑の光が灯り、それがゆっくりとリュイの腕に浸透していく。

「……うまくいった?」ティアが不安そうに顔を上げると、リュイは腕を動かしてみせた。

「すごい!血が止まったし、痛みも消えたよ!初めてでここまでできるなんて、天才かもな!」

「何言ってるんだよ、治ったなら早く行こう。」

2人の様子を見守っていたキラは小さく安堵の息を漏らし、リュイの軽口を止めた。

「冗談だ。そんなムキになるなって。」リュイは笑いながら、立ち上がった。


「浄化装置を探すには、この奥を進むしかないわね。」ティアが光を灯して洞窟の奥を指さす。

「そうだね、だけどこのままじゃ、すぐに見つかるから、ちょっと待って。」

キラが紫と青の光石を取り出し、両手で握りしめると、2つの石が淡い輝きを放ち始めた。石から流れ出る光は、空中で絡み合い、薄紫色の膜を形成していく。

「これでよし!」キラが満足げに頷くと、洞窟の入り口は光の膜に覆われ、やがて岩肌と一体化して消えたかのように見えた。

「これでよし!」

「何をしたの?」ティアが首を傾げてたずねる。

「外からこの洞窟を見えなくした。」そう答えたキラの表情に、わずかな影が差した。

ふと胸に去来する不安――あの刺客たちは、ただ浄化を妨害するためだけに送り込まれたのだろうか?それとも、この奥に隠された何かを守るために……。 背後からの気配を警戒しつつ、3人は奥へと足を進めた。


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