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教室に戻った俺を待っていたのは、俺を痛めつけることしか考えていない奴らだった……。
太田に肩を掴まれ、そのまま力のかぎり投げられた。俺は連立された学校机をなぎ倒し床に身体を打ち付けた。
「……ねえねえ、大地君。もう昼休み終わっちゃうんだけどさぁ、なんか買ってきたわけ? これで逆らうの二回目だよね? あの時みたいにボコボコにしちゃうから……」
太田は俺に馬乗りになりマウントをとると指の関節をパキポキと鳴らしていく。その表情は新しいおもちゃを渡された子供のように嬉々としていた。
そしてリンチが始まった……。
何回殴られただろうか……。顔の痛みが次第に鈍くなっていき、意識が遠のいていく……。
このまま、殴られ続けたら俺は死ぬだろうか……。
死が頭をよぎった瞬間。
胸の奥が急に熱くなり始めた。
熱は全身に伝播してゆく。その感覚はまるで全身を巡る血液が沸騰しているかのようだ。
「……流石にやばいよ太田くん。先生ももう来ちゃうし……」
田中流理の声が微かに聞こえてくる。
太田は田中流理の声を聞いて殴り続けている手を止めた。
「命拾いしたね大地くん……」
立ち上がった太田は俺の身体から退いた。
俺は床に這いつくばり、倒れた机を支えにして、よろける足で立ち上がった。
「……大地くん。今回はこれで許してあげるから机、戻しといてね……」
振り返った太田が俺を見据えた……。
脱力した両の拳が自然と胸元まで引き上げられていく……。
「えっ何? マジで大地くん? もしかして俺とやる気なの?」
視界がボヤけて太田の表情は見えないが声色だけで喜びに満ち溢れていることがわかった。
意識が朦朧としている中、俺は太田に向けてファイティングポーズを取っていた……。
「ごめん田中さん。やめるの無理だわ。なんとかごまかして」
そう言った太田は俺目掛けて拳を放った……。
太田の拳が俺の顔に向けて飛んでくる……。
ゆっくり、ゆっくりと……。
まるで静止画が少しづつ、少しづつ動いているかのように……。
俺は太田の拳を左手で受け止めた。
「……へ?」
間抜けな顔した太田の顔。
俺は受け止めた太田の拳を軽く押し返した……。すると太田の身体は重力を無視したかような動きをしながら机、教卓を吹き飛ばし、黒板に身体を叩きつけた。
「きゃあああああああ!」
その惨状を目の当たりにした女生徒が悲鳴をあげた……。
よたつく足で教室を出た。薄れゆく意識の中で俺は唯一帰れる居場所まで歩きはじめた……。




