われ、まさかのお魚さんモンスター最弱……
「集まりましたか、皆さん」
その日の夕食の席で、聖女様が沈痛な面持ちで皆を集めた。
海上神殿の食堂の大きなテーブルには、聖女様、その彼氏、聖剣の聖者様、その甥っ子の鮭の人、魔王おばば。
それに黒髪黒目の勇者君と、同じく真っ黒な髪と瞳の、勇者君の親戚のお兄さん。
今、カーナ神国でピアディの仲間として集ってくれている面々が揃っている。
そして、ピアディは彼女の白いブラウスの胸元にひっついて、ぽろぽろと大粒の涙を流している。泣きすぎて大きな青い目が溶けてしまいそうだ。
「ぷぅ……ぷぅうううう……!(あう……うえええええ! えぐっ、えぐっ、うええええん……!)」
聞いているこちらが悲しくなってしまうぐらい、悲痛なマジ泣きだった。声が愛らしいだけに痛々しさ増し増しである。
「大変な事実が発覚してしまいました。ピアディちゃん、攻撃力ゼロなんです」
「しかもそれに比例するように防御力も低いな……紙防御だぞこれでは」
聖女様と聖剣の聖者様が、冒険者ギルドから送られてきたピアディのステータス一覧の用紙を見て、難しい顔になっている。
「ぷぅ!(われ、マンボウさんより繊細ないきもの! いたわって!)」
「よしよし」
横から黒髪黒目の勇者君がピアディの小さな頭を撫で撫でした。
ちなみにマンボウは、変化に弱く、傷つきやすいお魚さんの代名詞である。
ちょっとの刺激でコロッと死んでしまう、よわよわなお魚さんなのだ。
「ぷぅ(このままではわれ、ただのかわいいウパルパに過ぎないのだ……)」
「その自己肯定感の高さ、見習いたいなー」
「己の弱さを認めつつも強みを忘れないとは。確かに自己肯定感高めだ」
聖女様の彼氏と、勇者君の親戚のお兄さんが少し羨ましそうに話している。
「ぷぅ(最強守護者路線でいこうとおもってたのに! これではアイドルでしか生きていけぬのだ!)」
「それでもアイドルならやっていけると確信してるあたり、自己肯定感高いな。ピアディ」
「下がる気配もないですね」
勇者君と鮭の人が微笑ましげに笑っている。
「ぷぅ(魔石を採りにいきたかったのだ……)」
騒ぎをものともせず、夕食を淡々と口に運ぶ魔王おばばを、チラッチラッと見やる。
仲直りの献上品の当てを新たに探さなければならない。
「ピアディちゃん。魔王のお姉様と仲直りはできましたか?」
涙でぐちゃぐちゃの顔を優しくハンカチで拭いてくれながら、小声で聖女様が聞いてきた。
「ぷぅ(あのねあのね。もうちょっとだけ待ってほしいのだ。もうちょっとだけ~)」
(これしきのことでメゲていては魚人族の名折れ! われがんばる!)