一話 宇宙からのメッセージの謎
この作品は、三話で完結する事を予定しています
宇宙人から送られてきた最初のメッセージは
<その星を出なければ、お前たちに死が訪れる>だった。
そのメッセージが来たのは3年前。
それから各地にあんまり怖く無い見た目の宇宙人がやって来て、人類は彼らをナメ腐った。
でも宇宙人は思ったより危険で、大統領だのマスコミだの目立ってる人を攫っていき始めた。
もちろん銃で抵抗した人もいるけど、そうやって抵抗した人も無理矢理連れ去られた。
……あらかた有名人を攫いつくした宇宙人どもは、見境なくたくさんの人々を今も攫い続けている。
連れ去られた人たちの行方は今もわかっていないが、生存は絶望的という説が有力だ。
さて、俺は疑問に思っている事がある。
なぜ宇宙人はメッセージを送って来たのだろう?
通説によると、連中は悪意があるから人類をビビらせるつもりで送って来たのだという。
要するに嫌がらせという事らしいが、所詮は通説。
真実が思いもよらないものだったなんて、よくある事だ。
そういうことを考えながら俺は閑散とした街中を歩く。
晴れだというのにデッカイ傘をさして。
これは日傘じゃなくて迷彩傘、傘の色と模様はこの街のアスファルトによく似ている。
宇宙人の船に見つかれば連れ去られるから、こんな風にしなくちゃいけない。
今日も空にはよくピンクの飛行機っぽい何かが飛んでるはずだ。
傘で空は見えないけれど、綿菓子作りマシンを壊れたまま使ってるみたいな音が今もしてる。
この音は、宇宙人の船が飛んでる証拠。
俺以外、街中に人がいないのも、攫われるリスクを恐れる人ばかりだからだ。
さて、俺が向かっているのは住処だ。
今日は"用事"を済ませたから、とっとと帰りたい。
人気の無いショッピングモールに入って、そこを経由で地下街に入った。
地下鉄の駅と直接つながってるタイプの場所だ、電車はもう動いてないけど。
ここは地上と比べて活気がまぁあり、人はまばらながらいる。
ちょっとした機械を修理する店とか野菜を売ってる店だったり、経済も一応あるのだ。
今地球に残っている人類は、基本的に各地域の地下街で過ごしている。
宇宙人がなぜか地下に入ってこようとしないから。
そういうわけで地下が俺達人類の生存圏。
だから、沢山の人がここにいる。
まぁともかく、とっとと俺の仕事を済ませよう。
俺は地下街を南に歩く。ちょくちょく人とすれ違った、だいたいの人は暗い顔してる。
ちなみに電気は通って無いから、あちこちに点在する電池式ライトが主な明かり。
俺も腰にちっさいライトを下げてる、停電用兼地上での夜間活動用。
そして二十分程歩くと、テントがあった。
安価のくせに値段以下の性能しかない最悪なテントだが、この時代には豪勢な住処である。
警備っぽい男も二人、傍にいる。
「あのー、俺です。トワ・レルメクです。ルニクスさん、仕事完了しました」
俺はテントに向かって名乗る。
このテントには、対宇宙人組織のリーダー、ルニクスが住んでいる。
「よう、トワか。久々だな」
あまり特徴が無く印象に残りにくい顔の男、ルニクスがテントから這い出て来て俺の名を呼ぶ。
彼はこの地下における最重要人物。
食料管理や人同士のトラブル解決といった、なくてはならぬシステムをうまく人を用いて管理している。
「"仕事"完了しました」
「おうサンキュ、いつも助かるぜ。」
「はい、ありがとうございます」
「堅苦しいなー、いつまで敬語なんだ」
そんなルニクスが俺に馴れ馴れしいのは友達だったからだ。
宇宙人襲来前は、大学で一緒にスノーボードの実力を競い合っていた仲である。
ルニクスは顔に似合わずこういう時期に使える才能を持っていたようで、宇宙人襲来後はこの地下街全体のリーダー的存在に収まった。
一方俺は、大した才能は持っていなかったので権力だの信頼だの特にない立場。
だから、以前友達だったとしてもタメ口をきくのはまずいのである。
「ルニクスさん、コレをどうぞ」
「おっ」
そんなルニクスに、地図を渡す。
この周辺がどういう様子か俺が書き込んだものだ。
虫が大量発生しているとか、道路が陥没しているだとか、人類が手入れできなくなった街中がどう状況悪化したのかを書いている。
地上を歩くと宇宙人に攫われかねないが、物資調達などで地上にあがらないといけない場合はあるからこういう地図は非常に重要だ。
「お前今回も目聡く見て来てくれたし……報酬金はこのくらいだな」
「おっ、結構ある、ありがとうございます」
宇宙人襲来を受け、フリーの調査員になった俺は、こうやって金を稼いでいる。
とはいえ、金なんてこんな時代に重要かというと微妙だ。
食料はもっと楽な単純作業すればもらえるし、金があっても大した娯楽には使えないし。
「……あ、そうだルニクスさん。宇宙人のメッセージをまた見つけましたよ」
ちなみに依頼と関係なく、各地に点在する宇宙人のメッセ―ジも探している。
それを探すのは、俺がこうしてフリーの調査員になった理由。
「”もはや我々も限界だ”と電気屋のテレビにありました。電源の入ってないモノに映るという異常は、宇宙人の仕業でしょう」
「これから奴らの侵略が強くなる予兆だろうな」
「……そうなりますか?」
「未だ服従しない我々に対し、宇宙人は敵意を強めているのだろう」
ルニクスとちょっとした話をしていて、俺の中で疑問が浮かび上がった。
普段から感じているが、あまり人と話し合う事が無いものである。
せっかくなので、ルニクスにも聞いてみよう。
「ルニクスさん、やっぱりメッセージって謎ですよね?」
「謎?」
「そもそも宇宙人はなんでメッセージを送って来てるんでしょうか」
なんでメッセージを連中は送って来てるのか、いくら調べても調べても誰も手かがりすら見つけられていない。
まったく厄介である。
「脅しだろう。地球人を怖がらせて連中は楽しんでるんだ。だから俺達は、こうして地下に閉じ込められている事になっているのだ」
「……」
ルニクスは、宇宙人のメッセージが”悪意”だと思っているようだ。
俺とは考えが違うっぽい。
「そして俺達がここで耐え忍んでいるのは、戦うためだ。平和と自由のために。人類初の星間戦争を勝ち抜くために、星と星のぶつかり合いにも俺達は挫けない」
すぐ近くにいた警備らが、ルニクスの言葉に強くうなずくのがわかる。
俺の疑問はちょっとした士気向上に使われてしまったようだ。
ルニクスが俺の書く地図を欲しがる理由は物資調達のためだけではなく、彼が宇宙人への反乱も指導しているからだ。
だから作戦のためにも地図を欲する。
正直俺は、宇宙人と戦う以外の道があるんじゃないだろうかと思ってる。だからあんまりルニクスのやってる事を手放しで賛同出来ない。
と言っても、ルニクスまぁ宇宙人が地球人を攫ってるのは事実なので、反乱したくなるのが当然だともわかってる。
だから、ルニクスのやってる事を批判するつもりは別に無い。
だけどやっぱりスッキリしないのである、メッセ―ジが送られてくること。
そもそもなぜ宇宙人はメッセージなんて送って来るんだろう。
それさえハッキリすれば、今よりはマシに宇宙人と付き合えるんじゃないのか?
「ぁ、トワ。お前、明日の作戦には参加するのか?」
俺の疑問をかき消すようにルニクスが質問をしてきた。
「……どれの事ですか?反抗作戦なんてあちこちでやっますよね?死者も出るくらいにハードなヤツ」
ルニクスは宇宙人の船にロケットランチャーを打ち込んだり、狙撃をしたり、色々と攻撃をしかけているらしいが上手くいって無いというのはよく知っている。
「これまでの戦闘は戦果をあげる目的ではなく、本命作戦の準備だった」
「え?」
俺の全く知らない情報が出て来た。
これまで作戦行動は、本命への準備?人が死ぬような作戦が準備にすぎなかった?
いったい本命作戦でルニクスは何をしようとしているのか、恐ろしくなる。
「明日が”本命”だ。エース戦力を大量投入した宇宙人への本格的反抗作戦、後には引けない」
どうやら本気の戦いを明日するらしい。
なら俺はなおさら作戦に参加したくない。
「訓練した事ないヤツ戦闘中は足手まといでしょう?いきなり周囲と連携が取れるわけないし。本命作戦ってそんな不安要素抱えてくつもりですか?」
「……ん?そうだな」
ルニクスの表情は、驚きが隠せていなかった。
俺が参戦する事への懸念事項を全く考慮していなかったようだ。
だがすぐに、平静を取り戻したように硬い顔に戻る。
もしかして今の、お前なりの戯れか?
だというのに俺がクソ真面目に答えたから驚いた?
それならすまん。
それとも、お前が俺を誘ったのは友達だからという事なのか?
本格的な作戦とやらは不安で、友達だった俺に縋る程追い詰められているのか。
それならやっぱり俺はお前の作戦には乗らない。
俺は宇宙人と戦うのが、納得できてないからモチベーションは全くわかないのである。
なのに戦場で頼られたりなんかしたら、結局それはお前の邪魔になる。
どっちの意なのか問いただしても良かったけど、ルニクスの護衛が少々不機嫌そうにしていた。
当然だ。偉い人というのは忙しいので、ルニクスも忙しい。
なのに時間を俺に取らせ過ぎた。
「では、失礼します」
俺はさくそくすたたとその場を退散した。
あまり邪魔しても悪いし。
にしても、本当になんで宇宙人ってメッセージを送ってくるんだろう?
なんで奴らは「死が訪れる」なんて、他人事なんだろう。
あいつらに敵意があるなら「人類を滅してやる」みたいなメッセージになるんじゃないか?
……いくら空から隠れて地上を探しても、ヒントになるものは見つからない。
その答えを知るためにも、次の仕事もしっかりしていこう。