01 異世界の勇者を召還するスキル
「ああ……。女神様。今日も領地の住民が、安寧でありますように……」
私は、女神像に祈りを捧げた。
私の名前は、リナ・スピネル。男爵令嬢だ。
そして、修道女でもある。ちょっと、勉強のために王都に学びに行ったんだ。
――バタン
誰かが、教会に入って来た。乱暴にドアを開けて……。壊れたら、修理してよ?
「リナ様。今年も麦が全滅です……。これで、3年目になりました。もう……、我々も限界です」
領民が、状況報告をしてくれた。
「大~丈~夫~よ~。あーしがいんだし、ドンと構えてて!」
あーしは、胸をドンと叩いた。
――シーン
村人が、静まり返った。あーしの言葉に安心したのかな?
あーしの言葉には、不思議な説得力があんのよね~。
「で……、ですが。もう食べる物がなく、この冬は、過ごせそうにありません」
う~ん。貴族は、飢饉の時に領民に麦を提供する義務があんのよね~。
それも、底を突いてしまったか~。
「麦の実が枯れる病気……。もう土地を捨てるしか……、生きる術が思い浮かびません」
「え~。困るよ~。領民が減っちゃうじゃん?」
ちょっと、ちょっと!
思い止まってよ。
でも、もう手詰まりなのは、変わりがない。
そんな時だった。
――ピカ
背後の女神像が、光り出した?
「「「おおお? リナ様、何を?」」」
あーし? 何もしてないよ? 毎日お祈りを捧げてるだけ。
『シスター、リナ……。貴女の祈りに応えましょう』
頭に声が響いた。これ、女神様の声?
領民たちにも聞こえているみたいだ。
『さあ今こそ、欲しい技能を選びなさい……』
ふむ?
「「「リナ様。今こそ農業関連の魔法か技能を!」」」
領民たちが、期待の眼差しをあーしに向けてんだけど……。
う~ん。でもそれじゃあ、目先の問題を解決するだけだな~。
「領地の問題を解決する人材を集める技能! これっきゃない!」
うん、あーし賢い。自画自賛しちゃう!
領民たちは、唖然としていた。
『えーと……。もっと単純に……、名詞か単語にして欲しいんですが……。人材を集める? それも条件付きで? 人材派遣?』
「今のさ、麦が枯れちゃうのもさ、植物に詳しい人が、領地に来てくれれば解決する訳じゃん?」
「「「……」」」――シーン
うん、誰からも反論がない。
あーしの発想力に着いて来れないんだな~。
『……』
あれ? 女神様? 黙んないでよ?
女神様的にも意外だったのかな?
『そ、それでは……、異世界の勇者を召還する技能を授けましょう。異世界召喚魔法です』
あれ? 予想外の技能が来たぞ?
それと異世界の勇者って、誰?
この世界の学者を、偶然を装って呼んで欲しかったんだけど……。




