01.覚醒の夜
――戦いの世界で伝説となるのは、いつだって【剣】だ。
――英雄の物語には必ずと言っていいほど、その相棒となる最強の剣が存在する。
――では、世界を救った鎧は?
――決まってる。そんなもの存在しない。
「俺の鎧はもう直ってんだろうな?」
「はいこれ、ベルトも修理しといたから」
一人の冒険者が、新品のようになった金属鎧を奪い取る様にしてギルドを後にする。
向かうはここ、アーデント大陸の一角。
ウインディア王国のダンジョンだ。
地面に突き刺さったまま風化した、見上げるほど巨大な槍斧のオブジェがその目印。
【魔獣の体内】と呼ばれ常に魔物を生み出し続けているこのダンジョンは、アーデント大陸の中でも屈指の難関と言われている。
「おい鍛冶屋! 今すぐこいつを直せ!」
「今すぐって、結構傷んでるじゃないか」
「いいから早く! もう出る時間なんだよ! 順番なんかいいから早くしろっ!」
そんなダンジョン専用ギルドの職員として、鎧鍛冶を行う白銀の髪の青年。
ルカ・メイルズは、今日も無理を押し付けられていた。
「鎧鍛冶ィ、俺のガントレット持って来て」
「オレの胸当てもなー」
「ええと、ガントレットはこれだな。そこの受け取り帳に名前を――」
「早く直せって! もう出るんだよ! 大した仕事でもねえんだからすぐできんだろ!」
「名前を書いて――って、いない」
「おいおい遅っそいなぁ。オレの胸当て早く持って来いってえ」
「そうそう、窓際のテーブルの脚がゆがんでるから直しとけよ」
それはすでに、鎧鍛冶の仕事ですらない。
「いいからこいつを直せって言ってんだろー! 使えねえなあ!」
次々に押し付けられる無理難題に、それでもルカは全力で対応していく。
ガントレットの冒険者にサインを頼み、すでに直し終えている胸当てを探し出す。
怒る冒険者をなだめつつ、緊急の修理に取り掛かろうとしたところで――。
「……魔剣鍛冶だ」
誰かが不意に声を上げた。
ギルド内の視線が一斉にその男の元に集まる。
「オレ最近調子がいいんです! このままいけば騎士になるのも夢じゃない、ぜひ魔剣を!」
「俺たちのパーティもすごいんですよ! ぜひ名前だけでも覚えていってください!」
そして、冒険者たちが我先にその機嫌取りを始めた。
「ど、どけどけっ!」
「痛っ!」
急な修理を依頼してきた冒険者もルカを押しのけて、大慌てで魔剣鍛冶の元へと走り出す。
「緊急だったんじゃないのかよ……」
突き倒され、ため息をつくルカ。
伝説を生むのが一本の魔剣なら、その魔剣を生む魔剣鍛冶はもちろん特別だ。
どこへ行ってもチヤホヤされるのが当たり前。
ギルドや王宮では、彼らを囲ってまで優遇している。
それも当然。魔剣は炎を放ち、敵を凍らせ、剣撃を飛ばす。
そう、特別な力を持っている。
「鎧鍛冶と違って、魔剣鍛冶さまは特別だからな」
そんな慌ただしい光景をしり目に、ふらりとやってきたギルドマスターが言い放った。
「はいはい。よーく分かってます」
対して鎧は、特殊な力を乗せて作成することができない。
英雄として名をはせるのに魔剣は必需品。だが、鎧はそうでもない。
だから鎧鍛冶は、ルカは雑に扱われる。
まして本人は戦わないのだから、鎧鍛冶の扱いなんてそんなもの。
冒険者たちも皆、それを当然だと思っている。
どんなに良い鎧を作ろうと、認められたりしないのが当たり前なのだ。
魔剣の製作に必要な素材を回収しに来たらしい魔剣鍛冶と、その機嫌を取りたい冒険者たちが酒場のテーブルに着く。
「ま、俺には関係ない話か――――ちょっと待った!」
そんな魔剣鍛冶たちの集まりには見向きもせず、酒場を出て行こうとする一人の少女。
ルカは慌てて呼び止めた。
結んだ長い金髪、凛々しさをたたえた翠の瞳。
年齢はルカの二つ三つほど下か。
細身の剣を腰に提げた剣士の少女が、足を止める。
「その小手、ベルトが取れそうになってる」
少女が左手に付けた小手は、二つのベルトで前腕に装着するものだ。
その一つ目のベルトが取れかかっていた。
「今直しちゃうから。ほら、貸して」
ルカが手を伸ばすと、少女は冷淡な視線と共にため息をついた。
「キミはずいぶんと心配性だね」
「戦いになれば何があるか分からないからな。取れた小手が気になって……なんてこともあるだろ」
「このくらいのことで負けるくらいなら、そもそも私に資質がないというだけだ。防具は関係ない」
少女は「やれやれ」といった感じで、小手を取り外す。
「急いでもらえるかな? 貴重な時間がムダになるからね」
小手を受け取ったルカは、すぐにベルトを固定する鋲を交換。
再び少女の腕に巻き着けると、しっかり固定できているかを確認する。
「よし、これで大丈夫だ」
「わざわざごくろうさま」
あくまで冷めた態度を崩さない少女。
それでもルカは、少女の装備をもう一度全て目視で確認してから送り出す。
「――――気をつけてな」
「……言われるまでもない」
少女はすげなくそう言い残すと、足早にギルドを後にした。
「さーて。ここからの仕事は……」
少女を見送ったルカは、バックヤードに積んだ防具の数々を見ながら、この後の予定を見積もっていく。
「新規の作成もないし、この量なら何とか夕飯までにさばけそうだな」
夕時に戻って来る冒険者の依頼は、翌々日以降の受け渡しが基本になる。
この量なら、久しぶりにまともな時間に仕事を終えられそうだ。
「本当? よかったね」
そんなルカのところにやって来たのは、明るく長いブラウンの髪をした少女。
はじけるような笑顔を見せる彼女は、ギルドの受付嬢。
そして、幼馴染だ。
「ああ、この感じなら問題なしだ」
そう言うと受付嬢トリーシャ・クルスは、うれしそうに顔をほころばせた。
「もうずーっと忙しそうにしてるもんね」
「まあなぁ」
「そういうことならさ、今夜は久しぶりに夕食を一緒に――」
「おい鍛冶屋、これ明日の朝までな」
乱暴な物言いと共に、突然カウンターに置かれる防具の数々。
その状態を見て、ルカはため息をつく。
「なんでこんなにボロボロになるまで……もっと早く持って来てくれよ」
「仕方ねーだろ。お前と違ってこっちは現場で戦ってんだ。いいから明日の朝までに直しとけよ――――倉庫くん」
「……はいよ」
「受付嬢は今日も可愛いねえ」
「はいはい、どうもありがとう」
トリーシャに軽くあしらわれた男は、防具一式をルカに押し付けると、さっそく魔剣鍛冶のもとへ駆け寄っていく。
「ちょくちょく修理に持って来るようにって、言ってるんだけどなぁ……」
持ち込まれた防具たちは見事なまでにボロボロ。
しかも、上から下までほとんどフルセットだ。
「……無理はしないでね」
心配そうにするトリーシャ。
それでも、ルカは自身の職務を全うする。
「こりゃ……今夜も遅くなりそうだ」
◆
ギルドでは、飲食はもちろん宿泊も可能となっている。
夜も更け、かすかに聞こえてくる酒場の盛り上がりの中。ルカは鍛冶場で一人仕事を続けていた。
それは本来二人組で行っていたものだ。
しかし相棒だった中年の職員が田舎に帰ってから、増員は行われていない。
「インベントリ」
置かれた肩当てを前に、スキルを発動。
すると右手の平頭ハンマーが、一瞬で丸頭のものに切り替わる。
肩当ての形を迅速に整え、さらに丸頭ハンマーをヤスリに切り替える。
最後に細かな傷を消して、修理完了。
「よし、こんなところかな」
ヤスリを戻すと、今度は修理したばかりの防具もインベントリに収めて外へ出る。
このスキルこそ、ルカが『倉庫くん』と呼ばれる理由だ。
皆は物の出し入れができる【アイテムボックス】だと思っているが、その実態は収めたものを自在に着脱することのできるスキル。
ルカは防具の製造修理が早くなるだけの【鎧鍛冶】スキルと、【インベントリ】による素早い道具交換を組み合わせることで、どうにか仕事を早めてみせた。
そんな努力によって生まれた技で、「一人でも鍛冶は回る」と受け取られてしまったのは皮肉でしかないが。
「装着」
インベントリを起動して、直した鎧一式を身にまとう。
「よっ、はっ」
手にした模造の剣を振り、動きに干渉する箇所等がないかを確認。
「よし、問題なさそうだ」
ある程度パーツの多い鎧は、実際に使ってみないと分からないことも多い。
だからこうして自ら装着して、確認するのがルカのやり方だった。
命を預ける装備。
だから今もこういった確認作業を怠らないし、剣や槍などの練習も欠かしたことはない。
「……こうやって鎧を着て剣を振ってると、やっぱりワクワクしちゃうなぁ」
ルカは、王国騎士になるのが夢だった。
ただ少し変わっていたのは、フルプレートのカッコよさに魅せられていたことだ。
もちろん剣は戦の華だが、ルカは全身鎧の重厚さが大好きだ。
あんな鎧を身にまとい、前線で戦うことを夢見ていたほどに。
直した鎧をインベントリに戻し、再び鍛冶場へと帰って来る。
部屋の片隅に並んでいるのは、ルカの作った1/8サイズの甲冑たち。
その中から一体手に取って、眺める。
「ま、今時全身鎧なんて使われないけど」
その難点は、なんと言っても重量。
装着者の機動性を大きく下げるのはもちろん、持ち運びにも向かない。
さらに、上位の魔物などが放つ攻撃は平気で鎧を貫いてくる。
それなら急所だけを守り、あとは支援系スキルに任せて戦う方が効率もいい。
それでも堅い守りが必要な場合は、盾を使うのが定番だ。
よって今、ルカが憧れるような甲冑をまとう者など見かけない。
「……なんか食べておくか」
腹が鳴ってようやく気付く。
夕食の時間はとっくに過ぎ去っていた。
鍛冶場を片付けて、ルカはギルド備え付けの酒場へと向かう。すると。
……なんだ?
聞こえて来る声。
そこではトリーシャとギルド職員、一部の冒険者たちが歓談に興じていた。
「早く鍛冶師を増やしてあげてください」
そう、真面目な顔で職員に告げるトリーシャ。
ルカは何となく、酒場へと続く廊下でその足を止めた。
「まーたその話か」
しかし職員たちは、トリーシャの訴えを一笑に付す。
「一人でも鍛冶場は回ってんだから問題ないだろ」
「それはルカが無理をしてるからですよ。毎日夜遅くまで働きっぱなしじゃないですか」
「嫌ならそれまでって話だ。防具を作って直すだけの人間なんて、いくらでも代わりがいるからな」
にべもないことを言い放つ職員。
さらに一人の冒険者が、ニヤリと口端に笑みを浮かべる。
「そうだ、それならお前さんのスキルを分けてやれよ」
「え……っ」
もちろんそんなことは不可能。
よってこれは悪い冗談だ。
それでも『スキル』という言葉が出た途端に、トリーシャは言葉を失った。
「そうしたらあいつも鎧鍛冶なんかじゃなく、ダンジョンで稼げるようになんぞ」
「そいつはちげえねえ! はっはっは!」
「もともとあいつは騎士が志望だったんだろ? 泣いて喜ぶんじゃないか?」
「鎧鍛冶と倉庫のスキルだけじゃ、どうあがいたって戦いには出られねえもんなぁ」
「い、今はそんな話――」
――――やめろ。
「いい加減諦めろって。鎧鍛冶なんかを増やすくらいなら、魔剣鍛冶に高給を払って一本でも多く剣を打ってもらった方がいい。冒険者たちだってそう思ってる」
「で、でも……」
「せめて指先から飲み水の一つも出せるガントレットでも作ってくれれば、話は変わってくるんだけどなぁ」
「ハハハハ! そいつは助かるな。で、あんのかい? そんなガントレットは」
「…………」
――――やめろ。
いよいよ言葉を返せなくなってしまったトリーシャに、再び声を上げて笑い出す冒険者とギルド職員たち。
当然、鎧に特殊効果なんて乗らないことは誰もが知っている。
「ほらほら、どうなんだぁ?」
「ないんだったら、お前さんがスキルを分けてやるしかないよなぁ」
笑い続ける職員たちに、トリーシャはついに肩を落とした。
悲しそうに、その目を伏せる。
――――頼むからもうやめてくれっ!!
踵を返し、ルカは走り出す。
耐えられない。こんなの、耐えられない……っ!
そのまま全力で走って、逃げ込むように鍛冶場へと戻って来る。
「どうしてトリーシャが、俺のために笑われなきゃいけないんだ……っ!!」
全身がカーッと熱くなり、鼓動が爆音を鳴り響かせる。
だが、それだけじゃない。
ルカは知ってしまった。
「やっぱり……トリーシャはスキルのことを気にしてる。今も俺に『悪い』と思ってるんだ……っ」
それは、数年前のこと。
15歳になると行われる【御業の授与】というユミール神教の儀式。
それは集まった少年少女たちに、一人ずつスキルが与えられるというものだ。
『――――騎士になる』
幼馴染のトリーシャに、ルカは幼い頃からそう言い続けてきた。
しかし得たのは【鎧鍛冶】と【インベントリ】の二つ。
夢をかなえるためのスキルは、与えられなかった。
そして。よりによってそんなルカの目前で、戦線に出ることのできるスキルを得たのが……トリーシャだった。
「あああああああああああああああ――――――ッ!!」
フラッシュバックする過去。
手にした金づちを、ルカは思わず全力で振り上げて――。
「ルカ、いるー?」
聞こえてきた声に、手を止める。
そこには、いつもと変わらない様子でやってくるトリーシャの姿。
両手には数々の料理を盛った皿、口にはパンを一つくわえていた。
「ほら、夕食持って来たから冷めないうちに食べちゃってね」
そう言って、朗らかな笑み向けてくる。
ついさっきまで笑いものにされていたことなんか、欠片も見せることなく。
「……あ、ああ。ありがとう」
力なく金づちを下ろしたルカに、トリーシャは口にくわえていたパンまでしっかり押し付ける。
「これが今日の仕事かぁ。相変わらず丁寧だね」
並んだ鎧を見ながら、にこにこと笑顔を見せるトリーシャ。
「そりゃ……命を守るための物だからな」
「うんうん。好きだよ、そういうところ」
「……おばさんは、元気か?」
「うん」
なんてことなく応えてみせるトリーシャ。
その母に病が発覚したのは、研究者だった父が消息を絶った後。
一人、無理を続けたのが原因だったらしい。
病を治すには、とある魔物から取れるアイテムが必要になるが、それは非常に高価なものだ。
その魔物自体も恐ろしい強さを誇る上に、めったに姿を現さないため、早々手になど入らない。
トリーシャは常々、冒険者にはならないと言っていた。
戦い方も知らないし、体の弱い母を一人残して冒険者稼業なんてできないと。
そもそも冒険者でも、件のアイテム代を稼ごうとすれば何十年かかるか分からず、それまで母の身体がもつとは思えない。
だから、かつてのルカは言った。
鉄のバケツをかぶり、鉄板を首から下げて、鎧の騎士になりきって。
『いつか世界を救うような騎士になって、トリーシャの母さんを――――俺が助ける!』
トリーシャはずっと覚えていたんだ。
あの日から一度だってスキルの話をしないのは、気を使ってくれていたから。
「ほらほら、野菜もちゃんとたべないとダメですよ」
ちょっと得意げに、怒ったふりをしてみせるトリーシャ。
ルカは拳を握りしめる。
騎士になってトリーシャの母さんを助けてやるって、俺はそう言った。
そう、言ったのに。
俺を心配したせいで、あんな風に笑われて。
それでもこうして、何事もなかったかのように夕飯を持って来てくれて。
そのうえ、スキルのことまで気にさせて……っ!
トリーシャにだって抱えてる心配事があるのに、これじゃ俺が一方的に助けられてるだけじゃないかっ!
それはトリーシャの優しさだ。
長い間一緒だったから、ルカはよく知っている。
自分のことを本気で心配してくれているのを、知っている。
でも。だからこそ。
ほどこされる優しさが――――何より痛い。
それならいっそ皆と一緒にバカにして、笑ってくれた方がよっぽど楽だ。
「……あれ? これも、これも、これも修理終わってるの?」
「…………終わってるよ」
恥ずかしさと不甲斐なさ。
そして何より悔しさで、胸をかきむしりたくなる。
だが、ルカにはどうしようもない。
だから必死に平静を装う。
あふれ出しそうになる思いを隠して、何も知らないかのように。
「この量をこんなに早く? すごいねぇ……」
感心したように息をつくトリーシャ。
「あっとと、そろそろ帰らないと」
向けられるのは、これまで何度も見てきた飾らない笑顔。
「明日もがんばろうね。おやすみなさい」
ステップを踏むような歩き方で、トリーシャは帰途へ着く。
ルカは知っている。
この後、もう一度こっちを見て。
「……手を振るんだ」
予想通り、トリーシャは振り返って大きく一度手を振った。
やがてその姿が見えなくなると同時にルカは走り出し、あちこちに身体をぶつけながら鍛冶場へと戻る。
放り投げた金属製の桶に水を雑にぶち込み、始めるのは水見式スキル確認法。
澄んだ水に身体をひたして行うことで、誰にでも自身のスキル状況を確認することができる。
アーデント大陸では当たり前となっている、ユミール神の御業によるものだ。
仮に【鎧鍛冶】のレベルが上がっていようと、鍛冶仕事の速さや技術が向上するだけで現状が変わるわけではない。
それでも。
シャツの袖が濡れるのも気にせず、叩き込む様にして水に手を突っ込む。
「大地に流れる神の血脈よ、我が力を示せッ!!」
……どうしてトリーシャが、俺に気を使ってくれてる?
……どうしてトリーシャが、笑われなきゃいけなかった?
そんなの決まってる! 俺が、俺がこんなだからだッ!!
力が欲しい。
もうトリーシャが、俺の代わりに笑われなくて済むような力が。
優しい幼馴染に、無様に助けられなくて済むような……いや、助けてやれるくらい強い力が……ッ!!
やがて水面に、文字が浮かび上がって来た。
沸き立つかすかな希望と共に、水面に目を向ける。
映し出された文字は、【鎧鍛冶】と【インベントリ】
血がにじむほど強く唇を嚙んだ後、肩を落とす。
「……そりゃ、変わってるはずないよな。まったく、鎧鍛冶をやるのにうってつけのスキル構成だよ」
得られるスキルは、儀式の際に多くても三つほど。
以降レベルの上昇によってその関連スキルを覚えることはあっても、真新しいものが出てくるということはない。
思わずついたため息――――しかし。
「…………え?」
水面に浮かんだ見慣れぬ文字に、目が留まる。
【――――魔装鍛冶LEVELⅠ.耐衝撃】
そこには確かに、見たことのない新スキルがハッキリと映し出されていた。
「魔装鍛冶って……なんだ?」
揺れる水面に、釘付けになるルカ。
彼はまだ知らない。
ここに世界の常識を打ち破る、奇跡のスキルが誕生したこと。
そして、恐るべき成長が今始まったのだということを。
新作、何卒よろしくお願いいたします。
【ブックマーク】【ご評価】いただければ幸いです。