おとうたんの聖剣キラキラ
お仕事のある他の面々と違って、まだ子どものピアディにやるべきことはない。
よく食べて、よく遊び、よく寝ることがお仕事だった。
中庭の涼しい木陰に大きなタライを出してもらい、浅めに水を入れてピアディは行水。
ルシウス君やユキノは足を浸けて涼を取っていた。
「ぷぅ(聖女様はどこいったのだ?)」
「首都の地下ダンジョンの点検だよ。一般公開前に危険がないか、姉様と一緒にチェックしに行ってるんだ」
本当なら聖剣の聖者様も一緒に行くはずが、魔王おばばによって子どもにされてしまった〝ルシウス君〟は少し残念そうな顔になっている。
「ぷぅ(鮭の人や勇者君は今日、海の家にいたのだ)」
「ピアディが浜辺で遊んでたから来てくれたのもあるけど。ほら、昼間、変な大人たちがいただろう? ああいうのが新しいダンジョンが公開されたら増えそうだっていうんで、見回り強化中なんだ」
「ぷぅ」
ルシウス君が言うには、海の近い首都は元々観光地として観光客の多い場所だったそうだ。
けれど近年、国内情勢が不安定だったせいで、良くない人間がいくらか入り込んでしまっているという。
勇者君だけならともかく、お偉いさんの宰相様である鮭の人まで見回りに加わっていたのは、現状把握のためでもあったそうで。
「まあ、悪い奴がいたら、この僕が退治するけどね!」
ルシウス君が手の中に魔力で透明な樹脂の剣を作った。魔法樹脂という、魔王おばば一族に特有の魔法である。
そこにルシウス君の虹色キラキラを帯びたネオンブルーの魔力を込めていくと、透明な剣はあっという間に光り輝く聖剣となった。
近くにいるだけで涼しい風が吹く。強い魔力の塊なのだ。
「ぷぅ(おとうたんの聖剣はいつみてもきれいなのだ)」
歌に聖なる魔力を込める歌聖のピアディとは違って、ルシウス君は聖剣そのものが聖なる魔力の結晶だ。
この剣で斬ったものは何でも強い浄化力で、ケガレや邪悪をお祓いされる。
ちなみに悪い人間が斬られると「じゅわっ」と蒸発させられるとの噂もあるが、ピアディはその現場を見たことはまだなかった。
「お、そろそろ潮干狩りの準備しようか」
陽が落ちてきて、水に浸かった身体も冷えてきた。水気を拭いて、お出かけの準備をしよう。
タライの中の水は、オヤジさんが育てている畑にまくことにした。
大きくなったユキノが軽々持ち上げて、ざばーっと畑全体に散布だ。
真昼に水をまくと熱で作物が傷んでしまうが、陽の落ちてきた今ぐらいの時間帯なら問題もない。
「ピュイッピュイッ(ふたりも聖なる魔力持ちが浸かってたお水だもの。お野菜、おいしくなりそうだよね)」
きっと明日の朝のサラダはピカピカ光っているに違いない。




