お肌しっとり保護ジェルぬりぬり
「ピアディ様、表皮がカラカラに乾いてるじゃないですか。叔父様、ちゃんと保護ジェルを塗ってあげないと」
「ぬっとりした感触が嫌だからって、逃げちゃったんだよねえ」
子どもたちが勇者君の焼くタコ焼きやいろいろ焼きに夢中の間に、ピアディは鮭の人に抱っこされて別のテーブルに連れて行かれた。
ルシウス君も一緒だ。
勇者君の親戚のお兄さんが、トレーに乗せた濡れおしぼりや、それを洗って絞る用の水の入った小さなバケツを持ってきてくれた。
「ぷぅ(そ、そんなことより、浜辺に変な連中がいてひどいめにあったのだ)」
「変な連中?」
と首を傾げる鮭の人に、ピアディはおしぼりで身体や手足の砂をふきふきしてもらいながら、さっきまでの出来事を説明した。
いかがわしい男女の大人たち複数名が、迷惑行為を続けていたことだ。
あまりにもイラッときたのでお仕置きしたが、まだ苛立ちは収まらない。
「ぷぅ(われがおばばなら、海に入るたびクラゲたんに刺される呪いをかけてるとこなのだ)」
「はは、お姉様がそんな甘い呪いで済ませるわけがないです。その場で息の根を止めてますよ」
とりあえず、宰相権限でいかがわしい大人たちの追跡を行ってくれるそうで、ひと安心である。
「それよりピアディ様」
そっと優しく掴まれて、ぷぅ? と鮭の人を見つめると、反対側の手に何やら化粧品のボトルを持っていた。
あの、ぬっとり粘度の保護ジェルの入ったボトルだ!
「ぷぅー!(そ、それはやーなのだ! ぬっとりべったり、やー!)」
「大丈夫です。べたつくのは最初だけですから」
必死に短い四肢をばたつかせて逃げようともがいたが、掴む腕は全く弛まない。
ぶちゅっと指先にジェルを押し出し、そのままピアディのベビーピンク色の半透明の身体に伸ばされた。
「ぷぅう……(ううっ、うえええ……。……あれ?)」
じわっと大きなウルトラマリンの目が潤んだと思ったら、何だか予想していたより感触がするっと滑らかだ。
「皮膚に触れると水状になるジェルなんです。ねっとりしてるのは保存の利便性のためですね」
「ぷぅ~」
まずは背中にぬりぬり。
身体のわりに大きな頭の後ろから、短い首にもぬりぬり。
ひっくり返して、胸元やお腹にも塗り塗り。顔にぬりぬりするときだけはむず痒くて「やー!」とぷるぷる震えた。
あとは短い四肢も米粒のように小さな爪まで忘れずくまなくぬりぬりして完了だ。
「ご婦人方にも人気の保湿ジェルなんです。一度塗れば直射日光の熱や光だけでなく、ちょっとしたダメージからも守ってくれるお役立ちジェルですよ」
相当お高いやつである。
「薬師のオヤジさんがピアディ用に調整してくれたんだ。さっきのビーチボールぐらいなら弾き返せたのにー」
「ぷぅ!(おとうたん、そういうことは早く教えてほしかったのだ!)」
ぷぅぷぅ憤慨している間に、勇者君のいろいろ焼きその他の料理が完成したようだ。
サナちゃんが呼びに来てくれたので、ルシウス君と一緒に子どもたちに合流することにした。