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みなぎる海のぱわー!

(く、くるしいのだ。お水がしょっぱいのだあああ……!)


 自分も海の中に蹴り飛ばされてしまったピアディ。

 泳げない以前に、海水に慣れていないピアディには厳しい環境だった。


(そもそも、われウーパールーパー! サラマンダーぞ。淡水のいきもの! 魚人だからみんな海に適応してるとおもったらおおまちがいなのだ!)


 ピアディの泳げない理由は、臆病者(チキン)だからではない。生態由来だったのだ。


(むー! むー! むー!)


 何度も呼吸しようとして、でもやっぱり難しくて次第に息が続かなくなってくる。


 とそこへ、ふよふよと近づいてくる小さな生き物たちがいた。


(む? 浜辺でたすけたタコさんと海老さん……いやこの形はロブスターさんなのだ)


 まだ稚魚レベルの小さな小さなタコとロブスターはピアディの近くに寄ってきて、それぞれ口を開いては閉じて、パクパクと繰り返している。

 海水の中での呼吸の仕方を教えてくれているようだ。


(こ、こうなのだ?)


 口を閉じると息ができなくて苦しいし、かといって開けると海の水が塩辛くてやっぱり苦しい。


 けれど、タコとロブスターは何度も何度も同じ動作を繰り返している。

 仕方なくピアディは同じように大きく口を開けた。そして海水を飲み込む。


(えと、えと、われと同じサラマンダーだった王妃様(おかあたま)はどうしてたのだっけ?)


 サラマンダーの形のとき。確か、大きな口を開けて……


(!? そうだったのだ!)


 タコとロブスターが何を教えようとしているのか、分かった気がした。


 海水が塩辛いのを我慢して、大きく口を開けた。そのまま、ごくごくと飲み続けて、お腹いっぱいに海水を満たす。


(む? いがいとへいきかも?)


 むしろこの、お腹の底から湧き上がるような感覚は。


(みなぎる海のぱわー!)


 ぼわん、とピアディの半透明の身体から虹色キラキラの魔力が溢れてくる。

 これはまさに。


(むてきモード!)


 更にどんどん海水を飲み込んでいく。どんどん全身に魔力がみなぎってきた。




 それからのピアディは文字通り〝無敵〟だった。


 よちよちと、ゆっくりしか進めない陸上での動きが嘘のように、俊敏に、縦横無尽に海の中を泳ぎ回った。


(すごいのだ、すごいのだ。やはりわれは偉大なる魚人族!)


 ふと、ピアディは孤独のはずの海の中で、たくさんの気配を感じた。


(む? 海のいきもの……だけど不思議なけはい)


 見回すと、海中に無数のぼんやり光る大小の玉が浮かんでいる

 ただの光ではない。魂たちだ。

 懐かしい感覚がある。どの気配もピアディがかつて知っていたものばかり。


「ぷぅ……(みんな、海の中にかくれてたのだ……?)」


 魂たちが明滅している。ピアディの問いかけに答えてくれているかのよう。


「ぷぅ?(みなのもの。卵たんを知ってたらありかをおしえてほしいのだ)」


 いくつかの魂がチカチカと反応したと思ったら、一筋の道のように魂たちが連なって、海の底を示してくれた。


(すごい深いのだ……くらいけど……こ、怖くなんかないのだ!)


 嘘だ。本当はものすごく怖くて、手足がぷるぷる震えている。


(だけど、卵たんを見捨てるわれではないのだぞ!)




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本作の本編にあたる「聖女投稿」はアルファポリスで書籍化のため、なろう版は削除いたしました。アルファ版ページで連載が続いております。
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