おとうたんにも説明したのだ
ダンジョンに向かおうとして引き留めてきた聖剣の聖者様に、ピアディは必死で訴えた。
「ぷぅ!(おとうたん! おとうたんはピアディがおやつ抜きになってもよいの!? そだちざかりよ!?)」
「む? 何の話なのだ?」
首を傾げて疑問符の?を浮かべた聖剣の聖者様に、ピアディは必死で説明した。
いつも優しいはずの聖女様が、あの魔王おばばと仲直りしないと、おやつ抜きと宣言したこと。
いきなり本人に向かって「われと仲良くしろ」などと言えないので、おばばの印象を良くするためにスペシャルでグレートな手土産を献上したいことなどをだ。
「ぷぅ!(ついでにおばばが、われのふぁびゅらすな威光にひれ伏すぐらいのらぐじゅありーなものだとよき!)」
「ふ、ファビュラスでラグジュアリー……な、なるほど?」
話を聞いた聖剣の聖者様はちょっと呆れぎみだった。
「ピアディ。そもそも、お前が姉様を〝おばば〟などと呼んで馬鹿にしたから喧嘩になったのだぞ? 素直に謝ればそれで終わりではないか?」
「ぷぅ……(だってえ。おばばはおばばなんだもん)」
あの魔王おばばは、ピアディの〝眼〟には少女の姿に老女の姿が重なって見える。だから〝おばば〟なのだ。
多分、〝おばば〟が本当の姿なのだろうけれど、若い女の子の姿を装っている。
「ピアディ。姉様と仲直りするなら、私が一緒に行こうか?」
「ぷぅ(だめなのだ! おばばとはわれが対決せねばならない!)」
「そうか。そのやる気を尊重しよう」
ならば、と聖剣の聖者様は別の提案をしてきた。
「ピアディ。お前たちが向かおうとしていた地方ダンジョンは、子どもでも入れる難易度だ。だが挑戦の前には講習を受けねばならぬ」
「ぷぅ?」
「『夏休み子ども冒険者教室』だ。冒険者ギルドのギルドマスターに紹介の手紙を書いてあげるから、それを持って行ってくるといい」
「ぷぅ!」
それから早速ギルマス宛のお手紙を書いてもらい、聖剣の聖者様に見送られながら首都の冒険者ギルドへ向かうことにした。