寝坊してイケメンとキスした
「こたろう!みて!さくらがさいてる!」
「……そうだな」
「もう!ちゃんとみてよ!」
「みてるよ。……きれいだな」
「うん!きれいだね!」
ヴー ヴー ヴー ヴー
朝。布団の中で鳴り響く携帯のバイブ音。どうせ虎太郎だろうな、と心の中で結論付けて無視を決め込む。
ヴー ヴー ヴー ヴー
しかしバイブ音は一向に鳴り止む気配が無い。これでは二度寝が出来ない!と心の中で叫び、さくらは仕方なく足元の方に追いやってしまった携帯を手に取り着信ボタンを押した。
「もしもし……わかってるよぉ…………ふぁあ〜。
分かった、分かったから…うん、じゃあね」
寝ぼけ声で通話相手、相川虎太郎の話を適当に聞き流し、さくらはまた布団を頭に被った。今度はしっかりと電話の電源を切って。
__これが全ての始まりだったのである。
❀❀
「遅刻遅刻遅刻!!!!」
皆さんおはようございます。私、有栖川さくらと申します。今日から高校二年生になります!しかしここで問題発生です。只今の時間8時。授業開始まであと30分。
さて、何が問題なのでしょうか?
答えは簡単!今の時点で遅刻確定だということ!嗚呼もう私の馬鹿!虎太朗の言うことちゃんと聞いておけば良かった!
兎に角今は走るしかない!
そう思いいつもの曲がり角を曲がろうとしたそのとき、事件は起きた。
「___へ?きゃあ!?」
目の前を歩いていた人に思い切りぶつかってしまった。目の前にいた人の胸に飛び込む形で転んでしまった私は、自分の唇の違和感に気が付いた。
『?!』
なんと、ぶつかった人とキスをしてしまっていた。慌てて離れようとするが、足を捻って動けなかった。ああもう、どうしてこんなときに!!
「あ、あの…!本当にごごご、ごめんなさい!」
「いや、こっちもなんかごめんね。今のは事故だからノーカン、って事で」
見るとその人は、うちの高校の制服を着ていた。しかしこんな人、うちの学校に居ただろうか。こんなに爽やかなオーラを纏っている人、校内で見たことがない。
「って!こんなことしてる場合じゃない!あの、うちの制服来てるってことは、貴方も立川高校?」
「え?あ、ああ、そうなんだ。けど、道が分からなくて……」
あはは、と苦笑を浮かべる彼。それなら私にとっても都合が良い。
「ねえ、私が道案内するから学校まで付き添ってくれない?ちょっと足を捻っちゃって…」
私がそう言うと、彼は嫌な顔ひとつせずに承諾してくれた。矢張り、イケメンは行動までイケメンだ。
「私、有栖川さくら!あなたは?」
「俺は夏綾恋。よろしく、有栖川さん」
ニコ、と夏綾くんは笑った。
有栖川 さくら
身長_160cm 体重_49kg
肩くらいまでの黒髪。体育のときは高めに結ぶ。
見た目大人しめに見えるが、意外とうるさい。自分よりも他人を優先してしまうタイプで、全て自分でこなしてしまう。言わば天才肌。誰かに頼ることを最も苦手とする。天然たらし。
弟と妹がおり、なんだかんだ仲良し。